表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
43/74

第43話 『パンゲア』から来た男 その2

「だから瑞希ちゃん! ほらチラッとパンツを見せたらいいんだって、チラッと!」


「嫌です! 那智先輩が代わりに見せて下さい!」


「三枝! これは命令だ、業務命令!」


「わたし業務なんてしてません! ただの高校生ですっ!」


 部屋中をドタバタと追いかけっこをする三人の女性。松浦さんは笑いながら見ているけれど、僕は顔から火が出るほど恥ずかしい。わざとらしく首を振って三人を止めにはいる。


「那智、それから神楽坂先生も瑞希にパンツ見せろって、痴女じゃないんですから」


「なによ甚! アンタだって瑞希ちゃんのパンツ何回も見たじゃないの!」


「そうだぞ岸本! お前はアタシのパンツだって見ただろうが!」


「岸本先輩のは全部不可抗力です! わたしは自分から見せたことなんてありませんっ!」


 瑞希は叫びながら二人から逃れて僕の背中に周り込み、後ろからギュッと抱きついてきた……。


 ギュッと抱きついてきた


 ギ ュ ッ と 抱 き つ い て ……


 ――コレ、なんか背中に当たってるよね。柔らかいけど弾力があって、二つのムニュムニュってしたものが当たってるよね。父さん……、至福ってこういうことでしょうか?


「ああああっっっ!! なにそのデレッとした顔! 甚のバカッ! エロ男! 最っっ低!」


「おまえら、よくも神聖な学校内でムニュだのムギュだのしやがって!」


「ちょっと待った、先生たちが瑞希を追い回すからこうなった訳で……」


 僕が二歩三歩と後ずさりを始めた時、後ろの瑞希と足が絡まった。


 ――ウワッ


 ――キャッ


 このままだと僕の背中で瑞希を下敷きにして押しつぶしてしまう! 僕はとっさに自分が先に落ちるように体を入れ替えようとした。


 ドン!! ムニュ


 鈍い衝撃が背中に走り、続いて瑞希の身体が覆いかぶさってくる。目を開けると至近距離には真っ赤になった可愛い後輩の顔、そして何とも言えないいい香り。父さん……、更なる至福ってあるんですね。


「き、きしもとせんぱ……い、キャーーーーーーーー!!!」


 ――なあ瑞希、パンツを見せずに超能力が出せて良かったじゃないか。僕もいい思いができたし瑞希はパンツを見せずに済んだ、これっていわゆるWin-Winの関係ってやつだろ。



 ♡ ♡ ♡



「本当にあったんだねえ、こんな超能力……。それから岸本くんをそろそろ許してやってもいいんじゃないか?」


 爆発&巻き戻しを終えた部屋で、静かに松浦さんが呟く。


 僕は那智と神楽坂先生にモップやホウキでガシガシと折檻され、フローリングの上で正座をさせられている。


「いいのよ松浦くん。それより本物だったでしょ?」


 神楽坂先生は軽く僕のことを無視して松浦さんに言った。


「ああ、そうだな。神楽坂が言っていたことが本当だとは思わなかったよ」


「そうでしょ。で、何かいいアイデアある?」


「そんなにすぐには見つからないよ、だってこんなの見たこと無いもんな。それで三枝さん、もう少し君のことを聞いてもいいかな?」


 松浦さんはニッコリと微笑みながら瑞希に質問を始めた。瑞希は戸惑いながらもコクリと頷いてみせる。


「三枝さんの能力のことは、お父さんとかお母さんは知ってるのかい?」


「いえ、あの……、両親はいません。いま叔母さんの家に養女として引き取られて住んでいます」


「ああ、ごめんね。言いにくいことを聞いてしまったね。それじゃあ叔母さんたちは知ってるの?」


 優しい小児科のお医者さんが聞くように、松浦さんは瑞希に質問を続ける。瑞希は叔母さんたちはこの能力のことを知らないことに加え、少し前までお祖母ちゃんと暮らしていたこと、そのお祖母ちゃんは超能力の秘密を知っているらしいけれど、いま入院していて尋ねようがないことなどを話した。


「なるほど、そりゃあ大変だったんだねえ。養女になったって言うことは、住むところも名字も変わったんだよね?」


「はい、元々は珍しい名字で五十鈴川瑞希いすずがわみずきという名前でした」


『五十鈴川』という名字を聞いた途端、松浦さんの目がスッと細くなる。何か記憶を辿るように頭を押さえ数秒が過ぎた後、もう一度瑞希を見て言った。


「もしかして三枝さんのご両親って、10年前に失踪した科学者の五十鈴川隆人いすずがわたかひと教授だったりする?」


 瑞希の両親が10年前に失踪!? もし本当だとしたら、なんでこの人がそんなことを知っているのだろう。


 僕は松浦さんの横顔をマジマジと見つめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ