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ファントム・ミラー  作者: ひかり
【第一部】幻視鏡をさがして
11/78

【登場人物紹介】&ゴルデン民紹介SS(?)

第一部の登場人物の紹介と、

この世界の紹介SSです。

本編に直接繋がりはないのですが、もしよろしければお付き合いくださいませ。

 【登場人物】


 ■イーア

 一応本作主人公、精霊を感じられる13歳。

 この時点で身長165ほど。

 明るい金髪に紫の瞳をもつ。容姿は父方の祖父譲り。身長は発展途上だが筋肉質、普段は騎士団に混ざって稽古しているらしい。

 将来身長はかなり伸びる予定。祖父が190センチを超えていて、これはこの世界でも長身の部類。


 かなり身分の尊い子供らしい。箱入りぼんぼんは否定できない。深窓の姫と言われなくてよかった。


 家族は仲の良い両親と弟妹5人の長男。

 頭にぺったりくっついてくるのは、二番目の妹。上の妹にはお触り(頭なでなで)拒否されている。末の妹にはあまり懐かれていない。ちなみに弟は無口とこまっしゃくれ。


 お師匠こと『黒翼の魔女』は途方もなく長く存在している歩く怪異。ほとんど御伽噺の存在。


 好き嫌いなし。なんでも食べる。

 こちらにいる間に料理を頑張り、チルに振る舞うようになっている。17歳の誕生日以降酒が飲めるので、それをちゃんと楽しみにしている。



 ■チル

 もう一人の主人公、幽霊を見ることができる15歳。

 蜂蜜のような濃い金髪に水色の瞳、かなりの色白。

 身長は160あるかないか。細身、非力だが素早っこい。チルは愛称で本名は別。

 この時点ではまだ年上風吹かしているが、実は結構な甘えたがり。


 元孤児で今は『蒼眼の鷹』の工作員の一人。

 これまで子供の姿で仕事をしていたが、新しい団長は仕事を振ってくれないのがとても不満。


 女装?する時はワンピースの中に剣を忍ばせている。片刃なのはチルの力でも確実に殺傷できるため。まさかイーアの馬鹿力で殴るために使われるとは思わなかった。

 もちろん武器はもっと隠し持っている。


 肉がつきたくないので食べない。最初の食事の時、イーアに食べ方を教えるつもりで肉を食った。大変久しぶりでテンション上がった。

 卵料理が好物。物語後しっかりイーアに餌付けされる。お酒は既に嗜んでいる模様。悪い子。



 ■アル

 頼りになるが頼りにならない24歳。

 身長は180cmほどで程よく筋肉がついている。スーデン人の血を引いているため、褐色の肌に濃い深緑色の瞳、緑がかった黒髪の青年。

 物語開始一年半ほど前からイーアの護衛騎士に就任した。

 三人兄弟の末なので、イーアのことは弟ができたようでうれしい。


 帝国騎士団所属。この世界の騎士団は軍の一組織で、要人の警護・国の重要施設の警備などを行う花形職業。軍の中でもエリート。


 誰にも呼ばれていないが本名はアルトゥール。高名な皇帝の名前なので、よくある名前。



 ■マーナ・ブランド

 うっかり初恋しちゃった13歳。唯一フルネームが明かされる。

 この後お家の立て直しは無事に済んだらしく、半年後に貴族の子女たちが通う帝国学園でイーアと再会する。

 祖母と同じく、精霊に愛される素質を持っているらしいので、将来は男爵家を継ぐことでしょう。


 ■執事さん

 前職はどうやらチルと同業者だった模様。


 ■アロイス

 長い買い付けの旅に行っているので、イーアに会えないまま、夏が終わった。

 アロイス雑貨店は彼がやっとこさ見つけた『ちょっと困った道具』を扱うのにぴったりの場所。



 ■ルッツ

 店番のため登場。『蒼眼の鷹』の一員。未登場ですが外見は灰色の髪に蒼い瞳、身長は170ほど。痩身。

 この組織名も含め東の大公国は蒼の名称を持つものが多い。




 ちょっとだけ、この世界の紹介SSです。

 説明メインのお話ですが、良ければどうぞご覧くださいませ。


 ■ ■ ◾️



「チル、大変だ!」


 店の裏口からイーアは室内に飛び込み、忙しなく周りを見渡す。キッチンにはチルの姿はなく、代わりにルッソが驚いたように顔を上げた。その手には酒瓶が一つ、どうやらもう飲み始めていたらしい。


「イーア、どうしたのー?」

 いつものように間延びした口調でルッソに問われて、イーアは思わずテーブルに両手をつく。おおっと酒瓶を持ったままルッソが仰け反った。


「ルッソ、聞いてくれ」

 いつも細目のルッソに、イーアが詰め寄る。

「アルがなにか罪を犯したらしい。……アルのことだから、婦女暴行とかだろうか。どうしよう」


「へー?」

 イーアがあまりも真顔で惚けたことを言うので、ルッソはこてんと首を傾げた。そのルッソに、真剣な顔でイーアは言う。

「肩に大きな刺青があったんだ。あれは……犯罪者の印だっ!」


 直後、

『そんな訳あるかっ』とキッチンに飛び込んできた青筋を立てたアルと、『なになに?』と目を丸くして買い物から帰ってきたチルにも同じことを言い、イーアは三人から揃って呆れた目で見られてしまった。


 ✖︎ ✖︎ ✖︎



「お前は自分の僕をなんだと思ってるんだ!」

 からから笑うルッソとチルを前にして、アルがイーアを叱る。自分の事を僕という割には、態度が大きい。だが何も言い返さず、イーアはその隣で居心地悪くお茶を飲んでいた。


「まさかろくすっぽに風呂に入らず、一人で帰るとは!」

 せっかく初めての共同浴場だったのに、イーアはアルの刺青を一眼見ただけで混乱して、そのまま帰ってきてしまった。

 おかげでゆっくりできなかったじゃねぇかと、アルは心底面白くないような顔をしてる。


「浴場の中に入っちまえば、結構彫ってるやつは多いのに。海で働く野郎どもは、海の魔物や怪異から身を守るために刺青を入れるんだ」

「そうなのか……知らなかった」

 しゅんとするイーアにまぁまぁとルッソが声をかける。


「確かに、刺青は帝都付近では破落戸(ごろつき)がつけてるイメージだよねー」


「へぇ」

 チルもようやく笑いが収まったのか、真っ赤な顔でイーアの顔をにたにたと見ている。

「しかも婦女暴行って……」


 思い出したのか、またひいひい笑い出す。だんだんイーアは腹が立ってきた。

「チル、笑いすぎだよ」


「元凶はお前だろうが! しかも俺が婦女暴行ってなんだよそれは! 主君とはいえ失礼すぎるだろう」

「本当にすまない、それは謝るよ」


 アルがドンっとテーブルにジョッキを置いたので、イーアはちょっと慌てたが、向かい側の二人は涼しい顔だ。

「まぁ、わかる!」

「アルだったら金と権力で隠蔽しそうだけどねー」


「お前ら二人とも俺の評価おかしくないか!?」

 必死になってアルは叫ぶが、チルはまた楽しそうに笑っている。だが興味があるのか、身を乗り出した。


「俺アルの刺青見たことないもん。どんなん入ってるんだ?」

「ああ……、俺の母親が『月と波』の氏族らしいので、その紋様だな」


 イーアはふと、先ほど見たアルの刺青を思い出す。首の後ろ、俯くと小さな骨が出るあたりから右肩、右手の肘あたりまでに描かれた絵柄は、今まで見たこともないものだった。スーデン人の紋様なら、納得だ。


「へぇ。スーデン人っていろんな氏族ってのがあるのか」

 チルは目をぱちくりとさせる。

「らしいが、俺もよく知らん。お袋の顔も覚えてないしな」

 アルは些事に過ぎないと言わんばかりにかっかと笑う。


 イーアはふと不思議に思う。

「でもそれ、学園で大丈夫だったの? 貴族では刺青なんて珍しいし」

 貴族の子息子女は十四歳から皇都にある学園に入学することが義務付けられていた。イーアも来年からこの学園の生徒になる。


「いや、そんなんでもないなあ。俺の同級生に島国の王子がいたが、あっちの方が派手な刺青してたからな。俺はそんなに」


「ふーん、ティグノズの国王?」


「アレはだいぶ年上だ。メアリーツの王子、背中一面と両腕に彫ってたから。でも奴はそれ以上に素行が悪くて目立ってたな」


「ああ、西の島国だね」

 確か自分の同い年にも王女がいたはずだ。女の子も刺青を入れる習慣があるのだろうか、とイーアは首を傾げた。


「あそこは元々ならずものの国って言われてたからなぁ。同じ海の男でも、東は険浪、西は乱波とか言うな。国王も何度か見たことがあるが、あれは国主というか海賊だ」


 というか、その王子とこのアルがいた学年……。

 先生達は大変だったろうなぁとイーアはつくづく思う。同い年じゃなくて良かった。


 へぇとチルは目を丸くする。

「っていうか、貴族様は刺青しないのか」

「普通はしないよ。中央もだけど、特に北国では」

「へぇ男はみんなするのかと思ってた」


「北の男はしないねー。あっちは女神が肌で自分の民を見分けるそうだから……北では刺青は罪人に刺すんだよねー」

 ルッソの言葉に、イーアは同意する。

「そういうね。北峰では犯罪者は肩から手の甲にかけて罪人の証を彫るらしい。見たことはないけれど」


「ほー、だからイーアは勘違いしたのか」

 チルは目を丸くする。


「元々は北峰の民も、西方も東部も、中央とは違う国で民族だったから……もうだいぶ同化しちゃったけど、いまでも文化の違いはいろいろあるよ。やっぱり驚く事も多いな」

 イーアはため息をつきながら、しみじみと言う。

「勉強不足だなぁ」


 アルが頷く。

「そうだなぁ。民族性も全く違うから、学園で他の国の連中をよく見ると良い。一般には、北は悍馬、東は堅実って言われてるなぁ。中央は鷹揚、とか」

「悍馬って、馬が名産だからだと思ってた」

「いやいや、あっちの連中の血の気の多さはすごいぞ。喧嘩も武術も恐ろしく強いからなあ。間違っても、北の連中と喧嘩なんてするんじゃない」

 イーアは頷く。

「そもそも喧嘩なんてしないけど……アルは堅実って感じじゃないね」


「おい、主君。俺の評価低いな相変わらず。俺は西の血が強いんだよ。親父や長兄なんかは堅実……というより頑固で融通が効かないな。まぁ次兄は堅実なんじゃないか? だいぶ改革派だけど」


 イーアとアルが真面目な話をしているうちに、チルはすっかり飽きてしまったらしい。


「……俺も入れようかな。刺青」

 チルが唐突にそんなことを言い出したので、イーアはぎょっとしてその顔を見る。


「だって楽しそうじゃん。そういうのちょっとやってみたい」


「チル、やめた方が良いよ。一度入れると、消すの大変だよ?」

 刺青を否定するわけではないが、文化的感覚だけはどうしようもない。否定するイーアの顔をチルは不満そうに見返した。


 そのチルの顔を、ルッソがにっこり笑いながら覗き込む。その顔がどこか楽しげなのはなぜなのか。

「チルは色白だからねー。絵入れたら映えるだろうけど……めっちゃ痛いよー?」

「えっ、痛いのか?」

 チルの表情が変わった。

 ルッソはますます楽しそうに言う。


「俺はねー素人に掘られたから、めちゃくちゃ痛かったよー? チルはきっと気絶しちゃうと思うなぁー」

「うぅ……」

 チルが嫌そうに顔を歪めた。


 隣のアルが苦笑いをした。

「さすがルッソ、チルの扱いがよくわかってるな」

「ふうん」

 それはそれで、なんだか面白くない。確かにこの二人は仲が良いようだけど。


「ってかルッソ、お前墨なんか入れてたのか? 初めて聞いたぞ?」

「うん、あるよー。嫌がらせで入れられたのだけどねー。見る?」


 そういうと、ルッソはがたがたと椅子ごと後に下がって、シャツを捲る。スラックスを少し下げると、白肌の腹を出した。


「おいおい、そこかよ」

 にやにや笑っていたアルが、その文字を見てすぐに眉根を寄せた。

「悪趣味だな……おい」


 興味津々で覗いていたチルも、一瞬で顔色が変わる。イーアはその二人の嫌悪が理解できず、首を傾げた。


 ちょうど臍の下あたりに、短い単語が刻まれている。そのまま読めば『私のもの』という意味の、だいぶ拙い字だった。


「これ、もしかして……」

「うん、普段はちゃーんと塗ったり貼ったりして隠してるよー。でも、舐められると違和感あるんだよねぇー」

 青ざめたチルの言葉を遮るように、ルッソがからから笑って言う。

「でも消すにしても跡が残るしねー」


「消してしまえ、んなもん」


 吐き捨てるようにアルが言う横で、イーアはますます首を傾げた。

「どうしてそこを舐めるんだ?」


 ルッソの顔を食い入るように見ていたチルが、ぎょっとしてこちらを向く。アルも目を弧の形にし、にやぁと笑いながらイーアを見た。


「お、そこ興味あるか? あのな」

「まてまて! アル余計なこと言うな! ルッソもそんなもん、しまっちまえ!」

 チルがぎゃんぎゃんと騒ぐので、ルッソは楽しそうに笑いながら、

「お子さんには刺激強いねー」

 なんて言うものだから、イーアは納得がいかない。


「なんでそこで僕がお子様扱いされるんだ」

「わかんなかったら良いんだよ! てかお前結局風呂入ってねーだろ! 今からでも良いから行ってこい!」


 チルが大声で捲し立てるので、イーアはむすっとした顔のまま立ち上がった。じゃあ俺も、と立ち上がったアルをチルがぎりっと睨みつける。


「はいはい、余計なことは言いませんとも」

 その二人のやり取りが不思議で、イーアはただ首を傾げるしかなかった。

お読み頂き、ありがとうございます。

チルとルッソは仲良し、イーアとアルは主従関係の上に成り立っている仲良しなはず、です。


次からは番外編、

夜の墓場でチルにぶんぶん振り回されるイーアのお話です。

良ければお付き合いくださいね!

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