作者がGWなので書作を休むらしい~勇者と魔王はまったり過ごしたい~
読んで下さりありがとうございます
「魔王くーん、いるー?」
いやあ、冒険外で此処に来るのは数ヶ月ぶりだなぁ。つうか、城の外観が本当に不気味だよなぁ、魔王君の居城は。もっとメルヘンチックにすればいいのに。まあ、魔王君には魔王君の考えがあるのも事実だし、まあいいんだけれど。
「これはこれは勇者様ではないですか」
「おや、これは参謀さん! 魔王君、居ます?」
魔王君を支える知略の将である参謀さんが、門を開いてくれた。本当、この人の策謀には毎回手こずらされるんだよなぁ。時には川の流れとか地形とか変えたりしてくるし……
とは言え、今日から暫くの連休。この世界にもやっと平穏が訪れるってもんよ。なんたって、神がGWなのだから。そんな日ぐらい、俺達も争いもなくゆっくりしたいってもんさ。
参謀さんの案内でついたのは、だだっ広い食堂。いやあ、本当にいい暮らししてんなあ。尚且つ、俺達が辿り着くまで、いいご飯も食べてるんだよなあ。
時々「ククク。調子に乗ってられるのも今のうちだ」とか、言っとけばいいんだから。それに比べて俺達は、苦難の連続よ。
読者なんて、勇者が苦労したら苦労するだけ喜ぶんだから。そう考えると、一番の被害者は俺達なんじゃないか?
「では、お座りになってお待ちください」
参謀さんが、わざわざ椅子を引いてくれたので頭を下げて座る。ってか、椅子のクッションもすげぇフカフカじゃん! 下手したら俺達が泊まる宿のベッドなんかよりも全然質がいいんじゃねぇの!?
くっそー、悪は悪でも結局は王族ってことかよ! ちくしょーめ!!
暫くすると、魔王がやって来てはニンマリと笑う。
「おお! 勇者ちゃん! 久しぶりだねぇ!」
立ち上がると、魔王君は「いいからいいから」と、座るように促してくれた。気が利く王様じゃん。
「でさ、最近は調子どーなのよ? 話は聞いてるけど、結構大変なんだって?」
椅子に座るなり、魔王君はぐいと顔を近づけ聞いてくる。
「いやいや、それを貴方が言うかねぇ……大迷宮に召喚したでしょ?」
「え?あ、ああ。晶核龍の事?」
「そうだよ! なんだよ、あいつ! 魔法無効だし! 物理も歯が立たないし!!」
「おー、参謀! 上手くいったみたいだね!」
「流石は我が国を支える魔王様。わたくし、感激がとまりません」
上手くいったねじゃないよ。感激が止まりませんじゃないよ。ハイタッチするんじゃないよ!
毎回毎回、なんで強くなった以上の強さで出現してくるんだよ。
異常だよ! 尋常じゃないよ! 冗談じゃないよ!
「──で、何か倒す方法とかないの?? ヒントとかでもいいからさあ」
魔王君と参謀さんは、口の前で指を罰にして
「作者様から教えるのは禁止されてるんで!」
「ですね、魔王様」
くそ作者が! 傷だらけなってんのはこっちなんだぞ。なんなら、タンク役のジュンが瀕死だって! 勝てねぇよ、あんな化け物!
なにが「下位迷宮なので安心です」だとか「おや、あんな所に隠し通路が」だよ! まさか、黒幕が案内人だなんて思わなかったよ! ビックリだよ! 気がついたら居ないんだもん!
「まぁ、もういいや」と、酒を一気飲みして飯をかっ食らう。食ってねぇとやってらんねぇよ! しかもなんだよ、どちゃくそうめえよ! 揚げ物最高かよ!
「でも、いいじゃん勇者はさあ~」
「……なにがよ?」
「戦えば戦うだけ強くなってくんだよ? 我なんか、まだ「まあよい。今倒された堕天は我が配下で最弱」とか。台詞しかないんだからさぁ」
ちょっとまてよ。
「堕天って……堕天使・ネメシス?」
「そうだが?」
ふ、ふざけんじゃねえよ! え、あいつ最弱だったの? 山一つ吹き飛ばしてましたよ?
「魔王様……それは」と、参謀さんが口の前で指を罰にする。
「……あ。勇者ちゃん、今のは聞かなかった事に」
「出来るか!!アイツのせいで腕一本消し飛んだんだけど!」
「でも~そのお陰で光精霊と契約して、腕が生えたんでしょ?」
「それはそうだけど」
「すごいじゃん。世界剣の一つ、ありとあらゆる魔法を斬る剣アルス・マキナを握れるようになったんだからさぁ」
でもその剣が晶核龍にゃまったく効かねぇんだって!!
弾かれちゃってますよ!
「そこにヒントが──」
「魔王様」
「ないね! うん、まったくない!!」
「はぁ……」
「で、他の三人は何処に行ったの?」
「リンとガイとジュン?」
「そうそう!!」
「ぁあ、なんか各々やりたい事あるみたいだよ? 連休ぐらいは、自由になりたいんじゃないかな」
ふうんと、魔王君はお酒を嗜みながら相槌をする。
「と言うかさ、思ったんだけどね」
「どうしたの? 勇者」
「「使えないと追放された無能冒険者。精霊の加護で封印されし聖剣使いでSランク~今更戻ってきてくれと泣きつかれてももう遅い。目指すは弱小ギルドで世界最強」ってなに?」
「ああ作者様が書いたタイトル? ってやつだっけ」
「そうそう。追放されたって俺の事だよね? え、最弱ギルドだなんて思ってなかったんだけど。めちゃ失礼じゃない? と言うか、タイトル長すぎじゃない? 舌かみ切るレベルだよね?」
「勇者ちゃん、ヒステリックはファンを逃がすよ……落ち着いて」
「流石魔王様。人の心配が出来る優しい御方です」
「ありがとうね、参謀」
「いえいえ……ここは、わたくしが一つ宜しいでしょうか」
「お、参謀。発言を許可する!」
「では、お言葉に甘えて。簡潔に言えば、世知辛い世の中なのですよ作者様も。沢山居るんですよ、わたくし達の作者様以外にも」
「ふむふむ……と、言うと?」
駄目だ全くわからん。
「簡単に言いますと……作者様が創る作品の住人がわたくし達な訳です」
「ふむふむ」
「ですが、作品が作品で在り続けるには読者が必要なわけです」
確かに。これは分かりやすい。観測する者が居るからこそ、モノはモノとしての役目が与えられる。逆に、観測者がいなければ、そのモノは意味をなさない。見るものが居なければ存在しないのも当然。
「流石は我が参謀! 我は誇らしいぞ!」
「恐悦至極でございます。──なので作者様が多くの読者を求める為の一つの手法……言わば、アピールってやつでしょう」
「なるほど。つまり、そのアピールをすることによりこの作品を見届ける者がおおくなると?」
「左様です」
「ほう。なるほど! 因みに、今はどれぐらいの読者がいるんだ?」
やっぱり結構な人数が居るんじゃないか?自分でいっちゃなんだが、ドラマチックな展開や胸の熱滾る展開、手に汗握る展開だって数多い。
こんなの見届けたいに決まっている。一億人は下らないだろうな。いや、一億人でもだいぶ、遠慮してなんだけど。この世界の人口が八十億人だからなあ。遠慮して。
参謀は指を宙で上から下へ動かして口にした。
「二人です」
「「二人かよ!! 頑張れよ! くそ作者」」