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第19話 ウリ坊って、見てる分には本当に可愛いですよね その1

 ◇  ◇  ◇


 宿泊者用の風呂は寺務所の方に一つだけあった。これも新しく作り直したらしく、7~8人は入れる大きさのようだ。


「甚! アンタが先に入っておいでよ。私たちが先に入ったお風呂で変なことを想像されたり、もっと変なことをされたりしたら気持ち悪いから!」


 那智の言葉を聞いた瑞希が赤くなる。


 なんとまあ無茶苦茶な言いがかりだ。女の子の入った後のお風呂はトキメクものがあるけれど、僕はそこまで変態じゃない――と自分では思っている。


「那智……、俺はそこまで変態じゃないぞ。まあ先に入れって言うなら、先に入るけどさ」


 僕が着替えを持って講堂を出ようとすると、また後ろから那智が声を掛けてきた。


「ねえ甚、一人じゃ可哀想だから、瑞希ちゃんが一緒に入ってもいいって言ってるけど、どうする? 背中でも流してもらっちゃう?」


「な、な、那智先輩、なに言ってるんですか! わたし、そんなこと一言も言ってません!!」


 中くらいの衝撃波で部屋のガラスが割れ、高価そうな衝立が倒れて見事に破壊された。


「なあ那智、お前ついさっき反省したんじゃないの?」


「宮前……、お前こそ岸本と一緒に風呂に入って揉まれてこい……」


 巻き戻しで元に戻るとは言え、僕も先生も早く休みたいところにウンザリする。


「だって、だって、瑞希ちゃんの反応が可愛いんだよ! 言ってみたくなるじゃん……」


 またまた那智がシュンとなるものの、コイツのイタズラにはもう慣れた。何故だかわからないけれど結局みんなが許してしまう。


 ♡ ♡ ♡


 お風呂の制限時間は5分、などと軍隊並みの時間を女性陣には言われたけれど、僕は当然守るつもりなど無い。散々だった今日の疲れを癒やすため、大きな湯船にゆっくりと浸かった。


 何しろ瑞希の超能力合宿と称しながら、最後の一時間ほどしか超能力の話をしていない。残りはただひたすらに神楽坂先生の楽しみのダシに使われたような気がした。


 身体も温まりホカホカになった僕は、幾分心もリフレッシュして脱衣所へと戻る。タオルで体を拭いていると脱衣所の大きな鏡が僕の目に入った。


 家にはとても無いような大きな鏡。僕は思わず全裸でポージングをとり、見えない筋肉美を見えない観衆に披露した、と――その時。


「おい岸本! 何分風呂に浸かってるんだ!? だいたい男の長風呂っていうのは……」


 勢い良くドアを開けて入ってきたのは、紛れもなく女性の神楽坂先生27歳。


 ポージングをとる僕 VS 27歳のメガネ魔神


 光る全裸(ZENRA) VS 光るメガネ(MEGANE)


「ふっ……岸本甚、中の中(まあまあ)か……、なるほど……まあいい、ふっ」


 湯気で少し曇ったメガネを外し、神楽坂先生はニヤリと笑いながら去っていった……。


 ――先生……、中の中(まあまあ)ですか? ありがとうございます。でもドアは閉めていって下さい。


 ♡ ♡ ♡


 お風呂も終わり、全員ジャージに着替えて広々とした講堂で就寝。といっても広々と使っているのは女性チームで、僕は壁と衝立に囲まれた隅の三角コーナーへと追いやられた。


「エッチなことを考えるのは自由だけど、言葉にしたり行動に移したりしたらボコボコだからね! わかってる? 甚。ボッコボコだよ、ボッコボコ!」


「『中の中』の岸本くん、襲うんだったら宮前からにしなさいよ! あんなこと言ってるけど、宮前って『中の中』でも襲われたらナヨっちゃうタイプだからね、覚えておきなさいよ」


 ――やめてくださいよ~、夏美先生――


 ――え~、那智先輩って、もしかしてそういう感じのツンデレなんですかぁ、で先生、『中の中』ってなんですか?――


 ――瑞希ちゃんは知らなくてもいいのよ、『中の中』は『中の中』だからね――


 あまりに平和な女子共の会話に、僕はもう怒る気も起きない。なんだかんだ言っても瑞希が楽しそうで、それが一番良かったとさえ思う。


 騒がしく話に興じる女性チームの声を聞きながら、疲れ果てた僕はいつしか眠っていた。


 ♡ ♡ ♡


「先輩……、岸本先輩……、ねえ……ちょっと起きて下さい……」


 夜も更けてみんなが寝静まった頃、そんな声で僕は起こされた。

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