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SoleiU Project  作者: 賀田 希道
第二次ヤシュニナ侵攻
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ミルヘイズ王国を望む

 アインスエフ大陸東岸部のイエニエフ海域は一際静かな海として知られている。暴風吹き荒れるダザニック海域、流氷漂うアンダウェルフル海域を越え、ようやく見えきてた大陸東岸部の入り口に3隻の船に乗る乗員達は安堵から、胸を撫で下ろした。


 めいいっぱいの追い風を受けて前進するの3隻の船はいずれもヤシュニナ国旗を翻しており、特に左右の軍船から放たれる威容は生半可な海賊程度は近寄らせないという圧力を感じさせていた。どの船もとかく甲板を行き来している兵士が目立ち、特に先頭を征く一際大型の船の甲板には完全武装の兵士の他、5名ほどの特異な武装を装備した男女のグループが立っていた。その一人、もとい真ん中で椅子に腰掛けている黒髪青目の少女は自身の身の丈はありそうな二振りの双剣を腰に帯び、あくびをしながら水平線上を凝視していた。


 彼女、天秤の刃令(ヴァルナ・キェーガ)ノタ・クルセリオスの視線の先には一体の「水底の監視者」が浮上し、その(まなこ)とも言えない白化した巨大な瞳をこちらへ向けていた。直後、ノタはレベル鑑定スキル「神秘眼」を発動させる。スキル発動と同時に「水底の監視者」の像が橙色に変色し、そしてそれはわずかに赤みを帯びていた。


 「やーっば。あれこっちむかってくるわ」

 「本当ですか。すぐに取り舵を」

 「間に合わないって」


 彼女の隣に立つ精悍な顔つきの青年が操舵室へ走ろうとした刹那、それまで沈黙を守っていた「水底の監視者」が突如叫声を発し、さながら海原を駆けるかのような白い水飛沫を上げ、船めがけて突進を開始した。船の大きさが大体38メートル程度なのに対して「水底の監視者」の大きさは裕に60メートルを越えている。それが時速数十キロの速度で迫ってくるのだ。体当たりをされただけで木製の船など木っ端微塵だろう。


 たちまち甲板上の兵士達は迎撃のため、バリスタに走る。右舷の軍艦が盾になるようにノタらが乗る船と「水底の監視者」の間に割って入ろうとするが間に合わない。うち放たれるバリスタの鏃を受けても怯む様子がない、それどころかダメージが通っているのかも怪しいほどの猛然とした勢いで「水底の監視者」は突っ込んでくる。だがしかし、


 「せいやっ」


 鏃にまざり、黒い影が「水底の監視者」へと突貫する。それは左右に一振りずつ、巨大な剣を持ち、「水底の監視者」に取りついたその刹那、無造作に右手の剣を振り上げ、ついで左手の剣を真一文字に振った。鏃すら弾くほどの表皮がただその二撃を受けただけで崩壊する。さながらバターでも切るかのような簡単さ、特段技巧(アーツ)もスキルも使わずにノタは突っ込んできた「水底の監視者」の突進を停止させた。


 突如の痛撃に「水底の監視者」も驚きを隠せないのか、無数に体から突き出した触手が無造作にくねくねと空を踊る。停止した「水底の監視者」の姿をよく見ると、それは巨大なタコのように見えた。ただし、頭部に当たる部位は硬質な鱗で覆われ、鯨を思わせる巨大な口がその真下についていた。瞳はすでに使い物になっていないようで無造作に振るわれる触手を触角代わりに使っているのかな、とノタは推測する。


 ひとしきり触手を震わせると、「水底の監視者」は狙いを船からノタへと移し、空中で座視を決め込む彼女めがけて無数の触手を伸ばした。指を弾いたような勢いで伸びてくる触手の一つを真正面からノタは受ける。彼女の一太刀は容易に触手を縦に切り裂き、血飛沫が天高く噴水のように放水する。


 「レベルは、100以下。多分93くらい?でもなんで『水底の監視者』がこんな浅い部分に出てきたのかな?」


 もっともな疑問を口にしながら冷静にノタは一本一本振るわれる触手を捌いていく。一見すると不規則に動いているように見える触手だがその実、非常に生物的である以上ある程度攻撃を誘導することは可能だ。まして目が見えない、目が退化している相手ならば彼女のスキル「幻妖」が面白いまでに機能する。「幻妖」は自分と同規模のユニット反応を一時的に作り出す、という探知妨害スキルだ。視界が悪い空間などで探知スキルを使った相手に対しての奇襲を目的としているスキルだが、ある程度の反応の動きを操作できるという点でこのスキルは非常に使い勝手がいい。相手が探知した反応の動きを予測して行動したとしても、そこには何もなく、奇襲する瞬間を待ち構えているという寸法だ。そしてこのスキルを隠遁スキルの一つである「灰姫」と併用することで事実上ノタは奇襲戦において最強と言ってもよいアドバンテージを得ることができる。


 「水底の監視者」の触手はそれ一つ一つが高度な触角のようなものだ。わずかな空気の流れや温度、湿度から相手の位置を探ることなど造作もない。その高い精度が今となってはディスアドバンテージになっていた。何度となく「水底の監視者は触腕を振るうがそのことごとくがノタには当たらない。彼女に当たるわけがない。幻を追いかけている以上、ノタにはかすりもしない。


 「技巧、鳶色鎹(とびいろかすがい)


 双剣の柄尻を繋ぎ合わせるとその秘めたる力が増幅する。鳶色の閃光が双剣を輝かせ、その射程範囲をさらに何十倍にも増加させる。それがノタの最も得意とする技巧「鳶色鎹」の能力だ。そして彼女の場合、最大射程は半径150メートル。すなわち、直径300メートル圏内にいあるすべてがノタの間合いだ。


 ——鳶色の輝きを放つ双剣が大気すら焼き切っていく。キリキリと空を斬り、螺旋を描きながら触れたものすべてを叩き伏せていく。ヤシュニナ最強の双剣使い、それがノタ・クルセリオスだ。


 そんな最強が護衛として乗船する船がミルヘイズへ向かう。風を受けてミルヘイズへ向かう。


✳︎

キャラクター紹介


 ノタ・クルセリオス)レベル:150。種族:シルティス。趣味:飲酒、ダーツ、ジェンガ。好きなもの:お酒、高級砥石。嫌いなもの:ロゼワイン、収奪皇ジーレイド。

 元「SoleiU Project」最大のDQNギルド「30」の幹部。「七咎雑技団」元幹部おるてぃに誘われて「七咎雑技団」に移籍。

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