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寝起きの惨劇

「うぅ...。」

最悪な夢を見た。

私は予知夢を見れるのだが、育ての義理の両親がこの世界から居なくなるというのだ。

孤児だった私を自立するまで育ててくれた孤児院の優しい老夫婦。

そんな道徳心の塊である善人を、神はそろそろ摘み取ろうというのだ。

ありえない、そんなことはあってはならないだろう。

身を縛り付ける嫌な予感を抱えながら、私は急いで孤児院へ飛び出した。


孤児院へ着くと、人集りが私の胸を締め付けた。

何かあったのだろう。でなければここまでの人数が集まることはそうないのだから。


人混みを掻き分け、その惨状を視界に入れる。


「...!?」

───瞬間、唖然とした。


およそこの世界におけるどんな死に方でも、この最悪なものに勝るものはないだろう。

呼吸は荒れる。目の前の現実を夢幻かと思う。こんなもの、誰が受け入れられようか。


目に入ったのは、形容しがたいほど歪にぐにゃぐにゃに曲がった両親の亡骸だった。普通こんな風には曲がらないだろう。どんな作為で、なんの執念でここまで酷く殺したのか。


誰がこんなことをしたのかと疑問にも思ったが、この現実を前に冷静な思考は霞む。


家族との別れは、もっと穏やかで安らかなものであるべきだと思っていた。だというのに、こんなにも残酷で唐突な別れを突きつけられたのだ。到底受け入れられるものでは無い。

ただ、死と嫌悪の象徴であるその物体と最後の抱擁を交わす気になれない自分に、なんて薄情なのだと、そう自嘲するだけであった。


ふと1人の少年が目に入った。10歳くらいだろうか。茫然自失としながらも黒い瞳から涙を流し、震える手で両親だった物に手を伸ばしている。



──そうか。

この瞬間、私は全てが納得いった。

そうだ、今日は契約の日だったのだ。契約の日とは、9歳になった子供が悪魔と契約を交わされる日である。契約できる者もいれば、悪魔に嫌われてできない者もいる。

この9歳の子供は、契約の代償として両親を失ったのだ。大抵は、特に代償無く終わる者ばかりだというのに、この子は両親を代償に悪魔の力を得されられたのだろう。

なんてことなのだ、これはないだろう。こんなことが有り得るのか。


これは事故だ、仕方がない。だが、この底知れない怒りをどこにぶつければ良いのか。再びこのような被害を出さないためにも、永遠にこいつを消してしまえば良いのではないかとも思った。死んだのは世界でたった2人の家族なのだから。

だけどこの子は悪くない。それは分かっている。だが悪魔だけを殺す方法など私の知る限りは存在しない。


力尽きたのでここまでにします。

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