14.大勉強時代でも手を休めたくない男...4幕目
2章は、これにてお仕舞...。
少年はサッカー部を追い出された日にあることを調べていた。いじめを受けて給食をまけてもらえなくなったために、1日でも早く食費を稼げる手段を探していた。
...『学生でも出来る』仕事を。
労働力不足の解消という政策の一貫で、『18歳以上の年齢制限を伴う職業』が『15歳以上からでも出来る職業』へと引き下げられたこともあって、その選択肢は多くなっていた。
来年から始められる職業を知った少年は、学生時代と高校卒業以降の2つに分け、マクロ的な視点で将来の計画を立てた。
学生時代は、資金の調達、情報収集、運用シミュレーション等を、
高校卒業以降は、投資を、
更に資金が貯まって余裕が出来れば不動産や金融業へ転職を、
と。
少年は自分の才能、自分の今の立ち位置などを加味して考え、プランを立てた。
...。
少年は将来のプランを立てた後に動き始めた。
9~11月の間に本屋さんでWebやビジネス関連の参考書を中心に立ち読みしてその内容を覚えた。
12月の母親の葬式で貰った手紙を読んでからは『人と関わることなく、学生でもできる』職業へとターゲットを絞り、落とし前の過程で顔見知りとなった阿澄文一郎にWordPressやSEOなどの教材を借りて更なる知識の習得を目指した。
こうして体力的にも精神的にも消耗に消耗を重ね、それでも中学卒業までに『一人で稼げる』状態にしようと躍起になっていた時、少年に転機が訪れた。
それは1月25日の東海法律事務所での1件。
少年は東海陽太と阿澄文一郎を中心に教えられた。
...世の中から見て、自分ような才能の塊でさえまだまだ小さな存在であったことを。
...世の中は、自分が想像していたものよりはるかに大きかったことを。
...自分もまた、『井の中の蛙』であったことを。
少年は考えた。
...『敵を知り己を知れば百戦危うからず』。
...世の中を相手取るにはまず、世の中を実際に見て回る必要があるのではないか、
...今の自分がすべきことは、世の中についての情報を収集していくことではないか、
と。
...。
恩を仇で返され、唯一の味方だった母親を失った少年は言った。
「世の中はクソだ。俺に馬鹿みたいな才能だけを詰め込んで愛情を注がれなくした神は滅べばいい...。俺はもう...1人で生きていく。見守っててね、お母さん...。早く年取ってそっちに行くから...。」
そして、過去の因縁に決着をつけた少年はいつしか、こう言うようになった。
「世の中はクソだ。俺に馬鹿みたいな才能だけを詰め込んで愛情を注がれなくした神は滅べばいい...。俺はもう...1人で生きていく。見守っててね...お母さん...。早く年取ってそっちに行くから...。
だけどその前に...世の中に蔓延する無駄という無駄を全て削除しつつ...この馬鹿みたいな才能を生かせるような場所を...探しに行くよ。だから...応援しててね...お母さん。」
その言葉に従い、彼は...新たな一歩を歩み出した。
◇◇◇
4月1日。腰まで伸ばしていた髪は東海陽によって散髪され、カウンセリングで適応的な行動や考え方などを1ヶ月もの間模索した少年は、変わった。
ブルーライトカットメガネを掛け、常に光のように明るく振る舞う癖をつけた少年は空に向かって大声で宣言していた。
「フゥーッハハハハハハハハ。待ってろよ、無駄どもぉ~。俺が、お前等を、省きにぃぃぃぃぃ、向かうからなぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「...臨時助手、静かにしろ。その声で取材対象が逃げたりしたら手間が掛かるぞ。」
...なぬぅ!?そうすると手間が生じてしまうではないか!?
...俺と阿澄は表裏一体。運命共同体だ。
寒き冬空の中で阿澄に出会わなければ、空腹で腹を貫かれてエースになっていた。じゃけぇ、じゃけぇと腹にアラームを鳴りっぱなしの状態で、『止まるんじゃないぞ』と言いながら道端に『希望の花』を咲かせていたかもしれなかったんだ...。
...自重をしなければ。
...持重?、侍従?
...考えるだけ無駄だな。
「すみません。どうやら無駄を感知しまくったせいでバグって自分を見失っていたようです。」
(陽...。どうやらカウンセリングはまだまだ続く未来になりそうだぞ...。)
阿澄文一郎は、今の最狂状態の東海影とかつての最恐状態の西山影の差に困惑していた。
しかしあんな最狂でも逸材であることに変わりはない。
何故なら、今の影は既に、SEO検定、Webライティング技能検定、Webライティング能力検定、日本語検定、ビジネス著作権検定、文章読解・作成能力検定、Webリテラシー検定、Webライター検定、アフィリエイトインストラクター、ウェブ解析士において、阿澄文一郎が見る限りの最高レベルに達していたからだ。
...春から夏にかけて資格の講座や試験を手間なく受けていけば、最短コースで10の資格を持ち合わせられることが確定しているレベルで。そして現在はさらにファイナンシャルプランナーや宅地建物取引士の勉強にも取り組み始めている。
そして影はこれから、阿澄文一郎とともに取材へと向かう準備をしていた。
「阿澄。手間最小限のプランは組み立てているか?」
「ああ、それについては抜かりはない。お前もちゃんと口座、時間、予定は大丈夫か?」
「大丈夫だ、問題は...。いや、陽や陽太が証券口座を持たせてくれないから問題だらけだな!」
影はまだ、投資を始めるために必要な証券口座を開設していなかった。
それは『感情、欲、恐怖のコントロールが一定レベルまでにコントロール出来ていない』という陽の見立て、父親の西山直哉の所在の不明、財政状況などを含めた総合的判断の結果であり、こうして阿澄の臨時助手をしているのも妥協に妥協を重ねたギリギリの譲歩である。
...東海陽と東海陽太は、学校の勉強に遅れをとらせないようにする、社会勉強をさせる、ソーシャルスキルを向上させる、週に1回はカウンセリングを受けさせる、という複数の条件で東海影を阿澄文一郎に預けたのである。
そこで影は、未成年でも開設可能なネット銀行口座に目をつけ、『東海』に氏を変えたタイミングに合わせて新たに開設。
資金調達への第一歩を踏み出すとともに、将来に向けた情報収集や運用シミュレーションに向けて、影は阿澄文一郎のもとでWEBライターとアフィリエイトを主軸に学ぶことにした。
「...臨時助手。そろそろ行くぞ。」
「...いや。その前に1つだけ。」
影はある墓の前でお参りをした。墓石には『西山光』という文字が刻まれていた。
「あの時はクソ親父に邪魔されて遠くから眺めることしか出来なかったけれど、いろいろあって今日ようやくお母さんに逢うことが出来て、俺は1つの区切りがついたよ。俺はね...これから社会の荒波に飲まれに行ってくるんだ。次に逢う時が何時か分からないけど...これからも毎日見守ってくれよ、お母さん。」
その言葉とともに、影は情報社会という海へと出航し...その1年後に...彼は西山光の手紙に従って、高校へと入学した。
お読みいただいてありがとうございます。
次話から3章...ギャグ(シュール)系ラブコメ...。
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