あとがきと蛇足とおまけ
<あとがき>
最後までお読み下さりありがとうございます。
急いで仕上げたので詰めが甘い所があるかもしれませんが、皆様の中に何か少しでも残るものがあれば幸いです。
<以下、読まなくてもいい蛇足>
実は本作「勇気の雲~少年仙人の軌跡~」は、現在構想中の異世界転移ファンタジーの前日譚(スピンオフ)になる予定でした。
「え、ここで終わり?」と思われるラストはその名残りです。
しかし公式企画のテーマ「勇気」が当てはまると気付き、急遽元の作品より先に世に出す事になりました。
ちなみに本編の仮題は「仙女の生まれ変わりと言われても!~平凡女子大生、鬼人に懐かれる~」です。(※題は変更する場合有り)
いつか連載が開始したら、灰簾の見方がトータルで2回ほど変わるかもしれません。
もしどこかでお会いするご縁があったら、その時はまた読んでやって下さい。
それでは改めまして、最後までお読み下さり誠にありがとうございました。
<おまけ︰三話のラストでカットされた部分>
丸眼鏡の若い仙人が扉を開く。
何百、何千年の時を経ても大して変わらぬ容姿の彼は、露台に背を向けて座る美しい青年に声を掛けた。
「灰簾。少しは眠れましたか?」
「あぁ……頃合いか」
「先程、南西方面の複数箇所で交戦が始まったそうです。貴方の読み通り、陽動でしょうね。どうします?」
にこやかな笑みが向けられるが灰簾の目は冷たいままだ。
「ジリの砦だけ捨て置け。引かせた兵は交戦中の地に援軍に向かわせよ。それ以外の増援は要らぬ」
「……承知しました。して、貴方は?」
「北東から山脈を迂回する。兵は精鋭の者だけ連れて行こう」
「おやおや。この戦局で敵本陣を狙いに行くとは、相変わらず豪胆ですねぇ」
白々しく肩を竦めるかつての恩人の言葉を聞き流し、灰簾は純白の羽織を羽織った。
「ククッ、無謀と思うか? そう案ずとも既に手は回している」
「ほぅ? 口先ばかりにならない事を祈りますよ」
笑顔の煽りも意に介さず。
灰簾はすれ違いざまに鼻を鳴らした。
「まぁ策の有無に関わらず豪胆にもなろう。此度の大戦、天界全ての命運が掛かっているのだからな」
「はいはい。普通は慎重になるものだと思いますがね」
(行きましょう、姉上)
久しく忘れていた蒼の笑顔が浮かんだのは昔の夢を見たせいだろうか。
年々戦況は激しさを増しているが、姉を思うだけで灰簾の心には勇気が湧いてくる。
「……今日は雲が多いな」
觔斗雲なくして浮かび上がった彼は、遥か遠くに霞む山の向こうを見果てるのだった。
~了~
流石に温度差がありすぎる&長すぎるのでカットした次第です。
ちなみにですが、実は姉上はまだ死んでません。
「既に手は回している」の「手」こそが蒼であり、灰簾の策の要が蒼でした。
それと「増援は要らぬ」に対して眼鏡がすぐに承知しなかったのは、それなりに大きな被害が出る事が予測出来たからです。
多くの兵を見捨てる策を平然と選ぶ灰簾に、眼鏡も思う所があったのでしょう。
ギスギスしてるように見えますが、仲は普通に良いです。