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 第二話  無茶なお願い

本日二度目の校長室。

幼なじみの綾の思わぬ登場により、よけいな時間を食ってしまったが、任務のことはバレずに済んだ。

そして、今こうして校長のセロの前にいるわけだが・・・・。

なんというか・・、セロの視線が痛い。

理由は何となく分かる。

おそらく、メンバーの選考についてだろう。


 セロは頭を抱えながら言った。


「確かに、実力がある奴を連れて来いとは言ったが・・・」


 そして、オレは言い訳気味に答える。


「だから、こうして実力がある奴を連れて来ましたよ」


 そして、セロは険しい顔をして答える。


「だからって、トラブルメーカーを増やせとは言ってない!」


 セロの指摘は、まさに的を射た発言だった。

今、オレの隣でアホ面をかましているこの男。

実はある意味、校内で最も有名な生徒の一人なのだ。ついでに言うと、オレもそのうちの一人である。

では、そのある意味というのは何なのか。

話せば長くなるので、ざっくり言うと・・・、校内をシメていたちょっと不良ワルの学生を入学当初にボコボコにしてしまったのである。

それ以来、何かとケンカ事に巻き込まれているので、先生からは目をつけられ、生徒からは怖がられる日々である。

まぁ、中学のときの話だが、高校に上がってもこの話題のせいで何かと不便なことが多い。

おそらくセロもそのことを思い出しているのだろう。


 オレは引き笑いになりながら答えた。


「まぁ、素行はよろしくないかもしれませんが・・・。実力は充分でしょう?」


 セロはため息を一つ吐くと、諦めたような顔をした。


「素行に関してはお前もだぞ、八塚。 ん~~っ、しかし、この際仕方ない。八塚と諏訪、お前ら二人に特別任務を任せよう。それで、分かったことって何だ?」


 セロからそう聞かれたので、諏訪が答えた。


「セロ校長、まずこの動画を見てください」


 諏訪はそう言うと、オレに見せた動画をセロに見せた。

セロは胸元のポケットから眼鏡を取り出してかけた。

動画が流れている最中、セロは何一つ動かない。

そして、動画が終わるとセロはおもむろに口を開いた。


「この動画は、いつ更新された?」


 セロがそう聞くと、諏訪はすぐ答えた。


「一か月前ぐらいですね」

 

「他にこれと似たような動画はあるか?」


「あと、三十個ほどあります。でも、他の動画は画質が悪いので、この動画が一番姿が判別しやすいです」


 セロは眼鏡を外しながら、また質問をしてきた。


「つまりお前らは、この動画に映ってる少女が今回の犯人だと?」


 凄味のある声に多少ビビりながら、オレは答えた。


「いやっ・・、まだ決まったわけではないんですが・・・。その可能性が高いと・・・」


セロはそれを聞くと、にんまり笑った。


「まぁ、そう考えるのが妥当だろ。おそらく、この動画の少女は、魔法の力を一般の人に隠す方法を知らないんだろう。なぁ、お前ら、任務を一つ追加していいか?」


 あっ、セロのこの顔は面白がっているなぁ。

この顔をするということは、結構無茶なことを頼む気だ。

セロは悪い笑顔のまま、ある提案をしてきた。


「お前ら、この少女を見つけ次第捕まえて・・・この学校に入学させろ!」


「はいっ!?」

「・・・・・予感的中・・」


 前者が諏訪。後者がオレの反応だ。

セロは回転椅子を回して、オレらとは逆方向を向いて窓から外を見ながら言った。


「お前らも知っているとは思うが、魔法師はここ最近増加傾向にある。だが、魔法師の質は低下した。それを防ぐために、こういう学校が設立されたのだが・・・。しかし、残念だが、天才とか秀才レベルの魔法師は、なかなか輩出できていないのが現実。そこでだ・・・」


 セロは再び回転椅子をオレらの方に向け、勢いよく立ち上がって言った。


「我が校だけでも、この状況を打開すべくある作戦を実行しようと思う!!」


 オレは若干困り顔で質問した。


「っと言いますと・・・?」


 セロの顔がまた一層悪い笑顔になる。


「フッ、ずばり『一般から有能な人を引き抜いちゃえ作戦』だ!!」


 セロはオレら二人に向けて高々に宣言したが、はっきり言ってネーミングセンスがない。

なさすぎて、かわいそうになる。


「な・・・、何だそのお前らの冷めた目・・・」


「いや、なんというか・・、お疲れ様です」


 こちらオレの反応。


「ぶっちゃけ言うと、作戦名ダサいっす」


 こちらは諏訪の反応。諏訪はなかなか酷い言葉をセロに浴びせたと思う。

セロはオレら二人の反応を聞いて、(諏訪に関してはほぼ悪口)ショックを受けたのか分からないが、椅子にゆっくりと座って、黙り込んでしまった。

オレは硬直状態のこの場を変えるべく、話をもとに戻す。


「まぁ、とりあえず校長の考えてることは大体分かりました。要するにスカウトですよね?」


「そうそう、そういうことだよ!! ハハハハハッ!」


 そう笑うセロだが、明らかに冷や汗をかいている。

セロはなんとか話題を変えようとしてオレらに質問をしてきた。


「それでだ、お前ら・・・。 どうやってこの少女と接触する気なんだ?」


 やべっ、全く考えてなかった。

オレと諏訪は渋い顔になり、答えられなかった。


「考えてなかったな・・・。まぁ、基本的にスカウトの仕方はお前らに任せるが、あまりにも強引なやり方だった場合は承服し兼ねるぞ・・」


 セロは少し引いた顔で言ったが、強引なことってどんなことを想像したのだろう。

まぁ、一応否定しておこう。 


「そんな強引なことしませんよ・・」


「そうっすよ、セロさん! するとしても気絶させるぐらいっすよ!」


 この諏訪バカにどうやって言葉の重みを教えようか。

オレは無言で諏訪を左ストレートで殴った。


「ゲフッ!! な・・何すんだよ・・・」


 自分の失言に気付いてないこのバカは、泣き顔になっていた。

だが、オレは容赦なく批判を冷たく浴びせる。


「お前は強引という言葉の意味を知らないのか? やっぱり、お前は生粋の戦闘バカだな」


 セロもオレに次いであきれ声で諏訪に言った。


「今の諏訪の一言で、学校の校長として諏訪に国語の補習を言い渡そうかと思ったぞ」 


「セロ校長、このバカに補習なんてのは無意味に近いですよ」


「そう思って言うのを止めたんだ」


 オレとセロの悪口にとうとう心が折れた諏訪は部屋の隅でいじけ始めた。


「そりゃあ・・・、オレはさ、バカだけどさ・・。それでも、必死に任務頑張っているんだよ・・・それにさ・・・」


 いじけている諏訪をよそに話は進む。


「まぁ八塚、諏訪のことはお前がしっかり面倒をみてやれ」


「オレはあいつの親ですか?」


「そうでもしないと、不安だ。さて、こんなくだらない話終わりだ。早速今夜から頼むぞ」


 セロの言葉にオレは軽く頷き答えた。


「了解です、校長」


 こうして、任務が始まった。

 

                     続く


 





 



















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