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浜野くらら編 第一話

ここからは浜野くらら目線になります。

話も最初からに戻りますが楠木隼人側ではわからなかった部分が見え出来ます。


こうだったのかと思ってみていただければと思います。


まさかクリスマスイブに振られるなんて思いもしなかった。


ファミレスでお昼を食べ終わって、二十歳にして初めてできた彼氏に「もう別れよう」と言われて振られてしまった・・・。


「どうして?」と聞いたら「くららちゃんに他に好きな奴がいるのは知っているよ。だけどな、俺と一緒にいても微妙に距離を感じるんだよ。それに付き合っているのにくららちゃんはキスすらさせてくれない。それどころか手すらつながないじゃないか。俺がつなごうとしたら逃げたじゃないか。他の奴が好きなのは判っていたけど、それじゃあんまりじゃないか?好きだった奴を忘れさせてやろうと思ってがんばってけど俺には無理だ・・・今日で終わりだよ。じゃーな。」そういって彼は出て行ってしまった。


ショックだったけど彼の言っている事は本当だから…今でもある人の事が好きだった。でもそれはきっとかなわない。だってもう5年もその人とは会うどころかメールの一つも交わしたことも無いから・・・そもそも連絡先さえ知らない・・・


届かない思いならもう忘れようと告白してきた彼と付き合う事にしたけど、好きになろうと思えば思うほど好きだった彼の事が出てきてしまい、どうしても近づく事ができなかった。


ファミレスを出て行く彼に「ごめんなさい。本当にごめんなさい。」と心の中で謝り、ただ見ることしかできなかった。


「あーあ、振られちゃった・・・自分の態度じゃ仕方ないよね。わたしだってそんな態度取られたらやだよ。わたしって最低だ。本当にごめんなさい。」


と独り言をつぶやき大きく深呼吸をして帰ろうと思ったけど、このまますぐに外に出たら外でばったり会っても気まずいから、残りの飲み物を飲んでもう少ししてから帰ろうかと思った時だった。


入口から店内に入ってくる一組のカップルに目が止まった。その瞬間わたしは目を疑った。五年も会っていなかった。彼がそこにいた。当時の幼い感じか抜けて大人びていたが、自分が彼の事を間違えるわけがない。ずっと思い続ける「楠木隼人」がそこにいた。しかし嬉しさ2割悲しさ8割の遭遇だった。だってカップルで入ってきたから・・・


入ってきた楠木くんと彼女らしき人は店員に案内されて隣のボックス席に座った。わたしの背後に彼女らしき人が座り向かいに楠木くんが座った。何やら食事を注文し2人は話していた。どちらかというと楠木くんが一生懸命話して彼女さんが相槌打つ感じで話が進んでいた。わたしはそれに驚いた。中学時代はわたしが話しかけても多少返事はしてくれたけど、すぐに俯いて黙ってしまう感じだったのに今はまったくの逆な感じだった。高校に入って楠木くんが随分明るくなったとは楠木くんと同じ高校に行った友達が教えてくれた。


「やっぱり彼女できると変わるのかなぁ。できる事なら彼女の席にわたしが座りたいなぁ」


とまた独り言つぶやいてしまった。そろそろ帰ろうと思っていたけどこうなると後ろの2人が気になる。飲み物がなくなったからドリンクバーに飲み物を取りに席を立ち上がり、ちらりと楠木くんを見ながらドリンクバーに向かった。


ドリンクバーでハーブティを手に取りカップにお湯を注ぎ、いい香りを出てくるのを楽しみに席に向かった。いつの間にか楠木くんたちのテーブルには食事が運ばれてきていて、二人は食べ始めていた。楠木くんたちの席の横を通る時に彼女の顔が見えたけど、どういう訳かとてもつまらなそうに楠木くんの話を自分の髪の毛を弄りながら聞いていた。


「なんなのあの態度は!楠木くんに失礼じゃないの!」と叫びたかったけど言える訳がなかった。ちょっと頭にきながら席に戻った。ハーブティの香りを堪能して自分を落ち着かせて、悪いとは思ったけど携帯を弄るふりをしながら聞き耳を立てていた。楠木くんたちは相変わらず楠木くんがしゃべりながら彼女さんが相槌を打ちながら食事を終えて落ち着いた時に彼女から話を切り出した。


「ねぇ、隼人。」


「ん?」


「私、あなたに飽きた。別れましよ。」


わたしはびっくりした。まさかいきなり別れ話になるなんて・・・

2人の話により集中してしまった。でも楠木くんからはなんの反応もなかった。

何も反応がないせいか彼女さんが話を続けた。


「あぁそうだ。今日のお昼代ここに置いて置くから。そういうわけでさようなら。」


それだけいうと彼女さんは立ち上がり店を出て行ってしまった。まさかここにもクリスマスイブに別れるカップルがいるなんて・・・


それもわたしの好きな楠木くんが・・・


恐る恐る振り返り楠木くんの方をみるとあまりのショックのせいか、どこを見ているのかわからない状態で固まっている楠木くんがいた。そんな状態が15分ほど続いて何やら携帯を取り出してどうやら電話をかけたりメールを打ったりしているようだった。でも携帯はなんの反応もなかった。


それから15分ぐらいたった時だった。楠木くんの携帯がテーブルの上でマナーモードにしてあったようで震えた。それをまた振り返り見てしまった。楠木くんは携帯の画面を見てガックリと頭をさげ・・・携帯を閉じた。


そしておもむろに立ち上がり店を出て行こうとした。わたしはとっさにわたしも席を立ち、楠木くんの後を付けた。その後ろ姿は力無く肩を落として繁華街を歩いていた。


わたしはこれはもしかしたら神様がくれたチャンスなのかもしれないと思った。

弱っているところにつけ込むようだけど、本当に好きな相手と合わせてくれた。このチャンスを逃してはもう二度と会えないような気がした。そう思ったらわたしは意識とは無関係に身体が楠木くんに駆け寄り声をかけていた。


「突然すいません。楠木さんですよね?」


声をかけたはいいけどどうしよう・・・なにも考えてない・・・

声をかけられた楠木くんはこちらをじーっと見つめるだけで何も反応がないのでもう一度声をかけた。


「あの~楠木隼人さんじゃありませんか?」


しばし沈黙が続いて不安そうに答えた。


「確かに俺は楠木隼人だけど、えーっと…どちら様…でしょうか?」


ショックだったわたしは楠木くんの事は忘れなかったのに楠木くんは忘れちゃったのかぁ…それでもなるべく明るく昔のままに話しかけてみた。


「えぇ…忘れちゃったの。寂しいなぁ。私は浜野くららだよ。中学校で一緒だった。」


そういうと楠木くんは「ええ!!まじで、浜野なの?」突然大きめの声で思わず、ビクッとなってしまった。でもこの反応はわたしの事は覚えていてくれているみたいでちょっと安心した。


「そうよ。誰だと思ったのよ。まったく」


そういうとまた楠木くんが黙り込んでしまう。やっぱりわたしと話すと黙り込んでしまのね・・・でもこのままじゃなにも変わらないと思い話を続ける。


「どうしたの?黙り込んじゃってそんなところ昔から変わらないね」


昔の楠木くんに重なって見える。なんだか昔に戻った気分になった。あの時の幼い思いを持ち続けている自分に嬉しくなった。


「ごめん。あんまり綺麗になっているからわからなかった。」


黙っていた楠木くんが嬉しい事を言ってくれた。思わず顔から火が出そうになるのを抑えつつなんとか言葉を返した。


「またぁ、調子いい事言っちゃってぇ~」


覚えていてくれた事が嬉しかった。綺麗になったって言ってくれる事が幸せだった。

できたらこのまま恋人に・・・ううん、そんな贅沢は言わないせめて友達として一緒いたい・・・そう思い振られたばかりの楠木くんを・・・


傷を負っているところに漬け込むような気がして少々後ろめたい気がしたが、知らないふりして笑顔を作って答えた。


「わたしに見惚れた?」


「あ、あぁ…だって、中学のときもかわいいと思ったけど、こんなに美人になっているなんて思わなかったからあの時の思いを思い出したよ。」


思わず、「えっ!」声が出そうになりながら一瞬目を見開いてしまった。


あの時の思いって・・・


思い出したって・・・


そてれって好意的に受け取っていいのかな・・・楠木くん・・・


「そっか…」と口にして声に出さずに口の中で『楠木くんはわたしの事好きなの?』

と続けた。聞き取れない言葉に楠木くんは頭をかしげていた。


ここまできたら突き進むしかない。この後の予定はきっとないはず、立った今振られたばかりなのだから、思い切ってわたしから誘ってみた。


「ねぇ、この後暇?」


「せっかく会えたのだからお茶でもどう?」


とウインクまでしてみた。こんな事を男の人にしたのは初めてだった。好きな人には大胆になれるものなのだと自分自身の行動に驚いた。楠木くんはちょっと嬉しそうにこちらを見ながら話してきた。


「まじ!女の子から誘われて始めてだよ」


「またまたぁ、そんな事で気を使わなくていいよ。」


「本当だって、ぜんぜんもてないよ。」


「うそだぁ楠木くんと同じ高校に行った友達が言っていたよ。高校入ってからとてもあかるくなったって。友達もたくさん出来ていたみたいだって言っていたよ」


そう聞いていたのだ。でもなんか違う感じ・・・もしかして嘘つかれたのかな友達に・・・


「そんなこと無いって高校時代ずっと彼女無しの生活だったよ。思い出しても悲しいよ。」


もしかしたらさっきまでの彼女さんが初めての彼女だったのかなぁ


「そうなんだぁ。なんか友達から聞いていたのとちょっと違うかも。女子に結構人気あって言っていたから。」


「もてた事なんて一度もないよ。」


やっぱり・・・もう嘘つかれていたぁ・・・あいつ!!あとで問い詰めてやる!!

心中で友達に怒りを燃やしていると。楠木くんが心配そうに聞いてきた。


「いいの?今日はクリスマスイブだよ?彼氏とかとどこかに出かけたりしないの?」


わたしは焦った実はわたしも同じファミレスで振られて落ち込んでいたの。

って、いいそうになりながらしどろもどろで答えた。


「あ、えーっと…大丈夫!この後何も予定ないから!!」


「う~ん…それって彼氏は忙しくてクリスマスどころじゃないとか?」


振られたって言うべきか言わない方がいいか悩んだけど言わない事にした。


「う、うん。そ、そんなとこかな。」


一瞬そっかぁって顔をしたけど、楠木くんは笑顔に不安が入り混じった顔をしながら。


「大丈夫なの?男と二人でお茶して彼氏怒ったりしたい?」


彼氏がいると思っているのかな・・・心配してくれてうれしいな。


楠木くんを少しでも安心させるために「心配しなくたって、大丈夫よ。大丈夫じゃなかったら声もかけないし、お茶にも誘わないよ。」と答えてちょっと迷ったけど『女は度胸よ!!』と心の中で気合を入れて楠木くんの腕を持って有無を言わさず歩き始めた。


黙っていると緊張してしまうので中学時代の思い出なんかをひたすら話し続けた。カフェを探して歩いていたけどそういえば私今日映画に行こうろ思ってチケット2枚持っていたんだっけ・・・ここは有効活用させてもらうことにしよう


「ねぇ楠木くん、お茶しようと思ったけどせっかくだから映画でも見ない?実はさあ映画のチケットが2枚あるんだ。」


「映画かぁ。いいけど本当に大丈夫?これってまるっきりデートだよ。彼氏に怒られちゃうよ。」


また心配そうに聞いてきた。やっぱり振られたこと言った方がいいかな・・・

だめだめそんなの・・・降られたから次の男とって軽い女に見られたくないし・・・とぼけるしかないよね。そう言い聞かせて


「心配しなくても大丈夫。ダメだったらそもそも誘ったりしないよ。さっきも言ったでしょ。せっかくだから行こうよ。」


そう言ってちょっと強引に映画を見てその内容がわたしの涙腺を緩めてしまい後半はハンカチを手放せなかった・・・映画で久しぶりに感動してしまった。


これってやっぱり楠木くんがいてくれるからなのかな・・・

こんな時間がずっと続くといいのに・・・


そんな思いをもったまま近くのカフェに入って二人で余韻に浸りながら話をした。


「映画の良かったね」


「そうだね。浜野さん感動して泣いていたしな。」


そういわれて恥ずかしくなって頬が赤くなってしまった。


「だってあんな感動的な話なのだもん。思い出しただけで…」


照れながら映画の感動的な再開の場面を思い出して私たちと重ねてしまい思わずまた涙が出てきてしまった。


「本当に感度的だったよな。あんな恋をしたいよ。」


「なに言っているのよ。直ぐにできるよ。楠木くんかっこいいもの。」


かっこいいとか思わず言ってしまった。また顔が赤くなるのを感じて外の方を見てごまかしていたら「浜野さんは、この後のまだ時間大丈夫?」と聞いてきた。この後何か誘ってくれるのかなとちょっと期待しつつ「今日一日フリーだから遅くなっても大丈夫」と伝えた。


すると楠木くんが緊張した面持ちで誘ってきた。


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