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第53話 やっぱビキニっていいよねっ! その1

 ◇  ◇  ◇


 夏休みに入って十日が経った。今日から二泊三日の超常現象研究会の夏合宿。正式に言うと地理歴史研究部の夏期研修会。


 今回の夏合宿は例の神楽坂先生の叔父さんが所有する海辺の別荘を使わせて貰えることになった。話に聞くともともとは叔父さんが経営していたペンションだったらしく、いろいろあって婿入りしてお寺を継ぐことになった時に、お寺に寄進して研修施設としたとのこと。そう、別荘と言ってはいけない、――研修施設。


 4月の合宿と同じように神楽坂先生が車で迎えにやってきた。真っ赤なスポーツカーから降り立ったのは真っ赤なミニワンピースを着た27歳の女教師。


 ――先生、僕は行ったことないんですけど、キャバクラの同伴出勤っていうのはこんな感じでしょうか?


「さあみんな行くわよ! 水着もちゃんと用意してる?」


 水着……、その単語を聞いた那智の目は細く険しくなって僕を睨み、隣の瑞希は恥ずかしそうにうつむいた。


「夏美先生聞いてよ! この前甚がセクハラ発言したんだよ! セクハラ!!」 


 そう、あれは三日目の日曜日。この二人は水着を買いに行くと言い出した、――奴隷として僕を連れて。


「いや……、だからあれはそういう意味で言ったんじゃないって……」


「そういう意味じゃないなら、どういう意味よ!?」


 那智の言葉に僕は何も言い返せなかった。



 ♡ ♡ ♡



「那智先輩、絶対この水着似合いますって!!」


「ムリムリ、絶対にそれはムリッッッ!」


 さっきから店内で三十分以上も同じような会話をしている二人。


 那智に似合う水着だと言って瑞希が選ぶものは那智がムリだと言い、逆に瑞希に似合うと言って那智が選ぶものは瑞希が固辞する。二人とも自分で自分の水着を選べばいいのに、なんでお互いに選び合うのだろう。


「なあ二人とも、もうそろそろ決めたらいいんじゃないか? お昼も近いしさ、お腹空いてきたよ」


「アンタねえ! 女の子の買い物は時間が掛かるって知らない訳じゃないでしょ、もう少し待ってなさいよ!」


 那智に逆ギレされた僕は店内のベンチに腰掛けて、二人を待つことにした。


 暇つぶしにスマホを見るのにも飽きて、改めて店内を見回す。ショーアップされているマネキン人形やトルソーに着せてある水着の多くはビキニスタイルで、可愛い柄のものが多かった。手元にあった水着のファッション雑誌を見ても、やっぱりビキニのモデルさんに目が行く、それも極小ビキニのモデルさんだ。


「やっぱビキニはいいよなあ~、こういう極小ビキニって実際に見てみたいよなあ、どんな感じなんだろう……」


 僕は男子高校生として正直な気持ちを吐露しただけだった、誰に聞かせたかった訳でもなく、周囲に人もいなければ何の問題も無かっただろう。――だが現実は残酷だった。


 雑誌から目を上げた僕の目に飛び込んできたのは蔑むような目をした那智と、困ったような表情をした瑞希だった。


「えっと……、二人とも水着……もう買ったのかな? アハハ、アハハ……」


 ――父さん、ファッション雑誌見ながらビキニがいいな、って言っただけで何でこんなに怒られないといけないのでしょうか?



 ♡ ♡ ♡



「アハハハ!! で、二人はどんな水着を買ったの? アタシの水着はねぇ、セクシーって感じかなぁ、フフン!」


 僕たちの話を聞き終えて神楽坂先生は笑い、そして自分の水着を自慢っぽく話した、そのセクシーな水着を誰に見せるのか知らないけれど。


「このバカがあんなこと言ったから、絶対にビキニなんて着てやるもんか!って思ったんですけど……」


 悔しそうに那智が口ごもり、続きを瑞希が話す。


「で、那智先輩とワンピースの水着を探しなおしてもやっぱり可愛いのが無くて、スクール水着みたいなのはさすがにちょっと……ってなって。結局最初に買おうとしてたタンキニみたいな感じのフリルの付いた、可愛い……ビキニになりました」


 ――そう、結局ビキニになったんです。


 そして僕の頑張った2日分のアルバイト代は、そのあとに連れて行かされた映画のチケットに消えたんです。


 可愛い女の子の水着姿が見られるんだから、それの前払いだと言われて……。

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