1.大勉強時代でも削除を休ませたくない男...1幕目
ざまぁを1章4話目からとプロローグに書いていましたが(現在、プロローグの第1幕で予定変更の旨を書き込み済み)、文字数の関係で2章1話目へと遅らせてしまいました。
あまりにも読者が多くて熱を出してしまったが故であると捉えてくれるとありがたいです...。
ざまぁに期待されていた読者様、真に申し訳ありません...。
ここからざまぁ...させます...。中学後半の主人公の軌跡を...最低でも3幕以上は...書きます...。
夜の食堂。そこを切り盛りしているおばちゃんがそろそろ店を閉めようとした時、2人の女性がやって来た。
「いらっしゃい。ああ、東海の嬢ちゃん達か...。」
「お邪魔します。」
「お邪魔いたします。」
その2人は姉妹であり、姉の方は優しい雰囲気を、妹の方は仕事に徹底しているか落ち着いた雰囲気を纏っている。
彼女達がテーブルに座ると、そこに食堂のおばちゃんが座って3人で話をするのがデフォルトとなっている。話題は決まって一人の男子高校生...『東海影』のことである。
「彼は今日もお腹一杯になって帰ったのかしら?」
「ああ。相変わらず22時以降に出没してくるけどな...。」
「それは聞き捨てなりません。健康的にも大変悪影響を及ぼします。看護師として、それを看過することは出来ません。やはり私が彼の健康を1分刻みで管理してあげるのが」
「「それは断固阻止!!!」」
これもいつもの会話内容である。そして今日は大宜都豊受という名が刻まれたプレートをエプロンにつけたおばちゃんから話が始まった。
「なぁ、東海の嬢ちゃん。アイツは今までどんな生活を送って来たんだ...。あの若さであそこまで食事の有難さを知っているのは正直、信じられんのだ。聞かせてくれよ...。当時のアイツの話を。」
東海姉妹は互いに頷きあい、彼の壮絶な中学校生活を話し始めた。
◇◇◇
中学2年生1月。サッカー部を退部し、母親がこの世からバイバイした後の最恐は反抗期を伴い、ブラックホールと化していた。...見ず知らずの人でも無駄だと判断したら躊躇なく削除しそうなくらいのレベルで1ヶ月も...。
(総ての裏切者に...死を...。)
変質したのも孤立の要因ではある。しかし、それ以前から最恐へと叩いてくる『サッカー部の汚点話』こそが1人の少年を絶望へと陥れた。前までは自慢話のように向こうから話しかけていたクラスメイトも共犯となり、彼は抜け出すことの難しい沼へと沈んでいった...。
最恐になる予兆は以前から存在していた。給食は『サッカー部の汚点話』が広まった時からまけてもらえなくなり、酷い時は少量しか盛らない者も現れていた...。時には教科書や机に落書きが書かれたことも...。
「止めて。どうしてこんなことを...。」
心優しき少年は反撃することなく質問をする。しかし悲しいかな...。先生方は『そんな馬鹿なことがあるか!』とサッカー部の顧問を糾弾し、サッカー部の保護者に何とか真実を説明しようと奔走し、問題解決も進んでいる。
「おいおい。お前にそんなことを言う資格があるのかよ。期待させて裏切ったくせに。」
「そうよ!父さんが『彼をいじめるな!』と注意してきたけど、私は信じないから。髪が長くてキモイエースよりも白馬の王子様のような今のエースの方がいいに決まっているんだから!」
しかしながら中学生のほとんどは反抗期を迎え、信じるべき物を冷静に判断できる年齢には程遠かった...。だからこそ、『多数派に属しておけばいい』という思考回路が生まれて彼をさらに追い詰めることとなる。
少年は再び垂れ者になっていた。始めはまだ母親が生きていると思えば耐えられたし大人しいままでいた。
しかし、今は最後の支えすらも失い、遂には最恐を留める檻の最期の錠は破壊された。静かなる嵐が野へと解き放たれたのだ。
...。
...。
...。
「うわぁ、出たよ。」
「なんでアレがこんな所をほっつき歩いているの!」
「早く退学してくれないかなぁ~。やだよ、アレと一緒の学校なんて。」
俺は罵倒を受けても全然心が痛まなかった...。穴に入っては突き抜ける感覚さえする...。それが実に...清々しい...。心が...スーッとする...。
だけど3種の愛情を捨てた分...素直にもなれる...。『相手を傷つけるかもしれない』とか...そんな防波堤ももはや...ない...。
「削除...。」
だから...素直な気持ちもこんな風にサラリと表現できる...。これでまた遠慮が削除出来る...。警戒すれば...さらなる遅れを生じることもない...。
「女子にそんな言葉を使うな!」
「そうだ謝れ。そういう言葉使ったら謝らなきゃならないだろうが。」
陰口を叩いてくる女子共を庇うように男子2人が登場し...暴力をしてくる...。アイツ等はサッカー部の元部員...。最優先に削除しなれば...。
暴力がある...。削除を...。
足の歩幅...腰の捻り具合...視線の向きなどから右蹴りの角度とそれを支える左足の足運びを把握...有効なプレス回避を選択...。余計な無駄をつけすぎた相手はよろけ...見事に左足から崩れて地に背をつける...。
その後も蹴りが放たれるが...その度に相手を地面に沈めていく...。10回からは数えていない...。
「愚か...。裏切り...。薄情者...。非効率者...。恩知らず...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。ムダ...。」
突っかかる馬鹿は...正当防衛する...。そうすると...この後は決まって知能の低い者は...せこい手段へと切り替える...。
「痛てぇ!おい、先生だ!先生を呼べ!」
人と関わると...余計な事が...発生する...。
そう思いながら俺は生徒指導室に呼ばれ...指導を受ける...。
「西山さん。勉強をしっかり頑張ってテストで好成績を修めるのは感心するけど、暴言と暴力はさすがにアウトですよ。」
俺の目の前にはクラス担任が座っている...。理解不能...。誤認...。それを言うなら...さっきのムダどもに...!これから勉強を...再開しなければ...サクジョしなければ...。
「関わるな...。問題を解決できない学校はキエロ...。」
「もうそんなこと言わないで。先生、今の西山さんを放っておけないの。お腹ももの凄く悲鳴を上げているわ。」
ぐぎゅるるるるると部屋中に鳴り響く...。腹の痛みも...今は心地いい...。クラス担任はお弁当を取り出した...。
「何の真似だ?」
施し...。今までそんなことはなかった...。ああ...また寝首をかくやつか...。サクジョを...サク...ジョ...。
「まずは食べましょう。人間、食べなきゃお話も出来ないわ。本当は余裕もなくて逼迫しているのでしょう?あなたはこんなにもデキル子なのに...。前まではそんなあなたに給食を分け与えてくれるくらいにクラスは温かったのに...。」
「...もう...いい...。こ...のま...ま...!?」
気づけば...俺は...。
「もう耐えなくていいの。学校にも友達にも期待しなくてもいい。目の前にある生徒の状況が変わらない限り、今の先生は全員失格よ。役立たずよ。先生は生徒の意向を聞いてあげるのが仕事なの。それをモットーにするならば、学校の方針よりも生徒の頼みを優先に。この意味をまずは分かってほしいかなぁ~。」
今更...ああ...ああ...。
俺はこの日...お母さんの葬式で枯れたはずの涙を...流した。何故なら...目の前の先生のセリフに...既視感を覚えたから...。あの看護師と似たような台詞が飛び出し...お母さんの葬式を...思い起こしたのだから...。
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