2 サフラン国外交官、圎薙紀貍
アヴィジェが記憶を取り戻してから数年後
一室で二人の男が向かい合って座っている。
壁は古ぼけたレンガで作られており作られてからかなりの年月経っていることを窺わさせる。
床には真っ赤なビロードが、天井には豪華なシャンデリアが飾られている。
どうやらここは城の一室のようだ。おそらく応接間か何かだろう。
二人の男のうち、初老の青い貴族物の服を着た男が口を開いた。
「流石リータ殿、分かっておられる。お若いのにかなりの勉強熱心なことだ。」
それを聞きもう一人のシルクハットを被った男、つまりはリータと呼ばれた男が口を開いた。
「お褒めに預かり幸でございます。ルシファ殿。さっきの計画の件ですがとても素晴らしい…、」
「そうだろう。あれは偉大なる計画だからな。どうだ、リータ殿も一緒「…ほどに悪質な計画でございますね。」
ルシファと呼ばれた初老の男はリータと呼んだ男に否定されるとは思っておらず顔を真っ赤にして憤った。
「なんだと、貴様!わしを侮辱する気か!ええい、お前らかかれ!」
ルシファの声に周りにいた兵士たちは一斉にリータに襲いかかる。
それに対しリータは細く笑むと縄を使い兵士たちを全員まとめてる縛り上げた。
そしてゆっくりとルシファの方を向いた。
「きっ…きさま何をした!私の兵士がこんなに簡単にやられるはずが無い!たかが外交官に!」
「ごく普通の外交官なら兵士たちは勝てたでしょうね。」
「そうだろう!だから貴様は何を…!」
「ですが、私は普通の外交官ではないので」
「は?」
「戦場の道化師と言えばお分かりになられますか?」
リータは意地悪く微笑むと窓から出ていった。
ルシファはその場から動けなかった。
「ふー、ダルかった。おじいちゃんの相手は疲れるんだよ…。でも、楽しかったから良いか!」
森の中を歩くシルクハットの彼にはもうリータの面影はなかった。
本名・圎薙紀貍
異名・戦場の道化師
転生者でアヴィジェの幼馴染の一人
幼い時の彼は将来こんなことになってるだなんて想像もつかなかっただろう。