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でっちあげ探偵、巻き込まれ推理(?)ショー【2000文字】

作者: 有梨束

「犯人をでっちあげてほしいんだ!」

「はい?」

俺を名指しで訪ねてきたのは、面識のない演劇部の部長、鶴橋だった。


「先輩は冤罪を作りたいんですか?」

「そ、そうじゃないよ!」

鶴橋は大袈裟に首を振って、冊子を俺の机の上に置いた。

そこには、『財閥跡取り息子殺人事件』と書かれていた。

「演劇部の台本なんだ。昔いた先輩が書いたものでね」

「はあ」

「これのね、最後の数ページが、…破られているんだ」

そう言ってペラリとめくると、確かにちぎられた跡があった。

「ちょうど探偵役が犯人を名指しするシーンっぽくて、真相がゴッソリわからないの」

「はあ」

「再演したいのに困ってて」

「はあ…」

「だから、君にこの本の犯人が誰か考えてほしいんだ!」

「…なんで俺なんですか?失礼ですけど、先輩と話すのも初めてですよね?」

「君の噂を聞いたんだ!『屁理屈大魔王』だって!」

演劇部のせいか、リアクションがいちいち大きい、声デカい…、あと遠慮がなさすぎる。

俺が屁理屈大魔王とやらなら、この人は『デリカシーゼロ女』だろ。

「その屁理屈力を見込んでお願いしたいの!」

「断ります」

「なんで!?」

「頼まれる筋合いも、引き受ける道理もないので」

「いいね!その調子で頼むよ!」

いや、今のは俺の理屈が通ってるだろ。

「とりあえず読んでみてっ!」

すげえ嫌そうな顔をしているのに、鶴橋は怯むどころかニコニコしている。

そして一ページ目を俺の顔の前に持ってきた。

「はあああ…」


パーティーのため前日から集まる、財閥の親族たち。

だが翌朝、跡取りの長男が部屋で殺害されていた。

腰に後ろから刺された跡、そして顔面を横一文字に切り裂いた跡。

犯人候補は、前日に口論していた婚約者、長男の両親、それから影の薄い妹だった。

婚約者と妹は友達同士で、お互いに庇っているんじゃないかという流れだった。


「この中からテキトーに犯人にすればいいじゃないですか」

「その理由が思いつかないから、君に手伝ってほしいんだよ!」

「じゃあ、妹の幸子で」

「おお!なんで?」

「幸薄そうなんで」

「真剣に考えてよ!君と私の仲じゃないか!」

「まだ出会って10分ですよ」

俺は台本の破けた部分を見ながら、疑問を口にする。

「この台本以外にするのは?」

「今度OBが来るから、当時の先輩の台本がいいんだよ!」

「その先輩にこの台本貰ったらいいじゃないですか」

「今はこの1冊しかないんだよね」

「データで取っておけよ…」

一冊しかない台本、引きちぎられたような跡、わからない犯人。

わざわざページを破ったのはなんでだ…?

この台本ごと処分すればよかったじゃないか。

「そもそもこれにしようって誰が言ったんですか?」

「副部長だよ」

「どんな人ですか」

「ん?真面目な人だよ、部長になりたかったくらい熱心な人」

「でも副部長なんですね」

「部員の投票で決まるからね。私と僅差だったの」

「モノを粗末にする人ですか?」

「ううん。台本に保護フィルム貼っているよ」

そんな人が破ったりしない、本当に?

そして、長男にいなくなって欲しい人は?

「…やっぱり妹が犯人ですよ」

「幸薄いじゃ理由にならないよ!」

鶴橋はムッとしてちょっと可愛かったけど、俺には効かない。

「この長男が死んでも困らないの、多分妹くらいですよ」

「…え?」

長男はなんでも持っていた、地位も財産も、婚約者も。

そして、何も持っていない妹

『何も持てなかった妹』という動機だったのなら。

その結末を、部長の座を手に入れられなかった副部長が先に読んでいたとしたら。

「口論していたとはいえ婚約者も、両親も、跡取りが消えたら面倒でしょう」

「むむむ、まあそうね」

「妹ならむしろ後釜に入れてラッキーですよ」

「たしかに、屁理屈は通るけど…。動機は?」

「知りません」

「えええ〜!」

「だから、見せてもらいに行きましょう」

俺は立ち上がって、教室を出る。

「えっえっ、どこ行くの!?」

「副部長はどちらに?」

「部室かな」

「ページ破ったの、副部長ってことはないですか?」

「えええ!?ど、どうして!?」

「欲しいものが手に入らなかった、から?」

「へ?」


本当に台本を破ったのは副部長だったし、犯人は妹だった。

妹が兄を殺したのは、大事なものを取られたからだった。

長男の婚約者は妹の親友で、兄から何もかも奪われてきた妹にとって、最後の砦のような存在だった。

それで仲を取り持つために、兄の部屋を訪れた。

だが、『さすがお前の友達だ。大したことない女』というセリフが決め手になった。

その場にあった果物ナイフで刺してしまった。

妹が初めて兄から奪った瞬間だった。

それを読んだ副部長は、自分にもこんなに醜い感情があると思ったら怖くなった、と。

誰にも読まれたくなくて破ってしまった、と言っていた。

「…私、悪いことしちゃったかな」

「さあ?」

「…あははっ。君は屁理屈大魔王じゃなくて、『取り繕わない魔人』なんだね」

「はあ」

「気に入った!演劇部入らない!?」

「絶対お断りです」



毎日投稿22日目。お読みくださりありがとうございました!

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