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2.登校でも手を休ませたくない男

朝に『週間阿澄』現ナンバーワンからのとんでもない爆弾、いや原爆を落とされた俺はコーヒーでフルチャージし、登校。


今も歩きながら、左手で画面不注視片手操作をして依頼を3件ほど消化している。


しかし今日は1人ではなく、『俺の弟子』を名乗る不審者と一緒に、桜並木を歩いている。


「俺はお前のことを『弟子』と認めていないからな!」


「え~、いいじゃないですかぁ~。こういうのはまず、形から入るものなんです!評論でも『何事もまずは形から』という言葉も出ている訳ですし!!」


「...お前はまず、形より清潔さから入れ!なんだその指紋べったりなスマホ画面は!!そんなものをビジネスで持ち込んだら確実に仕事を入れて貰えなくなるぞ!!!そんな将来性皆無な者を育てるなど、時間の無駄でしかないんだよ!!!」


俺の隣に歩く不審者の名前は阿澄文。俺の初代四大恩人の内の1人、『週間阿澄』現ナンバーワンの阿澄文一郎の実の娘である...のだが...。


絶望した。物管理があまりに行き届いていない彼女の酷さに絶望した。『彼女にwebライターの知識を教えて欲しい』と阿澄は言っていたが...文はそれ以前の問題だ!


「お、おぅふっ...。初日からなんてどぎつい言葉の弾幕でしょうか...。心が早くも折れてしまいそうですぅぅぅ...。」


...じゃあ諦めろ!


阿澄に頼まれ、彼女に存在する無駄を看破して分かったことは...まず最初に片付けや掃除などの習慣を徹底的に叩き込んでやらないと『webライター』を教える上で様々な無駄を生じさせてしまうことだった。


だからこそ、そこが『整理整頓』という治さなければ(効率化させなければ)ならない最低限の礼儀である点も考慮し、最も厳しく酷評して危機感を与えたわけだが...残念ながらその調子ではここでギブアップのようだ...。


...そもそもまだ俺からの信頼は未だに0!そんな奴が俺のパートナーとか弟子とか絶対に名乗って欲しくない!


「ですが...まだまだ初日!どんな手を使ってでも、信頼を勝ち取ってみせましょう。いつもニコニコネタの隣に這い寄るのが...私のモットーですから!!」


...もし俺がそのネタの対象ならば、意地でも追い返したい所だが...信頼を勝ち取ろうとするその心意気を見込んで、お前を無駄なものとして省くのは一旦保留にしておこうか。


「文よ...。俺の『弟子』を公認なものにしたいか...?」


「はい!もちのろんです!!」


口では誰でも何とでも言える...。口ではな!だが、それを理想()ではなく現実(行動)に出来るか出来ないかで、無駄になるか否かがこの場合は決まるんだ!!


そしてハッキリ言えば、現実に出来るやつなど...俺達の年齢の範囲内では数えられる人しかいない...!


...上司の言うことを無視して別のアプローチで現実にしてしまう豪の者は、尚更に...。


「ならば、試験を与える。それも簡単な試験だ。『今から1ヶ月間、ホームルーム前の教室で荷物検査を行う!その間にずっと荷物を綺麗な状態に出来ていたら...俺の考える限りでのwebライターの極意を叩き込んでやる!』。」


「ま、マジッすか!?」


「ただし!その間に1回でも汚れが見られたら即、今日の朝の話はなかったことにさせてもらうからな!!そもそも、物を大切に扱わない奴を育てたって時間の無駄でしかないのだ!!!分かったな!?」


...資料を複数の人が用いる場面もビジネスでは当たり前だ。


...報告書、計画書、予算案など、そのバリエーションをあげればキリが無いくらいに。


そんな重要な書類を、物を汚くするような相手にむざむざと預ける聖人君主など存在はしない!彼女にそれを教えるだけでも...阿澄に少しの恩義は返せるだろう。


そしてこれで、1ヶ月間の俺の生活最適化作業に邪魔者(無駄)は生じなくなる...!


つ・ま・り、これで俺の理想郷は1ヶ月間の間、保持される!『人と関わらない』生活は1ヶ月間、守られるというわけだァァァ!!!


ふーっふっふ!あーはぁーはぁーはーっ!!うあぁーはぁーはぁーはぁーはぁーはっ!!!ふぁっはっはっはっはぁーっ!!!!ひぁっはっはっはっはぁぁぁぁぁ!!!!!


心の中で高笑いをしながら、俺は依頼を5件片付けてホームルーム前の教室へと入った。


◇◇◇


窓からの日差しが強い。無駄ポイント1点。


右隣から雑音が聞こえる。無駄ポイント2点。


後ろからカシャカシャ音が聞こえる。無駄ポイント2点。


つまり...。


「うるさい。静かにしろぉぉぉ!」


右隣の席にいるエセ風紀委員、及び後ろの席の偽阿澄からの包囲網が俺の効率化を阻害している...。朝くらい静かに出来ないのか!!


まずはエセ風紀委員!


「...ほら、昨日のやつ!『先生の話を一言一句余さずメモに取れ』ってやつ。...やって来たわよ...。」


そうか、そうか。じゃあこれで答え合わせでもするんだな!


俺はカバンから1枚のメモ用紙を取り出した。それは...昨日のホームルームにおいて、先生の一言一句全てをメモしたもの...。


解答は当然...俺の正解に終わったがな。


「え...嘘...。どうして先生の話した内容が全部あるのよ!?だって右手はあの時、スマホで握っていて!?はっ!?もしかして右手でスマホの操作をしながら、左手で先生の言うこと全部をメモしたっていうの!?」


「...ほう。エセ風紀委員でもそういうことは分かるんだな!?むしろそれくらいできないとこれから先、仕事と勉強を両立出来ないだろうが!!それに...先生の言うことを聞くというのは、ただ耳を傾ければいいってだけじゃない!先生から発する内容を、こうして現実の形に出来るか出来ないかで、聞いているかいないかが判断されるんだよ!!それが分かったら、今日以降は俺に注意とかすんなよな...。」


ふっ...勝った!これで昨日の借りは返しただろう...。スッとするぜ...。


次に文。お前は何さっきからカシャカシャ俺を撮っているんだ!フラッシュをたくんじゃない!!


「エヘヘ!なんか...こう、机に向かって記事とか広告とか書いている人って私には魅力的に見えちゃって...それでつい?」


...分かった。コイツは特殊性癖を持つヤベー奴だということが分かった。


一旦、距離を取るべきか否か検討する必要があるな。


「取り合えず、フラッシュをたくな。後、音を出したりすると、その音で居場所がバレるからな!?取材三流...。」


「はい!早速、教えを戴きました。メモりますね、カキカキ...。」


本当にこれで、効率高校生ライフが望めるだろうか。不安しかしねぇよ...チキショウ...。

お読みいただいてありがとうございます。


ブクマやこの下の星でポイントをつけて応援していただけるととても嬉しいです。


どうぞ、よろしくお願いします!

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