散った桜
響く電子音。不規則なリズムを刻む。
散りかけの桜から漏れる明るい木漏れ陽が雪のように白い室内を暖める。
そこで僕は祈るように手を握る。雪よりも白い君の手を。微かな体温を感じながら。
風が吹き白いカーテンが揺れる。一瞬目を閉じてしまいそうなほどの風。
それでも君は微動だにしない。眼を閉じたまま人形のように眠るだけ。
僕は祈る、ただひたすらに。自分に出来ることはそれしかないから。
やがて僕の手が冷たくなった。
けれども冷たくなったのは僕の手じゃなくて君の手だったんだ。
桜の花が散る。
電子音はもうリズムすら刻んではくれない。