3.大勉強時代でも削除を休ませたくない男...3幕目
『3種の愛情を無駄として省くまで...2幕目』の真相についての感想が多々寄せられ、なるべくそれにお答えするように改稿をした結果、10000文字近くに到達しそうになったため、区切りのいい所で今話は止めさせていただきます。
ざまぁが長くなる感じなので、『1章6話目~』から『2章1話目~』へと変更し、1章ギャグ、2章シリアス(ざまぁ)にしました。
...読者の皆様、混乱させるようにしまい誠に申し訳ありません。ざまぁに期待させている方のためにということでお願いします。
中学2年生12月。西山光葬式の2日後...。サッカー部の面々でグラウンドの雪を固めて作った...サッカーコートで先ほどまで行われていた雪上サッカー...。転校生だけは肩で息をしながらも立っているが、それ以外は全員、雪の上で倒れていた。そして肝心の最恐は既にその姿を消していた。
「く...くそがぁ...。」
サッカー部員がギリギリと、最恐がさきほどまでいた場所を睨んだ。その彼らを転校生は見下ろしていた。
「なんだあの強さは...。それに彼はあの、弾丸シュート、サマーソルトキックを見事に習得し使いこなしていた...。それも、『黄金の鉱山場』と呼ばれた去年のサッカー全国大会の上位3校のうちの2校の必殺技を...他を隔絶した『ダイヤの3脚』を。聞いていた話とは全く違う。悪噂を無視してでも重宝すべき逸材なのは明らかだ。...分からない。俺はお前達の心が分からなくなった。...まさかお前たちは俺に嘘をついていたというのか!?」
他県から転校した新エース、近衛開斗は今年の10月、このサッカー部に所属したばかりだった。
彼は連日、耳にタコが出来るくらいに最恐の悪評を聞かされた。
全国大会をボイコットする最低野郎、
肝心な時に力を発揮できないへっぴり腰、
と。
だけど先生方はこぞって次のように評した。
彼には才能がある。彼は...鎮めても鎮まらない災禍へと放り込まれた悲運の選手だ、
と。
そして、元エースが学校の生徒達に嫌われていることを踏まえて彼は...早まった結論を下してしまった。
去年の全国大会で見せつけられたレベルの差が、元エースに今年の全国大会直前に一気に恐怖として圧し掛かったのではないか、
元エースは知らない内に抱えてしまった災禍に陥った心の弱い軟弱な者なのではないか、
このサッカー部の実力は県大会を凌げるくらいで全国大会には全く通用しないレベルだったのではないか、
と。
...力を持つ者は余計に自身を上回る強大な実力との差を覚えてしまう。
県大会ならば上位に食い込ませる程の能力と最新の戦術を売りとした彼でも一度は経験はするが、それを差し引いても、皆の期待を背負っておいて恐怖で逃げ出す。元エースはやられてもやり返さない。
元エースはそのくらいの人物であると覚え、彼は自身が培っていてこのサッカー部にはない戦術を取り入れることをサッカー部に提案し、メリットに惹かれたサッカー部員は知略的なエースとして彼を迎え入れた。
しかしそれらの結論も自身の総合力も今日の試合で瓦解した。最恐の異端...白き世界の中で輝くパールに直に触れた。
井の中の蛙大海を知らず。
この意味を開斗は思い知ったのだ。そして彼は倒れて動けなくなった彼らに本当のことについて詰問を始めた...。
...マネージャーと顧問を喪失したばかりのサッカー部に。
◇◇◇
中学2年生12月。西山光葬式から1週間後、俺はマンションの自室のバルコニーに立っていた。室内の机には『週刊阿澄』の雑誌が置かれ、左手に握られているのは3枚の書類...。
退部届。
転校届。
そして、1枚の手紙。これらはジャーナリストが俺に届けたもので、全てが奴のものだった。そして、手紙には次のような文字が面面と書き並べられていた。
『ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。』
俺は...深夜の夜を見ている。勉強は終わってベッドに寝たが寝付けなかったため、一度風に当たるために外の空気を吸っていた。そして雑誌と担当したジャーナリストから聞かされた真相を思い起こした。
...。
中学2年生の夏。
サッカー部は中学2年生の1学期を終え、夏休みへと突入していた。大会が近いこともあり、休みでも練習に取り組む人もいる。大会に出場する部はサッカー部の他にもバスケ部や相撲部の2つがあり、今年は豊作揃いとも言われている。
だからこそ、相撲部出発の前日。つまりは、生徒全員が学校に集まることのできる最後の日に、盛大な出発式を開催したりもした。...出発式を今年は特別に一大イベント化したのである。大会に出場する3つの部にとって、これほどサプライズなものはなかった。祝福と期待に満ちていたものはなかっただろう。
応援団は3つの大会に駆け付ける必要があって大変となる予感を抱き、特にサッカー部の全国大会がバスケ部全国大会の2日後に行われるものだから、体力温存という名目で泊りがけの旅行が楽しめると生徒達からブーブー言われている。彼らはバスケ部の試合が終わった後、先駆けでサッカー部の会場へと前乗りするようで、メガホーンや旗など軽い物から重い物全般を持ち運びするのも一苦労だと学校でぼやいている光景も新しい。
「待ち遠しいね。」
「うん。本当にここまで長かった...。」
サッカー部のマネージャーである南海麻日もまた、心の中で熱狂に満ちていた。そう、全国大会先で告白したいくらいに。彼女は影のことが好きになっていた。全国大会を明日に控えているからか、いつもより気持ちが漏れそうになっていた。
「病院にいるお母様にも影の勇姿が伝わるといいね。」
それはもう、彼の母親のことを『お母様』と呼んでキャッと言ってしまうくらいに。
彼の第一印象は『儚い』ものだった。大きな才能というとてつもない着火剤を秘めるが、いざ火をつければ優しく弱い。それが彼の生きていくのに精一杯な、命の灯の小ささを物語っていた。
だから彼女はそれを消さないよう、支え、寄り添い、与太話をしては笑い合った。友達でもいいと思ったが、部活が終わってもサッカーボールで地道に練習する直向さがあり、関わり合っていくうちに彼の心の大空のように広い優しさを垣間見たことで更なる関係を望むようになった。
実力も驚きに満ち溢れていた。最初は他のサッカー部員と同じくらいの実力しかなかったが月を重ねていく内に力を増し、県大会ではその将来性を見込んで1年生ながら2,3年生からなるチームのディフェンダーに抜擢され、4点を奪取した。去年の全国大会後の成長は見る目も疑うくらいの伸びを示していった。それが華を開き、今年の県大会では見事に優勝し、夢のステージへと出場した。
「うん。明日はポイントを入れまくっていくよ。今年の県大会のように!」
「ふふっ。頼みますよ、サッカー部のエースさん。」
「エースになるつもりはなかったんだけどな...ハハハ...。」
そして影と麻日は練習場の前で分かれた。...彼らの関係とともに。
お読みいただいてありがとうございます。
予め述べておきます。主人公はざまぁ対象にどんな事情があったとしても、許すことはありません...。むしろ、事情を知るとより...最恐に...。
ブクマやこの下の星でポイントをつけて応援していただけるととても嬉しいです。
どうぞ、よろしくお願いします!