指輪のプレゼント
※文章修正しました。内容に変更はありません。
なんか、他の作品とは違う感じの小説です。
文章力ないですが・・・
よろしければ、見ていってください。
「ねぇ、私のこと好き?」
そう尋ねたら、あなたはきっと困った顔をする。だからね、聞きたくても、聞けないの。
「ねぇ、亜美と龍太くんってさ、本当に付き合ってるの?」
学校の帰り道心配そうに優実が言った。私は首を傾げた。
「さぁ?」
「さあって…」
小さくこぼす優実に私は苦笑いを浮かべる。
優実、私だって聞きたいよ。「私たちって、本当に付き合ってるの?」って。龍太くんは野球部で、私は帰宅部だから学校の行きも帰りも別々で。いつも部活が忙しいからデートの数も数えられる程度。
「あいたい」って言えば、会ってくれる。帰りだって、「待ってる」って言い張れば、苦笑しながら、「遅くなるけど、じゃあ、待ってて」って言ってくれる。だけど、「お兄ちゃんと妹」みたいだよ、それじゃあ。
好きになったのは、私だった。告白したのももちろん私。
「付き合ってください」
顔を赤くして言った私に、龍太くんは「いいよ」って応えただけ。そう言えば、「好き」と言われたことない。付き合ってもう2か月になるのに。
手を繋いだことはあるけど、それだって私がお願いしたからで、龍太くんから、は一度だってない。
だからね、私思うんだ。きっと、私たちは付き合ってなんかないんだって。ただの私の片想い。
でもね、それでもいいって思うの。龍太くんを独占できるなら、それで。
だって龍太くんは格好いい。野球部のキャプテンで、エースで、それだけで龍太くんを気に入る人もいる。優しくて、頼りになるそんな人。だからとっても怖いんだ。
「ねぇ、私のこと好き?」
そんなことを聞いてしまったら、龍太くんが離れて行ってしまいそうで。だからね、私は動きそうになる口をしっかり止めて、笑顔を見せるようにしているの。
「…亜美、大丈夫?」
「え?なんで?」
「なんか、切なそうな顔してるよ?」
優実の顔が「心配」って言っている。ごめんね、優実。いつも、心配かけてばっかりで。なんでも話せるはずなのに、龍太くんのことはあんまり話せない。一度愚痴を話してしまえば、きっと止められない。龍太くんにだって言いたくなってしまうから。だから私は精一杯笑うの。
「大丈夫だよ」
「…あのさ、あんまりつらいなら、やめちゃえば?」
「何の…こと?」
そう聞いた。本当は、聞かなくたってわかってる。優実が何を「やめちゃえば」いいって思っているのかなんて。そして優実も私がわかっているのを知っている。けれど、優しい優実は言葉に出した。
「龍太くん」
「…」
「そんなにつらそうな顔してまで、付き合ってる必要あるの?」
「…そんなにつらそう?」
「うん」
きっぱりと言った。だからわかってしまった。きっと今にも泣き出しそうな顔をしているんだろうと。
「…明日の土曜日ね、デートなの。部活が顧問の用事で半日に終わるんだって」
「うん」
「やっぱり、私が誘って、龍太くんはいつもみたいに『いいよ』って言っただけ」
「そっか」
「…指輪買ってくれたらいいな」
「そうだね」
「そうしたら…きっと、つらくても頑張れる気がする」
「つらいなら頑張らなくても、いいんじゃない?」
優実がそう言って、私の髪を撫でた。
「なんか、お母さんみたいだよ、優実」
「だって、あんたのお母さんだもん」
2人で笑った。笑いすぎて、涙が出た。「頑張らなくていい」そんな言葉が嬉しいなんて。私、それくらい、「頑張っていた」みたい。
龍太くんの隣にいられて、幸せだった。ふとした時に見せてくれる笑顔が好きだった。一緒にいても、あまりしゃべってくれないけれど、ちゃんと話を聞いてくれる横顔が好きだった。
だけどね、龍太くん。あなたが私を好きじゃないなら、私の頑張りは無駄になる。必死で努力してそれでも手に入らないものっていうのはね、近くにあると苦しいんだよ。だから。
目が覚めると朝だった。
優実は?と周りを見渡してみる。
「あ、そうだ。昨日、彼氏さんが迎えに来てくれたから、帰ったんだった」
昨日、話しが盛り上がって気付けば、夜だった。「泊っていけば?」
と言った私に、「ごめん、なんか、彼が迎えに来るって」と照れながら、携帯のディスプレイを見せてくれた。
その顔がすごく幸せそうで、素直に羨ましかった。龍太くんは迎えに来てくれるなんてことないし、返信以外のメールはくれないから。想い、想われている優実がたまらなく羨ましかった。
「はぁ~」
思わすため息が出た。けれどすぐに首を横に振る。今日はずっと楽しみにしていたデートなのだ。
「よし!」
軽く両頬を叩き、気合を入れる。ベッドから出て、時計を見た。予定より30分寝過したけど、まだ余裕で間に合う時間だった。着ていく服は昨日優実とあれこれ言いながら決めてあった。胸のあたりを少し露出しているワンピース。足を出せば、と優実は言ったが、自信がないため、レギンスで隠す。肩までしかない髪を時間をかけてアップにした。それが今の私の最大級の御洒落
最後に鏡を見て、家を出た。少し早めに歩いたためか、待ち合わせ場所に、30分も早く着いてしまった。
「早く来すぎちゃった」
思わず独りごとが出た。デートなんて、久しぶりだから、テンションが上がるのも仕方がない。久しぶりと言っても、付き合ってこれで3回目だ。部活の忙しい龍太くんを誘っていいかわからず、頻繁には誘えないから。龍太くんからは何も言ってくれない。デートももちろんいつだって、私発信。
そこまで考えて、私は首を激しく横に振る。
「暗くなっちゃダメ。今日で最後かもしれないんだから、楽しまなくちゃ!!」
「…今日で最後って何が?」
私の独り言だったはずの言葉は、その声で、「独り言」ではなくなった。
「…え?」
下がっていた視線を上に持っていく。そこにあったのは、私の大好きな人の顔。
「待たせてごめんね」
そう言う龍太くんの顔には汗がにじんでいる。部活を終わらせて、必死で走ってきてくれたのだろう。
こういうところに、愛を感じないわけではない。けれど、優しいこの人は、相手が私でなくても、こうして走ってくるのだと思うからその愛を手放しで喜べないのだ。
「…待ってないよ」
実際は20分待った。だけど、約束の時間まであと10分もある。龍太くんだって予定より早く来てくれたのだ。それなのに、待ったと言って困らせる理由はない。
「そっか。良かった。…ところで、最後って何?」
「…え?」
「いや、亜美、さっき最後かもって言ってたからさ」
「言ってないよ、そんなの。龍太くんの聞き間違い」
「…なら、いいんだけど」
まだ完全に納得していない様子の龍太くん。そんな龍太くんを笑ってごまかし、「ほら、早く行こう」と話を変えた。
だって、言えないよ。龍太くんを試そうとしているなんて。
特に何をするとは決めていなかった。学生だし、あまりお金がないため、2人で並んでデパートに入った。ぶらぶらと歩きながらウィンドウショッピングを楽しむ。
「ねぇ、あれ、可愛くない?」
花柄のチュニックを指した。
「そうだね」
「ねぇ、あれもいいね」
リボンの付いた淡い水色のミュールを指さす。
「そうだね」
龍太くんは応えた。
「…」
同じ言葉を繰り返す龍太くんの横顔を見る。言いたくなってしまった。ねぇ、全部に、「そうだね」って言うつもり?と。けれど、言葉はお腹の中に閉じ込める。
「手を繋いで」とお願いをした龍太くんとの距離は1センチだって離れていない。それなのに、遠く感じしまうのはなぜだろう。
私は、繋いでいた手を外し、龍太くんの腕に巻きつけた。龍太くんは一瞬驚いてこっちを見たけど、すぐに視線を外す。それでも私は、手を離さなかった。
「あれも可愛いな」
小さな声で呟く。今度は指を指さなかった。ただ視線だけ。それだけで、四葉のクローバーがワンポイントで入っているゴールドの指輪を指した。もちろん、イミテーションだから、値段は安い。
500円から1000円と書かれたコーナーに置かれている。しかも、チラッと見えた値札に5という数字が見えたから、たぶん500円の安物。
「買ってあげようか?」
その一言がほしかった。買ってくれなくてもいい。ただ、龍太くん発信の「何か」がほしいかった。それがなくても、せめて、私の視線を追ってほしい。指を指さなくても、どれを指しているのかわかってほしい。
龍太くんに好かれているという証拠がほしかった。けれど、龍太くんは何も言わない。「そうだね」すらなかった。
私の視線を追ってはくれなかったみたい。私が何を指しているのかわからなかったんだね。龍太くんの視線は前を見ていた。私が見てほしかった指輪は龍太くんの瞳に映らなかった。
「ごめん、ちょっと、トイレに行ってくるね」
泣きそうになった私は、そう言って龍太くんの腕から手を解いた。
鏡に映った私は、醜くて、龍太くんと一緒に歩いていることが許されないんじゃないのかと本気で思えるほどだった。見た目も、心も醜い。
好きになったのは私だ。龍太くんは「いいよ」と言っただけ。それは好きになる努力をしてくれるという意味だったのかもしれない。なら、一緒にいられるだけで、優しくしてもらえるだけで、本当は十分なんじゃ、ないだろうか。それ以上求めるなんて贅沢な事なのかもしれない。
でも、それじゃ、足りない。「好き」になってもらいたい。私だけを見てほしい。もし、そうでないなら、傍にいてほしくなんかない。贅沢でわがままな想いなのかもしれない。でもね、龍太くん。手に入らないのに、近くにいることは、きっと残酷なことなんだよ。少なくては、私は、そう思う。
トイレで頭を冷やして返ってくると、龍太くんは女の人と一緒にいた。綺麗な大人の女性。その人と龍太くんが「笑っている」。
きっと、逆ナンだろう。龍太くんは格好いいから。高校生でも大人びて見える龍太くんはその大人の女性ととてもお似合いに見えた。
その人といる龍太くんはとても楽しそうで、私には向けられたことのない笑顔を浮かべていた。
「そっか、龍太くんも私と一緒にいて色々我慢してたんだ。…無理してたんだ」
なんて簡単な答え。それならば、龍太くん発信がなかったこともよくわかる。きっと好きになろうと努力してくれたのだ。けれど、できなかったのだ。だから、龍太くんからは何も言ってくれないし、何も与えてはくれない。私が欲しがったものをくれるだけ。
ねぇ、でも、それじゃあ、悲しいよ。
「あ、亜美。おかえり」
私に気付いた龍太くんが彼女に軽く会釈をして、私に近づいてくる。触れるか触れないかくらい近い距離。
本当は、そんなに近寄りたくなんかないんでしょう?
本当はさっきの人ともっと一緒にいたいんでしょう?
「…もういいや」
「え?」
小さな声で言った私の言葉を拾えなかったらしい。龍太くんは少しかがんで「もう一度言って」と視線で伝えた。
でもね、それも。
「もういいの」
「何が?」
「帰るね」
「え?」
「ほら、龍太くんのクラス、月曜日、英語の小テストあるでしょ?」
「あるけど…?」
「だから、勉強しなくちゃ。龍太くん英語苦手だったでしょ?私、いつもノート貸していたもんね」
「亜美…?」
「龍太くん、私のクラスに友だちいるよね?…健くんとか。健くんなら、英語得意だし、うん。大丈夫だよね」
「亜美!」
急に、龍太くんが大きな声を出した。周りにいた人たちの視線が一斉に集まる。
「ちょっと、大きな声出さないでよ、恥ずかしいじゃん」
「亜美がわけわからないこと言うから悪いんだろ?」
小声で話す私とは裏腹に、龍太くんの声はだんだん大きくなる。
こんなに感情を出す龍太くんは初めてだった。けれど、色んな視線が突き刺さっている最中の今、それを楽しむことも喜ぶこともできなかった。
とりあえず、人気のないところへ行こうと、強引に龍太くんの手を引いて、近くの公園まで走る。公園には幸いな事に誰もいなかった。
ブランコしかない小さな公園だから、遊びに来る人なんて誰もいないのかもしれない。
とりあえず私たちは、ブランコに座った。
「…」
無言で、けれど確実に怒っている龍太くんは怖い。
「えっと…龍太くん?」
「最後って何?」
「え?」
私は記憶を辿ってみた。「最後」それは、待ち合わせ場所で私が漏らした独り言のことだろう。
「えっと…」
「俺との関係のこと?」
龍太くんの視線が私を見る。それが痛いくらい突き刺さって、怖いのに、もう最後なのに、ちょっと嬉しかった。私は小さく首を縦に振る。
「なんで?」
「なんでって…」
「なんで?俺のこと、嫌いになった?俺、何か気に触るような事でもした?」
「え?」
「俺じゃ、だめなの?それとも、他に好きな人が出来たとか?」
「そ、そんなんじゃないよ」
「じゃあ、なんで」
どうしてこんな風になっているんだろう。だって、私を好きじゃないのは龍太くんの方なのに。どうして龍太くんが不安になっているんだろう。
やめてほしい。だって、期待してしまう。期待したら、きっとまた傷つく。でも、真っ直ぐ私を見つめてくる視線が「好き」だって言っているように思えてならないのだ。
だから、ねぇ、聞いてもいい?聞いても困らず応えてくれる?
「…龍太くん。私のこと、好き?」
少しだけ、龍太くんは驚いて、それから、いつもの笑顔で言った。
「好きだよ。一番」
「…じゃ、じゃあ、どうして…『龍太くんから』は一度もないの?」
好きも、会いたいも、手を繋ぐのも全部が全部、私から。龍太くんからは何もない。それが寂しい。
「だって…言ったらキリがなくなるから。求めたら、亜美が離れるでしょう?」
「え?」
「…亜美、俺のクールなところが好きなんだろ?小林とそう話してるの聞いた」
小林は優実の名字だ。そう言えば、ミーハーで好きだった頃、騒ぎながら、「あの後輩とかにクールなところがまた格好いいんだよね」とかなんとか話してた気がする。
「だから、俺から会いたいとか好きとか言っちゃいけない気がして」
「そんなこと…ないのに」
「…俺、亜美が俺のこと好きになる前から、亜美のこと好きだからね」
そう言って笑った龍太くんの顔はさっき、大人のお姉さんと話している時の顔だった。少し照れて、でも、嬉しそうに笑ってる。
「さっきの…人は?」
「さっきの人?」
「トイレ言っている時話してた人。私、あんな風な笑顔向けられたことない」
「あ、あれ…」
龍太くんの目が泳いでいる。私はまた視線を下げた。
「やっぱ、綺麗な大人の人の方がいいよね」
心の中で言ったつもりの言葉は、無意識という名のもとに龍太くんに届いていた。
「え?違うよ!……本当は、もう少し後で、喜ばせようとしてたのにな」
そう言って頭を掻きながら、持っていたバックから小さな箱を取りだした。
綺麗な包装がされて、リボンまで付いている。
「さっき買った。…デートの記念。安物で悪いけど」
「また、その顔」
「え?」
「…ううん。なんでもない。…開けてもいい?」
「どうぞ」
龍太くんは恥ずかしそうに視線を泳がしながら、大きくうなずいた。綺麗な包装だから、丁寧に外したかったのに、上手く外せなくて、ビリビリになってしまう。それでも、龍太くんはにこにこしていた。サンタの話をする子どもみたいに、嬉しそうに。
「これ…」
私は、中身を見て、止まってしまった。四葉のクローバーがワンポイントのゴールドの指輪。
「どう…して?」
「だって、亜美、可愛いって言っただろ?」
「だって…さっきは…」
見てなかったのに。
「驚かせようと思って、気付かないふりしてた。すぐに買ったのは、今度買いに来た時なくなっていたら嫌だから。ちなみにさっきのお姉さんは、店員さん。『可愛い彼女ですね』って言われたから、『はい』って答えたら、からかわれたんだ。…つまり、亜美のこと話してたから、笑顔になってただけ」
必死で説明してくれる龍太くんの顔が真っ赤になってて、でも、それでも思いっきり笑顔で。だから、私は何も言えなかった。
下を向いて、指輪を付ける。少し迷ったけど、左手の薬指にはめた。
「…龍太くん」
「ん?」
「大きいよ」
左手を見せる。薬指には少し大きい指輪。
「ごめん」
「サイズ、聞かないからだよ」
涙目になりながら、指輪を人差し指に移す。サイズはぴったりだった。
「次からは、サイズ聞いてね」
「え…?」
「それから、…好きって言ってね。会いたいって言ってね。言わなくても手を繋ぎたくなったら、龍太くんから繋いでね」
「…不安だった?」
龍太くんがブランコから降り、私に近づく。アップにしているのに、かまわず髪を撫でた。
「うん」
「ごめんね」
「好き。龍太くん、大好き」
そう言って、龍太くんに飛びつく。突然の私の行動に、驚きながらも、龍太くんはちゃんと受け止めてくれた。ギュッと、力を込められる。少し苦しい位の抱擁。その痛みさえ、嬉しくて。
「え?」
龍太くんの胸に埋めていたはずの顔。それが龍太くんの大きな手によって持ち上げられる。2つの視線が重なった。次第に龍太くんの顔が近づいてくる。唇が静かに触れた。初めてのキスは、『龍太くんから』。
「キスも、言わなくてもしていいよね?」
「…龍太くんって、そんなキャラだった?」
「うん。これからは、本当の俺を出していくから」
「うん」
「俺、亜美のことめちゃくちゃ好きだし、独占ほ強いけど、それでも、俺から離れないでね」
私は返事をする代わりに、短いキスを送った。
「あ、そうだ、亜美」
「ん?」
「その服、俺の前以外禁止ね」
「え?」
「露出しすぎ」
少し頬を赤くしてそう言う龍太くんに私は笑った。
どうだったでしょうか?
何かありましたら、レスポンスいただけると嬉しいです。
また、春樹亮は他の作品も書いてます。
もし気に入っていただけたのであれば、他のものも見てやってください。
※お気に入りやコメントありがとうございます。本当に幸せです。