スノードロップ
初投稿です。
彼女が死んだ。雪が降る夕方だった。歩道を歩いていたところ後ろから車に轢かれたらしい。
そう教えてくれたのは彼女にかばわれた小さな彼だった。
僕は彼になんていったんだっけ。あまり覚えていない。どうでもいいか。
彼女が死んだ。明かりの点かない部屋を外から覗く。
この部屋でコーヒーを飲みながら恋愛小説を読む彼女が大好きだった。
たまに僕を見て、私もこんな恋愛がしたいという彼女は、とても少女らしい可愛らしい笑顔だった。
彼女が死んだ。両親を亡くして公園の入り口の木下、そこで雪があたりながら泣いていた僕を暖かい部屋に迎えてくれた彼女が死んだ。
部屋の隅で無気力な僕を色々な所に連れて行った彼女が。僕に心を与えてくれた彼女が。
僕のほうが先に死ぬんだと思っていた。
だって、見るからに不健康だったし。彼女は未来に希望を持った目をしていたから。
彼女のいない世界で僕は何をすればいいんだろう。彼女に与えてもらった暖かさは、どこへ返せばいいんだろう。世界はどうして理不尽な運命を与えるんだろう。
彼女も孤独だった。生まれて間もなく捨てられていたところを養護施設に拾われたらしい。
それでも明るかった。小学性、中学性、高校生、当時の彼女は知らないけれど、僕と過ごす彼女はいつも微笑んでいた。
そういえば、一日だけ彼女が泣いていた日があった。
文字の読めない僕はわからなかったけれど、はがきを持って泣いていた。
泣いている彼女を見るのは初めてで、僕は一日中寄り添うことしかできなかった。そんな僕を彼女はゆっくりと撫でてくれた。
次の日には笑顔を見せてくれた彼女に僕はすごく安心したんだ。
そっか、僕は彼にそうすればよかったんだ。泣きながら彼女の死を教えてくれた彼に。 彼女に助けられた彼に。
僕は、駆け出した。僕にごめんなさいと言ってくれたあの場所に。まだいるかわからないのに、なぜか足は止まらなかった。やるべきことが見つかったからだろうか。
雪はすでに止んでいて、僕の足は軽かった。
僕が彼女に教えてもらったことを、誰かにできる。それがすごくうれしかった。
彼女が僕の中に生きているのを感じたから。
見つけた、彼は近くの木の下であの日の僕のように、いや僕以上に泣いていた。彼は僕より感情が豊かなようだ。僕は彼に向って走った。
ふと目の端に明かりが見える。
気づくと僕は横になっていて体が痛かった。あれって思った時には、僕は息がどんどん浅くなっていく感じがした。
あぁ、僕は車に轢かれたのか。
彼女も親も車に轢かれて死んで僕もそうなのか。
ははは。
なんだか笑えてきた。
こんな死に方なんて彼女も親も笑っているんだろうな。
そういえば彼は?
あぁ、さっきより泣いている。僕の死ぬ原因に彼は関係ないというのに。
慰めたかったな、頭をなでるだけでも良かった。そしたら、彼女をこの世界に残せたというのに。
雪の降る中、道路の真ん中で死んでしまった一匹の猫を見て、小さな雄猫はさらに泣いた。




