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第二話 「コレラの猛威」

水神祭の後、鍵屋と玉屋は花火奉行の屋敷に呼び出され

奉行の屋敷で部屋に奉行が来るのを待っていた


玉屋市兵衛

「一体何なんでしょうね?

折り入って話があるから屋敷まで来いって」


鍵屋弥兵衛

「どうだろうなぁ…

今年の花火は上手くいったし

町の皆も喜んでた、お奉行様の事だ

また、色々と無理難題言ってくるんだろうよ」


鍵屋がそう言って笑うと廊下を歩く足音が聞こえてきた


奉行

「待たせたな」


鍵屋弥兵衛

「こいつはお奉行様

あっし達に話とは一体何でございましょうか?」


奉行

「うむ…

お前達に問うが、西から流れて来た病の事を知っておるな?」


鍵屋

「西から流れてきた病ですかい?

噂には聞きましたが…

一度かかれば死は免れねぇって、あの病で?

随分と人が死んでると聞きました」


奉行

「そうだ、その病はコロリと言うのだが

今年に入りもう何人命を落としたか分からぬ

その死者を弔う為、お前達に花火を上げてくれと頼んで今年の水神祭は上手くいった

民の評判も良く来年も水神祭は行うのだが…

実は困った事になってな…」


鍵屋

「何があったんで?」


奉行

「あまりにも人が死にすぎておる…

コロリの蔓延をどう防ぐかも分かっておらん

ご公儀はコロリにかかった者を江戸の外れの山に隔離する為の医院を作るとの仰せだ

その費用を捻出せねばらん…

そこで来年の水神祭の花火を作る為の賃金を下げよとの命が下ったのだ」


鍵屋

「花火作りの賃金を?

で、一体どの位下げればいいんですかい?」


奉行

「大川筋の花火にかける費用は代銀三匁以上はかけてはならぬ、からくり花火や筒物も禁ずる

との事だ…」


玉屋市兵衛

「そんな…!待って下さい!

そんなことを言われましても!

それにからくり物や筒物を禁じられたら一体どうしたらいいんですかい?」


奉行

「お前達の言いたいことは分かっておる

儂とて心苦しい…

だが、もう決まったことなのだ

この決定は覆らぬ」


玉屋市兵衛

「ですがお奉行様!町の人々があっし達の花火を待ってるんですよ!

そんな事をされりゃあ…」


鍵屋弥兵衛

「待て玉屋!

ご公儀が決めた事だ、奉行様に言っても仕方ねぇだろう!」


玉屋市兵衛

「でも頭…!」


鍵屋弥兵衛

「お奉行様、分かりました…

来年の水神祭、大川筋の花火には代銀三匁以上はかけません

からくり、筒物も控えさせて頂きます…」


奉行

「鍵屋に玉屋… 本当にすまんな…

お前達には悪いと思っておる

だが、江戸の民がお前達の花火を待っておるのだ

大変であろうが来年の大川筋の花火も頑張って欲しい…

それでは私はこれから城に向かわねばならぬ

これで失礼をするぞ…」


そう言うと花火奉行は部屋を後にした


玉屋

「どうするんですか…

代銀三匁以上はかけられねぇ

からくり、筒物も出来ねぇなら

打ち上げ物くらいしか…」


鍵屋

「仕方ねぇさ…

お前も聞いただろう、病のせいで人が死に過ぎてる…

まずはそいつを何とかしなきゃならねぇ

俺達は花火師だ、上から何を言われようが町の皆の為に花火を作り続けるだけさ

さぁ俺達も店に帰ろう」


鍵屋と玉屋が花火奉行の屋敷を出ると

そこには善治と弥吉が立っていた


弥吉

「とっつぁん、話はどうだった?」


鍵屋は奉行の話の一部始終を二人に話した


弥吉

「なんだよそれ!

そんな滅茶苦茶な話があるかよ!」


鍵屋弥兵衛

「仕方ねぇ事だ、何とかしなきゃならねぇ」


善治

「そんな事が… 分かりました!

そんな大勢の人が死んでるってんなら

何としてでも俺達の花火で送ってやらなきゃならねぇ!

俺は一足先に帰って何か手があるか考えてきます

それじゃあ、失礼します」


そう言うと善治は玉屋へと走って行った


鍵屋弥兵衛

「頼もしいな

玉屋、いい若い者を持ったな」


玉屋市兵衛

「全くです、花火の事になれば頼り甲斐のある男になりましたよ」


鍵屋弥兵衛

「で? お前はどうすんだ?」


弥吉

「え…?

おっと!!!こうしちゃいられねぇ!!!

とっつぁん!俺も先に店に帰ってるからな!!」


そう言うと慌てて弥吉も鍵屋へ走って行った


鍵屋弥兵衛

「全く…

いつも善治に一歩及ばねぇんだから…」


玉屋市兵衛

「お頭…来年までに何とか出来るでしょうか?」


鍵屋弥兵衛

「心配いらねぇさ…

俺達にはお稲荷さんがついてる

こんな事でくよくよしてちゃあ

お稲荷さんに、笑われらぁな!」


鍵屋は玉屋の背中を叩き高らかに笑う鍵屋

走り去っていく善治と弥吉の背中を見た玉屋市兵衛は


悲しく澱んだ江戸の空に一筋の光がさしたように思えたのだった

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