10.大勉強時代でも削除を休ませたくない男...10幕目
一番残酷で最恐な状態の...主人公...登場...。
中学2年生12月。西山光葬式から6日後の日の夕方...。
ここは...『太陽病院』だ。俺は...阿澄と...北見川家に行って...それで...。
「気が付きましたか?」
扉の方から声が聞こえ...1人の看護師が入って...来る。彼女は...俺を...お母さんの葬式に連れて来てくれた...恩人...。
「看護師さん。」
「...陽です。私は、東海陽と申します。影様は先日、北見川家で倒れてしまった所を、阿澄文一郎様によってここに運び込まれました。...重度の栄養不足と睡眠不足です。後もう少しで光様に天国で殴り返される所でしたね...。」
お母さんの...名を...!いや...彼女は例外だ。お母さんの...担当を...最後の最後まで全うした彼女は...許せる。
それに...病院への落とし前は...もう...お母さんが...つけた...。
後は...最後の...落とし前を...。
俺は...体を引きずるようにして...病院を...出ようとした...。
「いけません!!!寄りにもよって影様まで光様と同じことをなさるつもりですか!?彼女は亡くなった当日に、今のように無理矢理にでも病院から出ようとしてご臨終なされたんです。看護師として、このような患者の命を失わせる行動は断固阻止させていただきます。」
俺は...陽に...ベッドへと押し込まれた...。ベッドの近くには...机があり...俺のカバンが...あった。
この後...陽からは...俺が倒れた後のことについて...聞かされた。
まず阿澄はあの後...『週刊阿澄』に帰り...猛スピードで編集をし始めたという。
1日でも早く...俺の...周りの...環境を...綺麗にしてやりたい...という意志の現れ...。
真に理解できる...者の...やり方...。
感謝...。
次に北見川だが...面会時間ギリギリまで...ここにいて...俺の回復を...待っていたらしい。そして去り際に...こんな手紙を...残した。
『影坊主へ。今までのことは全て文一郎から聞いた。灯はボロ泣きしてやがったぜ...。俺は...今の若者共の視野の狭さに呆れて、会社の未来が心配になってきているよ。
...まぁ、とにかく今はしっかりと自分の気持ちに整理をつけてくれ。アイツのこともある。お前の学校のこともある。それらが片付いたら、文一郎と一緒に北見川会社に来てくれ。アイツとの約束を最後まで果たさせてほしい。俺達にケジメをつけさせてほしい。男と男の友情を無駄にさせないでほしい。
言えることは言ったかもしれないが、最後に一企業の社長として1つだけ言わせてほしい。俺は...お前のことを高く評価している。例え娘が影坊主と絶交したとしても、俺はお前のことを、会社の未来ある人材として迎え入れようと今でも思い続けている。それくらいに...影坊主のポテンシャルは誇るべきものだということだ。『人と関われる』ようになり、万が一いろいろな企業からはじかれてしまったら、この手紙を持って会社に来てくれ。ちゃんとポストは1つ空けて待っておく。それじゃあ、次は会社で会おう。北見川仁。』
不明...。
理解不能...。
何故...『人と関わりたくない』という俺の意志を...無視...して...こんなことを...。
お節介...。
削...除...すれ...ば...いい...の...に...。
だけど...恩を先に仇で返したのは...直哉...だ。
逆に...北見川は...逃げずに...恩を返しに...向き合った...?
...。
...。
...もう...いい。
関わって...こなければ...それで...いい...。
俺は...机の上にある...差し入れの林檎を...食べて...意識を...再び...落とした。
◇◇◇
中学2年生12月。西山光葬式から一週間...の朝。
俺は...東雲中学校へと...やって来た...。
最後の...落とし前を...つける...ために...。
「うわ...まただ!また来たよ!!」
アイツは...散々裏切者扱いした元ファンクラブの女生徒...麻日の...友達...。彼女が...一言発すると...仲間がぞろぞろと...集まってくる...。
「よくそんな醜い外見で学校に来れるよね!?」
「自分が何をしたか分かってここに来てる!?ちょー目障りなんですけど!?」
前の俺なら...ここで手は出さない...。しかし...非情になった今なら...怖じけずに...言える。
「裏切者は削除...。」
俺は...素直な気持ちを...述べる...。
「っ!コイツ...!」
女生徒は...俺に掴みかかろうと...近づく...。しかし...無駄。
...サッカー部の負の遺産...フェイントで...躱し...相手は...よろけて...雪山へと...ダイブ...。
「...遅い。1点は入っている。」
「「馬鹿にして!」」
今度は...真上の渡り廊下から...ゴミが...降って来る。俺は...近くにある...丁度いいくらいの...木の棒で...連続技を...放っていく。
面...胴...小手...突き...。これらを連続で放ち...ゴミをいろいろな方向へと...飛ばしていく。そして...最後のバナナの皮は...突きで思いっきり...渡り廊下の方に...返却...。
ゴミ箱を持った...男子の顔に...ヒットし...払っていたゴミは...あの女生徒達に...それぞれヒットしていた。
「俺に『人との関わり』を...持ち込むな...!削除対象者共...!!」
俺は...遠くから...批難してくる生徒達に...警告する...。
「...ムカつくんだよ!そういう所が!!」
こっちは...そうやって...俺の願いを...無視する所が...。
削除したいくらいに...。
心を...貫き通す...。
だからこそ...俺はあえて...応える。
...無視で。
「あーあ、麻日が可哀そうだよ...。」
...無視で。
「そうそう。きっとアイツに人気のない所でイジメられていて、それが耐えきれなくなって...転校しちゃったんだよ。」
...無視で。
「ええっ!?それが本当だったらマジで最悪なんですけど!」
...ムシ...で。
...俺は...少しだけ振り返り...こう呟く。
「...親不孝者。」
そうだ...。母の意志に...親の注意を聞かない...生徒共は...もれなく...無駄...。
...慈悲すら...感じない。
俺は...このまま...教室へと...向かい...席についた...。
落書きだらけの...席に...座って...勉強を...始める。
「...。」
もはや...何も...感じない。
心が...痛まない。
苛つきも...ない。
あるのはただ...虚しさだけ。
周りの学生共は...真実を感じ取れず...人の醜悪な部分を知らない...愚か者にしか写らない。
「今日はダンマリですかぁ~?」
...雑音。
「絶対に許さないから!サッカー部の期待も応援してくれた皆の期待も裏切ったあんたは絶対に許さないから!」
...不毛。
「今年の学校もこれで最後なんだ...。精々いい幕引きにしろよな!」
飛んでくる拳を...小手の要領で...右手に持つシャーペンのキャップで...受け止める。
「勉強の無駄化を...するな...。」
勉強も...仕事も...手間という無駄をいかに...削除し...効率化するか...。
そこに...他人は...不要...!!!
効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。効率...。コウリツ...。コウリツ...。コウリツ...。コウリツ...。コウリツ...。コウリツ...。コウリツ...。
効 率 !!!
この瞬間...カチャリと何かが...ハマった感じが...した。
俺は...眼が見開き...口は半開きになった...。
これは...悦び?ワクワクした感情?
でも...何故か...心地いい。
心の底から...力が...湧いていく。
...罵詈雑言が雑音を超え...作業用bgmにすら...聞こえる。
...これは...新天地!!!
...俺の...手に入れたかった...居場所!!!
「フフ...フフフ...ハハハ...。」
そうだ...。
これだ...。
周りの事物全てはこの時...無駄と...なり...意識から外れる。
無駄を取り除ききったこの状態・環境こそ...1年生の時から探し求めていた新天地...。
...『効率モード』。
俺は...新世界への...扉を...見つけた...気がした。
そして俺は...このイジメが蔓延っている環境を...効率モード持続時間増幅トレーニングの場として見えるようになった。
「アハ...!アハハ...!!アハハハハハハ!!!フフフーハハハハハハハ!!!」
全国大会がなんだ!
部活の勧誘がなんだ!!
無視しまくればよかったじゃないか!!!
始めから...この扉を探す旅だけを...すればよかったじゃないか!!!
お母さんの手紙通り...『高校までは最低でも進学して自力で金を稼げるように』動けばよかったじゃないか!!!
サッカーなんかせずに...勉強だけすれば...こうなることもなかったんだぁぁぁぁぁ!!!
...心優しき少年は、信頼していた者達の裏切り・才能の差が生み出す悲劇・嫉妬へ足を踏み出した者の末路・人間関係の暗黒面を深く早く知り過ぎたが故に、変質した。。
...自身の拭いきれない絶大な才能が、隣に並び立つ対等な者を除外させた。
...3種の愛情があるからこそ、学校で最優先にすべきだった勉強から外れ、結果的に心を壊す羽目になってしまった。
『なにが才能だ!お前のその才能は他人を不幸にするのに特化しているのか?コイツの道徳の評価を5にする学校も学校だ。もううんざりだ。』
『西山だ。そこにいる西山が悪いんだ。最初は俺達と同じだった。平等にボールを蹴り合うだけの仲だったんだ。なのに、県大会でお前は3年生からエースを任された。エースとなってボールを奪っていった。俺達はお前にパスしてボールを届けるだけの作業員になった。俺達はただ、仲良くサッカーがしたかっただけなのに!!!』
脳裏に直哉とサッカー部員の言葉が木霊し、それらを振り払うように最恐はシャープペンシルをふるっていった。
...時々飛び交う罵倒は悉く雑音に聞こえ...暴力はシャーペンのキャップでいなし続けて。
そして...奴らに真実を伝える舞台...終業式へと突入した。
◇◇◇
終業式...。奴らを...断罪する...処刑場...。
「これから皆様に重大な知らせがあります!全員、耳の穴かっぽじってよく聞けよ!!」
代表して...教頭先生が...そう発言...する。
...皆の過ちを。
...皆の愚かしさを。
...皆の理解の浅さを。
それから...生徒指導の先生が...『週刊阿澄』の雑誌を片手に...壇上に...上がり...サッカー部の真実を...伝えていった。
ファンクラブの女生徒共は...目を見開いて...冷や汗を垂らす。
俺の...クラスメイトは...ビクビクしながら...視線を何度も...俺と教頭先生の間を...往復した。
真実を知る者を除いた全員は...足を棒のように立たせたまま...耳だけを...動かしていた...。
奴らは...自らの罪を...知覚したようだ。
しかし...足りない。
『完全無視』には...程遠い。
「最後に...西山影。壇上で一言を。」
生徒指導の先生が...断罪の場を作ってくれた...ようだ。俺は...人ごみを外れ...人の少ない道を通って...ステージへと上がった。
...非情だからこそ...効率化のためだからこそ...ここで...俺は...心の奥底の気持ちを...吐露する...冷酷装置となる。
「俺は...貴様らのことが...ゴミに見える。人の恩義を...努力を...苦労を...全てないものとして扱い...嫉妬という下らないもので...人の積み上げてきたものを...容易に崩す。他人から託された...ものでさえ...。」
俺は...脳裏に...1年生の時に飯をおごってくれ...笑顔で卒業していった...サッカー部の先輩方を...思い浮かべる。
彼らへの恩を返すために...期待に応えるために...俺は...エースを...。
なのに...。
なのに...。
こいつ等が...その恩を返す機会を...。機会を...!!!
「もう一度言う...。貴様らは...ゴミだ!有害物資だ!!人を退化させる部品だ!!!生まれながらの不良品だ!!!」
すると...生徒達は段々と...言い訳の言葉を...述べる。
...『ごめんなさい』の後に...『だってあの時は』という言葉から始まる保身をつけるのだ。
...ふざけるな。
結局...自分の立場が第一で...被害者の心は...二の次か...。
そんな謝罪に...価値はない。0円だ。無駄だ。ノー効率だ。
先生方は慌てて俺を止めにかかろうとするが...校長先生や教頭先生が彼らを手で制した。
「...先生方に...質問します!冤罪を着せられ心を傷つけられた者の嘆きと...涙を流しながら訴えた真実を切り捨ててまで噂を信じて手の平を返す裏切者の謝罪...。どっちの方が...価値が高いと...思いますか?ご理解いただけるようでしたら...どうか...授業の恩をこれ以上仇にしないで下さい。」
俺はそのまま...謝罪という名の言い訳をする生徒共に...鉄槌を下していく。
「『ごめんなさい』の後に...『だって』をつけている時点で...誠意もくそもないことが...貴様らは分かっていない。貴様らは...幼稚園児だ。上辺は中学生だが...中身は未だ...学生レベルですら...ない。」
俺は...信じない。...信頼という恩義を一方的に捨てる...裏切者どもの言葉など。
...一生許すことなんて...できようか?
いろいろな場所から『ごめんなさい』、『すみません』という言葉が飛び交っていく...。
無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。無駄だ...。
ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。ユルサナイ...。
だから...!!!
「だから...中学生である俺の望みは1つだけ...。もう...俺に関わるな。1人にしてくれ。事務的なやり取り以外は...俺に関わるな...。」
俺は最後に...そう締めた。生徒達はもはや...意気消沈としていた。
...しかし...無情にも...空気を読まない者が...存在する。
「親もアイツみたいに...生意気...。」
...キコエタ。
アア...ソコカ。
ソコノキサマガ...イッタノカ...。
俺は声が聞こえた方の方角に指を指し...怒りという名の殺意をぶつけた。
「もう親は死んだ!本物の孤独だ!親の顔なんてもう見られない!顔も拝ませない!今日は俺のお母さんが死んでちょうど1週間!忌引の終わる日だ!無用心な発言かましてんじゃねぇぞ!この温室育ちが!!」
俺はそのままずんずんと垣根をかき分け...先ほどの無用心な発言をかました...愚鈍の所に...進んだ。
ソイツは...元サッカー部だった。全国大会を...不意にされたという理由で...毎日毎日イジメて来た主犯。
...コイツには...恐怖という別の落とし前が...必要不可欠...。
「貴様だ貴様!!貴様の顔は覚えた!!関わったら速攻で潰す!!!いいな!!?」
この発言とともに...生徒達の頭から...『サッカー部汚点話』は完全に消え去った。
...代わりに『最恐と関わったら潰される』という暗黙の了解が定着した。
...恐れとともに。
◇◇◇
終業式が終わり、冬休みの宿題を獲得した俺は...まさかの人物と再会していた。
「よぉ!影じゃないか!!面白くやって...いないよなぁ...。」
彼は...真宮寺翼。俺にあの時...エースの座を与えるように...顧問に進言してくれた...俺のエースの先輩。
...時々飯をおごってくれた...恩人。
「さっき瀬川の野郎のマンションに突撃してな。色々と詰問した所なんだ。...話を聞かせてくれないか?久しぶりに飯でもおごってやるからさ。」
俺は...先輩に...恩がある。
何か恩返しを...と思い、俺は先輩と...サッカー部の惨状を...話しながら...ラーメン屋でラーメンを...食べた。
1年生の時の県大会で相手校の弾丸シュートにやられまくった記憶...。
俺の肩をバンバン叩いて顧問に提案をしている姿...。
いつでも絶やさない...笑顔...。
そして...俺は先輩が退部した後に身に着けたシュート技を細かく教え、途中でバッタリと出会った開斗とともに、それからは3人で夜遅くまで語り合った。
そして...最恐は夜遅くまで...麻日の3枚の書状、落とし前の記録の載った雑誌を赤く染め...眠くなるまで勉強をしていった。
こうして、中学2年生の落とし前は...父の最後のケジメ...母の忌引とともに...幕を閉じ...最恐は...深々と降る雪の冬とともに...『効率モード』という新天地へと...旅立った。
...最恐が大勉強時代に本格的に突入し、様々な授業や勉強にストイックに没頭するようになった。
冬休みの宿題を1日で終わらせ...憑りつかれたかのように『週刊阿澄』に来ては...阿澄文一郎にWordPress、SEO等の教材を頼んでは勉強三昧...。
そんな亡霊のように日々学校とマンションと『週刊阿澄』の間を繰り返し彷徨った果てに...最恐は...あの終業式から1ヶ月後の中学2年生1月に...生徒指導室でクラス担任である東海美里の前で...お母さんの葬式で枯れたはずの涙を...流した。
お読みいただいてありがとうございます。
終業式のシーンは重要だったでしょうか?作者は昨日、感想を見て再び読み返して『マジか!?』と素で驚きました。
そしてあの後、また主人公の手で時間効率裁判所に連れていかれて断罪されました。1時間に及ぶ説教の末、最低でも2話同時アップして巻き返せと判決を下されました。
なので、今日は次話も同時刻にあげています。そちらもご覧ください...。
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どうぞ、よろしくお願いします!