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3種の愛情を無駄として省くまで...2幕目

本当のことを知りたい方は2章目の次の話から読んでください。


3.大勉強時代でも削除を休ませたくない男...3幕目: https://ncode.syosetu.com/n3272ia/11/

中学校の始まりは最悪の一言だろう。引っ越しが済み、預金は中学校卒業までに必要な経費が振り込まれていることは確認した。しかしながら、自由に使える額が少なすぎる。食費は満足に3食食えない、生活用品を買う金も計算して1000円未満とあんまりな扱いだった。


いくら勉強も運動もそつなくこなせる文武両道者とはいえ、お金の問題は深刻であることに変わりはない。入学したての頃は門限である19:00まで学校で勉強などで過ごして生活費を削減したり、図書室や本屋で様々な本を立ち読みすることで本の購入費を削減したりした。食費についてはなんとか給食で大盛りにまけることでなるべく3食分を稼ぐことで乗り越えた。自分の今の金銭事情を伝えれば一発だったから...。


そんな生活を1ヶ月続けている間、部活という形で俺の所に勧誘しにわらわらと人が殺到した。俺の小学校の時の成績がアレだ。至極当然の結果だろう。


しかし生活が逼迫した状況で自費の伴うものは無理であるという条件を出すと、大体の人が諦めていく。悲しいかな、中学時代からこんな逼迫した生活を送っている人なんて僅かしかいないのだろう。


そして時間が少し経った頃、そんな訳あり物件を条件の有無に関係なく拾ってくれた部活に俺は一筋の光を求めて入ることになる。小学校の頃の友達でも父親でもない、新たな居場所を求めて。


「サッカー部に入ることになりました。西山影と言います。今日からよろしくお願いします。」


小学校の頃のような友情と恋愛の高い関係でなくてもいい。母親のような親愛溢れるものでなくてもいい。他愛の話さえ隔てなくしてくれるだけの関係でいい。そんな切実な願望とともに、俺は新天地へと足を踏み入れた。


ここから俺の中学校生活は真に始まった。練習着やスパイクなどの自費で揃える必要があるものは特別に貸出しで提供してくれ、水筒は空のペットボトルで代用しての参加だったが、良くも悪くも生活は入る前よりも充実したものになった。


1年生の時は県大会まで行ったが惜しくも敗北。俺はなんとか4点は入れたものの、やはり相手校はそれを上回る強さでギリギリで逆転されてしまった。それでも普段通りに笑い合ったり、先生のおごりで飯を食ったりした時は輝かしいページを綴っていた。...2年生の時までは。


「待ち遠しいね。」


「うん。本当にここまで長かった...。」


中学2年生の夏。サッカー部は県大会を制覇し、県代表で全国大会へと出場が決まった。俺はサッカー部のマネージャーと明日のことについて話し合っていた。


彼女は南海(なんかい)麻日(あさひ)。俺をサッカー部へと導いてくれた恩人で、肩身の狭い俺のことをいつでも気にかけてくれた支え。俺はそんな彼女に心を許し、与太話をしては笑い合うという、友達以上の関係になっていた。


「病院にいるお母様にも影の勇姿が伝わるといいね。」


何故か俺の母親のことを『お母様』と呼んでいるけれど、そんなことなんて気にならないくらいに俺は彼女に対しては心をオープンにしていた。小学校の頃の傷はもはや影も形もないくらいに塞がっていた...。


「うん。明日はポイントを入れまくっていくよ。今年の県大会のように!」


「ふふっ。頼みますよ、サッカー部のエースさん。」


「エースになるつもりはなかったんだけどな...ハハハ...。」


だが、悪夢というものは忘れたころにやって来るものだ。それは、全国大会の当日のことだった。


俺は前から伝えられた待ち合わせ場所へと10分前に到着した。ユニフォームやスパイクをしっかりと着こなし、金欠気味なお金も今回は遠慮なく財布へとATMから引き出しての参戦だ。携帯にメールで送られた集合場所へと向かい、今か今かと待ち望んでいたその時の気分は、軽い旅行気分だっただろう。


しかし10分経っても誰も来ない。寝坊しているのだろうか...。しかし20分経っても選手どころか顧問の先生さえ来ない。


『一体どうしたというのか?』


そんな考えがよぎると同時に


ピリリリ


と携帯が鳴る。それは麻日からだった。俺はためらいもなく応答したが...。


「もしも」


「影!?影なの!?今何処にいるの!?もうみんな行っちゃうわよ!?」


俺は耳を疑った。何で待ち合わせ場所に誰も来ていない状態で『みんな』と言うんだ!?そもそも麻日は何処にいるんだ!?そして小学校の頃の傷を塞いだからか、二度も同じ過ちを犯すことになる。


「いやいやいや。予定変更はないはずだよ...ね...。」


「...嘘。有り得ない!!メールを見なかったの!?集合場所をいつもの練習場から校門前に変更になったという内容の!!!」


俺は一度通話をきり、震える手で携帯のメールの履歴を確認することにした。しかしいくら探しても、そんな内容のものは届いていなかった。


俺はこの時、気づいてしまったのだ。メールは連絡網として伝える仕組みになっている。顧問の先生から始まり、既定された順番にバケツリレーのようにメールを届けていくというもので、パスを繋げる様に見えるからサッカー部は連絡網を採用しているのだ。つまり、俺に伝える番の部員が伝え忘れたか、それとも...。


そして再び震える手で麻日に通話をかけようとしたが、既に留守電になっていた。俺は慌てて校門前に向かうも既にサッカー部の部員は1人たりともなかった。


俺は意気消沈した。デジャブに近い悪夢は塞いでいた忌まわしき記憶を呼び起こし、呼吸を過呼吸に変える。そして10分後くらいだろうか...。俺にメールを届ける番の部員から1通のメールが届いた...。


その内容は次のようなものだった。


『マジメンゴ。ここまで繋げてくれた影の英雄に変わって麻日の夢を叶えに行くから。じゃ、バイビー。』


確信犯だった。気づかない内に仲間だと思っていた人たちに目の敵にされていたんだ。内容からして、マネージャーと懇意にしていた場面を見ての嫉妬だろう...。


「そ...そん...な...。」


もはや俺の中に先ほどまでの旅行気分など微塵もなかった。俺はただ、校門前で棒立ちになるだけでその日は過ごし、それ以降の夏休みはドン底の生活へと沈んでいった...。


当然、エースのいないサッカー部は牙をもがれた虎となり、1回戦で全国大会は敗退。期待を大きくしていた生徒たちからのバッシングは強いものとなった。


エースだった俺のみを対象として。そして...。


「もうサッカー部から...。私の前から消えて...。」


マネージャーからの退部勧告である。もう事態は取り返しのつかないレベルまでいき、もはや手遅れな状態。それでもせめて真実は伝えてから辞めようと思い、あの時のメールを添えて説明もしたがそれを一蹴。


「どうしてあの場所に来なかったの...。親に元気な姿を見せたいとがむしゃらになっていたあの姿は虚像だったの...。全国大会先で私はあなたに...あなたに...。」


麻日はそう言い残して、サッカー部の部室の奥へと消えていった。俺はそれを追いかけようとしたが、顧問の先生含む部員に止められる。


「俺はお前に失望した。よりにもよって全国大会をボイコットする真似をして。サッカー部の名を底へと落としかったのか!?」


優しく俺を出迎えてくれた顧問の先生は今や冷たい目をしている。それはさながら、俺を家から追い出す時の父と同じもので、他の部員でさえ同じような目をしていた。


ただ違うのは、部員の一部は非難と同時に薄ら笑いを浮かべるものがいたこと。今回の騒動の元凶が彼らであることが真実なのだが、それが分かったとしても、真実を話したとしても、もう聞く耳を持たないだろうと過去が物語った。


結局俺は、指図されるままにサッカー部を退部した。向こうから誘ったくせに、結果が悪いだけでこの仕打ち...。


そんな俺の元に、今度は予兆のない第3波が12月に襲いかかる...。

お読みいただいてありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
[一言] 日本語がちょいちょいおかしい
[一言] 誤用 1年生の時は県大会まで行ったが奇しくも敗北 →『奇しくも』とは、不思議にもって意味なんですが。使い方間違ってますよ。 『惜しくも』じゃないですかね?
[一言]  面白そうなので読み始めました。  なぜ、顧問の先生とかにもメールを見せないのか?  さすがに何人かは、見るくらいはしてくれるはず。  あきらめ早すぎだよ。  
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