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浜野くらら編 第五話

楠木くんの方を見ると叩かれたショックなのか、突然高梨くんが帰ってしまったのにびっくりしているのかずっとその場に立ち尽くしていた。わたしは楠木くんにちゃんと話をしなきゃいけないと思いこれまでの事を話し始めた。


「楠木くん・・・わたし・・・本当は・・・知っていたの・・・」


「知っていた?なにを?」


「楠木くんがファミレスでお昼食べた後に彼女さんに振られたでしょ・・・」


「な、なんでそれを・・・」


「それはね・・・」


話を始めようとしたら楠木くんに止められた。


「待って浜野さん、俺なんだかこの話長くなりそうな気がするんだ。どこかゆっくりできるとこで話さない?浜野さんがやでなかったらだけど・・・」


楠木くんにそう言われて嬉しかった。ちゃんと話を・・・

わたしと向き合ってくれる事が・・・


「うん。わたしもそうしたい。楠木くんとゆっくりと話したい。言いたいこといっぱいあるから。」


しかし、時間は終電間近なのでもうやっているお店がほとんどない。どうしようかなと思っていた時に高梨くんの言葉を思い出した。彼女と行くために楠木くんはホテルを取ってあると言う言葉を・・・


そこにわたしから行くと言うことはそうなってもいいよ。って思われるようなもの・・・実際そうなるのもいいかななんて思っているわたしも存在する。きっと楠木くんに求められたら断れないだろうな・・・恥ずかしいけどそうなったらなったよ。思い切って訪ねてみた。


「もうどこもお店閉まっちゃっているね。楠木くん…こんなこと言うとちょっと恥ずかしいけど、もしかしてホテルとか予約してない?」


「えっ?!」


やっぱり、かなり焦りつつ驚いている。否定しないとこみると本当なのね。


「高梨くんが言っていたの『あいつ、絶対ホテル予約入れているから連れ込まれないように気をつけろ』って。」


「高梨ぃ~!!」


居なくなった高梨くんにたいして恨みを込めて改札口の方を睨んでいた。

一呼吸置いて楠木くんはその事を認めて説明してくれた。


「確かに予約いれているよ・・・だけどそれは遅くなった時にそこに泊まるつもりだったから・・・」


高梨くんには、進展させるなんて言っていたくせにとは思ったけどそれは出さずに一応念を押しておくことにした。軽い女にはみられたくないしね。


「やっぱりとってあるんだ。じゃ、そこに行こうよ。そこなら誰にも邪魔されないしゆっくり時間も気にせず話せるしね。でも変なことしたら叫ぶからね!」


「そんなことしないよ。話をするだけだよ。絶対になにもしない。」


「本当になにもしないでよ」


「絶対にしない!!」


断言されるとそれはそれで寂しいきもちになってしまい、ちょっと大胆な発言をしてしまった。


「そこまで言い切られるとちょっと寂しいなぁ・・・」


「え・・・」


目を大きく見開き固まる楠木くん・・・

わたしはごまかすかのように


「あ・・・なんでもない。ここは寒いし早く行こ。」


「そうだね。寒いし行こう」


そこからタクシーでホテルに移動した。ついたホテルは思いのほか綺麗なホテルだった。きっと高かっただろうに頑張っていたんだと思ってしまった。その頑張りがわたしに向いてくれるといいな、なんて思っていたら、楠木くんがチェックインを済ませ鍵とさっきまでの持っていなかった紙袋を持って「行こう」とわたしはちょっと緊張した足取りで後をついて行った。


部屋に入ると大きいベッドが一つ・・・そのつもりでとったのは間違いなさそう。つい楠木くんをじーっとみてしまった。


「あはは・・・元々ひとりでとまるつもりだったからこの部屋予約していたんだ」


慌てて言い訳するから可哀想なので「そうね。そう言う事におきましょ・・・」と部屋の話はやめにした。


二人で部屋に入ったはいいけど入口付近で立ち尽くしていた。


考えてみたら男の人と二人でホテルなんて・・・そんな経験なんてない。どうしたかいいかわからなかった。すると楠木くんが奥にあるソファに指差して、


「とりあえず、座ろうよ。せっかくもらったシャンパン飲む?」


そう言うとわたしを座らせて先ほどの紙袋からシャンパンを取り出した。


今日はクリスマスなのでカップルでホテルにきた方へのプレゼントだったみたい。ちょっと気になるのが紙袋の中に小さい箱が入っているんだけど、なんだろう?キーホルダーとかかな?もしかしてピアスとかも。ちょっと開けてみたい気がするけどまずは話をしてからと思い。


グラスにいれてもらったシャンパンを飲もうと手に持って「そうね。飲みましょう。」と軽く二つのグラスを合わせて喉を潤した。


気持ちを落ち着かせたところで楠木くんは話を促してきた。


「浜野さんのこれまでのことは一体どういうこと?順番に話してくれる?」


「うん…」


「始まりはわたしがあるファミレスでね。高梨くんに振られたの。ううん。振られたと言うより呆れられたって感じかな。始めは高梨くんに好きだから付き合って下さいって言われて最初は断わったのわたしには好きな人がいたから…だけど何度も諦める事なく高梨くんは付き合ってくれって言ってきてくれて…わたしは迷ったよ。わたしの好きな人とはもう連絡先もわからないし当時付き合っていたわけでもなかったからね。だからその人を忘れるために高梨くんと付き合う事にしたの。だけど…それはわたしの中で好きな人の事がより一層強くなってしまって付き合ってるのに高梨くんを拒絶してしまったの…そして高梨くんから『頑張ってはみたけど、お前の好きなやつには俺は勝てない…それを自覚した。俺といても微妙に距離を感じるんだよ。それに付き合ってるのにお前とキスすらさせてすれない。それどころか手すらつながないじゃないか。俺がつなごうとしたら逃げたじゃないか。いくら綺麗だからといってそんな女こっちから願い下げた。じゃーな。』ってね…」


「そうか、そんなことが…」


「それでわたしはしばらくお店の中で考え込んでたらそこに楠木くんと彼女さんが入ってくるのが見えて、驚いたよ。5年ぶりのその姿みてすぐわかったよ。楠木くんだって、嬉しさ半分悲しさ半分って感じだったけどね。」


「悲しさ半分ってどうして?」


「だって彼女と一緒だったから…」


「えっ…それって…」


楠木くんが気がついてしまいそうだったので慌てて余計な事を考えさせないように話を続けた。


「は、話を続けるね。はいっきたら、わたしの座っている真後に座るから会話も丸聞こえだったの。気になったから帰るのも忘れて話を聞いてしまったの…ごめんね。」


「いや、そんな事ないよだって隣に聞こえるような声で喋っていた俺がいけないんだって。」


「そう言ってくれてありがとう。そして聞いていると彼女さんが突然「私、あなたに飽きた。別れましよ。」と言って席を立って出て行っちゃたでしょ。わたし、びっくりしちゃってまさか同じ日にわたし以外にも振られる人がいるなんておもわなかったよ。」


「ははは・・・お恥ずかしい限りで・・・」


「そんな事ないよ。わたしもそうだったんだから恥ずかしいも何もないでしょ。」


「あ、そっかぁ。お互い振られたんたよね。」


「そうよ。だから気にしない。」


「そこからしばらくして外にでた楠木くんを追いかけて声をかけたんだ。その後は一緒だったから説明いらないよね。」


「そうかそうだったのか。まさかみられていたなんて思いもしなかった。でも俺は振られた事に感謝かな。だって・・・浜野とまた再開できたからね。」


「それはわたしも一緒かな。あのファミレスで今日あの時振られなけれは今こうして一緒にいられなかったからね。」


「で、大学に行ってイルミネーションみてた時に高梨くんがきたのは本当に偶然だったの。別れたその日に別の男といたのがゆるせなかったからあんな言い方になっただけだよ。ちゃんと説明したらわかってくれたよ。だから駅でもしかしたら楠木くんが家に帰る為にくるかもしれないと思って待ってただけだよ。高梨くんが一緒いたのはわたしに何かあったら楠木くんに合わせる顔が無いからっていてくれただけ。」


「へ?。なんで高梨が?俺に?」


「だって、わたしの好きな人を教えてしまったから・・・」


「好きな人・・・?」


「そう・・・もうわかるでしょ?わたしの好きな人は…」




「・・・楠木・・・隼人くん」




言ってしまった。楠木くんは受け入れてくれるといいな・・・


「あたし・・・ずっと好きだったの・・・中学生の時から・・・でも楠木くんには嫌われてるのかなって中学校時代は思った。わたしから話しかけてもなかなか返事してくれないし、笑顔もあまり見せてくれなかったからね。その上高校に上がったら楠木くんが急に明るくなったって楠木くんと同じ学校に行った子から聞かされて結構ショックだったよ。」


「ごめん・・・中学の頃は俺もものすごく好きな娘がいてその娘が話しかけてくると緊張と恥ずかしさでなにも出来なくなってたんだ。その娘はなにかと俺に話しかけてきてくれたのにね・・・その娘は浜野くららっていう娘でね・・・今でも好きなんだ・・・」


お姉さんから聞いていたので知ってはいたけど、本人から言われると嬉しさが全然違う。嬉しくなったわたしは好きになった時の思い出を話した。


「楠木くんは覚えるかなぁ。中学2年の時に、子猫助けた事あるでしょ。」


「なんで知ってるの?俺誰にもその事言ってないのに・・・」


「わたし、見てたんだ。木から降りられなくなった子猫助ける姿みて優しい人なんだなぁって気になって、その後もしばらく子猫の面倒をあそこで見てたでしょ。わたしずっと見てたの。あそこって屋上からよくみえるんだよ。それからあたし一生懸命に話しかけて仲良くなろうと頑張っただけどさ・・・楠木くんなかなかこっちみてくれなくて結構ショックだったんだよ。」


「屋上から見られてたなんて知らなかった・・・。中学の頃俺は本当にやな奴

だったと思う。やな思いさせて悪かった・・・ごめんね。」


「ううん・・・今はぜんぜん気にしていないから。」


「じゃ、中学の頃から偶然のことだったんだね。偶然屋上から見られて、偶然同じ日に振られて、偶然再会した。」


「ちょっと違うかも。だって3回も偶然が続くのはもうそれは必然だとわたし思う。きっとこれはサンタクロースからのクリスマスプレゼントで、わたしの思いをサンタクロースが叶えてくれたんだってそう思えるの。」


「そうか、偶然も続けば必然か・・・俺たちは出逢うべくして出逢ったとことかな。」


「そうよ。きっと。」


そこまで話すと楠木くんが姿勢を正して緊張の面持ちで話し始めた。


「浜野さん・・・俺と正式に付き合って下さい。お願いします。」


楠木くんは深々と頭を下げた。わたしは本当にこの言葉を中学からずっと求めていた。それがいまこうして楠木くんから言われて目に涙が溜まっていくのがわかった。


「楠木くん・・・」


何とか声をかけると楠木くんは頭を持ち上げてこちらを見つめていた。わたしは溜まっていた涙が堰を切ったようにボロボロと頬を伝わって落ちていった。そして返事をした。


「こちらこそよろしくお願いします。」


返事をしたら、遠くの方からシャンシャンと鈴の鳴る音が聞こえだんだんと遠ざかるような気がした。


これってもしかして・・・




これはサンタクロースのプレゼンとだったんだ。このキセキに感謝・・・



クリスマスにちなんで書いてみました。

楠木隼人編四話、浜野くらら編五話をそれぞれの視点で書いてみました。

どうだったでしょうか?


ずっと思いつづけた二人に火が着いたら止まらなくなってしまいました。

思い続けた分、一度進みだしたら一直線でした(^_^;)


今回の話は24日の出来事ですが、この話の後に起きる25日の話が「クリスマスの奇跡by25日の朝」の一話あります。

ちょっと自分が考えていた方向からずいぶんエロい方向に行ってしまいまして、こちらにアップするのはまずいかと思い、自分のブログのみで公開しています。

気になる方は↓こちら↓にどうぞ。

http://yoshikun007.blog.fc2.com/blog-category-6.html



全12話含めて書いているうちに違う方向につい行ってしまうのでハッピーエンドに行くように話が進めてほっとしています。

クリスマスの話なので二人が結ばれてハッピーエンドで終われてよかったと思っています。


楽しんでいただければ幸いです。


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