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日常  作者: 佐藤つかさ
2/8

フタゴのケンカ ~ふたりのリベルテ~

「アイリスのばか!」

「うるさい! クラリスが悪いんでしょ!」

 

 鏡でも挟んでいるのだろうかとエリンは思った。

 二人の少女が向かい合って怒鳴り合っている。驚くべきことに、二人はまるで鏡写しのようにそっくりな顔立ちをしていた。

 桜色の髪も青緑の瞳も首元のチョーカーも()()()()だけれど、彼女たちには異なる特徴があった。

 動きやすさを優先した服装と、華やかな衣装。

 片方は騎士で、もう一人は花売り。

 騎士の肌は白く凛としているが、花売りは愛らしい微笑みの持ち主で他者に親近感を与える。

 

 もっとも――今はどちらも剣呑としているのだけれど。

 

「もういい! アイリスなんか大っ嫌い!」 

 花売り――クラリスが騎士に最後通告を放った。

「そうね。私もあんたなんか大っ嫌いよ!」

 騎士――アイリスも負けじと妹に言い返す。

 

「私出て行くから、戻ってくる前に消えてよね! もしいたら「出てって」って言うからね!」

 よくわからない文句をまくしたてるクラリス。ちなみにここはエリンのお店です。 

 

 正面入り口を通ろうとして、肉の壁に当たる。

 赤と白の髪。左右非対称の服。百人中百人が悪党と見まがう外見だった。

 

 クラリスがその悪党に言った。「出てって!」

 

「……まだ来たばっかりなんだけど」

 悪党が気弱な口調で伺ってくる。ちなみに悪党ではなく、クラリスの友達ことミナーヴァである。

 

「知ってる。練習。あとぶつかってゴメン!」

 一息でまくし立てて、クラリスは店から出て行ってしまう。

「え? あぁ、うん。こっちこそごめんね……」

 まだ状況を把握していないミナーヴァはしばらくぽかんとしたままクラリスの小さくなっていく背中を目で追っていたが、やがてアイリスの方に向くと、その目は実に冷ややかなものとなっていた。

 

「……()()()()()()?」  

 

「あああ、私のせいじゃないもん!」

 アイリスが我は無実だとばかりに首を振るが、心当たりがあるのはその挙動からも明らかだった。

 

「私は姉として、社会に出ている大人の意見を言っただけなの」アイリスは自分の正論をまくしたてる。

 ミナーヴァは肩をすくめて、その辺の壁のシミを数え始めていた。

 

「私が謝らなきゃならないことなの?」アイリスは同意を求める。

 ミナーヴァは腕を組んで、興味なさげに首をかしげた。

 

「私、謝った方が良いかな?」アイリスは尋ねる。

 ミナーヴァは一房垂らしている前髪を指先でいじくっていた。

 

「わかったわよ!」とアイリス。「クラリス探して謝ってくる」

 

 アイリスの足音が遠くなっていく。

 やがて聞こえなくなった瞬間を見計らったかのように、エリンが苦笑していた。

 

「大人げないなぁ」

「こどもだもーん」

 

 ピアス付きの舌をべえと出して、ミナーヴァはそのいかついアクセにそぐわぬ人懐っこい笑顔を見せた。

「悪いけどあたしは全面的にクラリス派なの。エリンはどっち派?」

「中立、かな?」

「お母さんポジションですな」


 ミナーヴァが階段を駆け上がっていく。ヒールを履いているとは思えない足取りの軽さで。

「ちょっと上行ってくるから、カモミールティーれといてくれない?」

「……? バニラフレーバーティーじゃなくて?」

「あたしじゃなくて、二人の分」

 

 言われてエリンは気づく。ミナーヴァは二人の準備をするつもりなのだ。

 外は曇っていて気温が低い。 だから温かい紅茶とシャワーで出迎えたいのである。

 二階に上がっているのは、寝室の掃除とパジャマの準備の為なのだろう。何も言わずとも力仕事を買って出るあたりがミナーヴァらしい。

 

「……それなら、ランチ用のクッキーが余ってるからそれも出すね」

「おっ。アガるなぁ。御茶会だねっ」

 

 ミナーヴァの声が弾む。

 今日は楽しい夜になりそうだった。  

特にオチ無

かきたいところだけかきなぐったラフっぽいカンジです


【ゲストキャラクター】

アイリス・リベルテ (Iris liberte) creator: ひかりごけさん

クラリス・リベルテ (Clarice Liberte) creator: (上記と同じ)

エリン(Erinn) creator: 早村友裕さん 

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