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第24話 ゴールデンウイークにはどこかに行きたい!! その1

 ◇  ◇  ◇


 新学期が始まってアッという間に一ヶ月が過ぎ、ゴールデンウィークがやって来ようとしていた。


 謎の超能力合宿以後も地理歴史研究部(超常現象研究会)の門を叩く新入生はなく、部員は僕たち3人だけでスタートを切っている。最初クラスで沈んでいると言っていた瑞希だったけれど、一月も経つとさすがに友達も出来たようで僕は少し安堵していた。


 いよいよ明後日から連休初日という放課後のこと。那智と部室のカギを借りに行くと、既に鍵は誰かによって持ち出されていた。持ち出したのは恐らく瑞希だろうと思いながら部屋に向かうと、中にいたのは意外にも顧問である神楽坂先生だった。


 部屋の中で先生は向こうを向いて何か真剣に本を読んでいる様子。僕と那智は顔を見合わせ、頭を捻りながら部屋の中に入った。


「夏美先生、真剣に何の本を読んでいるんですかあ?」


 那智が後ろから声を掛け、覗き込むように先生に近づく。


「ああ、宮前と岸本か……」


 神楽坂先生はこちらを振り向き右手でメガネを整える。こうしてみると外見だけは本当に才媛、しかし実は変人、さらに酒乱。


「実はな……、三枝の超能力の解明に役立つかと思って本を読んで研究していたんだ」

 

 もともと神楽坂先生は超常現象に興味があって顧問を乗っ取った人だ。瑞希の超能力に興味がない訳ではない。


「へえ、先生もやるじゃないですか! 何の本を読んでいたんですか?」


 僕も先生が読んでいる本に興味をもった。仮にも超常現象研究会(地理歴史研究部)の顧問だ、超能力研究の専門書、もしかしたら洋書なんかを読んでいるかもしれないと、一瞬期待をした。


「ああ岸本、この本はなかなか面白いぞ!」


 そう言われて先生から手渡された本は、――上田次郎の、どんと来い超常現象――のサイン入りハードカバーだった。


「先生……、これ昔やってたTR◯CKのドラマのヤツじゃないですか、僕たちが産まれた頃の。それにこのドラマって、超常現象にイカサマが使われてる話で……」


「なに言ってるんだ岸本! 超常現象はあるんだ! 私は子供の頃にあのドラマを見て仲間由紀恵演じる山田奈緒子のような女性になりたいと何度願ったことか!」


 ――神楽坂先生……、美人で貧乳でちょっと変わった女性っていうところって、そのままキャラクターになってるじゃないですか。山田奈緒子、いいと思いますよ。お前の悪事はまるっとお見通しだ! ってやって下さいよ。


「でも先生、この本がどんなに面白くても全然参考にならないと思いますよ。だってドラマの本ですよ、何か他に瑞希の超能力の手がかりはないんですか?」


 僕は呆れて――上田次郎の、どんと来い超常現象――のハードカバーをペラペラとめくった。


「そのことだがな岸本、私が大学生の時に超常現象を研究するグループにいたことを以前話しただろう」


「ああ、その話なら以前聞いたような……」


 なにしろ神楽坂先生は昔から超常現象に興味があったようだ。雑誌といえばムーを読み、海外ドラマといえばXファイルを見て育ったという女性。


 大学時代には超常現象のサークルに所属していて、オカルト類の研究に没頭したという。以前聞いた話では「心霊現象なんて嘘っぱち、でも超常現象はあるんだ!」と訳の分からないことを言っていた。何やら幽霊にしても実は人工物で、何か作成方法があるはずだと怪しげな研究もしたことがあるらしい。


「実はその時の仲間が本格的に超常現象研究の仕事をしているんだ、今度それとなく瑞希さんのことを相談しようと思うんだけどね……」


「ああ、合宿で言っていた詳しい人ってその人ですか」


「うん、けどここ2~3年会っていないし、連絡先もすぐには分からん。ほら『ムー』のライバル誌で『パンゲア』というのがあるだろう、あそこの出版社にいたはずなんだけど……、今度連絡してみようかな」


 その人のことを思い出しているのか、神楽坂先生が懐かしそうな目になっていた。


「夏美先生、『パンゲア』ってちょっと前に記者が行方不明になったっていう噂の、あの雑誌ですか?」


 少し不安げな那智の声で僕も思い出した。確か『パンゲア』の記者が行方不明という話を以前ネットで見た記憶がある。


「ああ、あれか? あの噂は違うらしいぞ。取材中と称して下着ドロか何かをやったらしい、それで捕まったけど隠蔽したんだってさ。で、その記者の記事が全く出なくなって、消えただの行方不明だのっていう噂になったらしい」


 神楽坂先生の裏話を聞くに、そんなところの人に瑞希の話をして大丈夫かと不安になる。


「先生……、大丈夫なんですか、その『パンゲア』の知り合いのひと……」


「まあ大丈夫だ、まかせておけって」


 先生との会話が終わろうとしていた時、パタパタと足音が聞こえ引き戸が開いて部室に瑞希が入ってきた。

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