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序曲  作者: 雨世界
1/1

1 そこに、君はいた。

 序曲


 登場人物


 森三久 みく お嬢様学校に通っているお嬢様 十五歳


 プロローグ


 そこに、君はいた。


 本編


 ……大好きです。


 風車小屋のある風景 (ピアノの曲の名前)


 その日は、一つのとても綺麗な星の輝いている夜だった。森三久はそんな美しい星を見て、……今夜はもしかしたら後世に残るような名曲を作曲できるかもしれない、と、そんな期待に心をわくわくさせながら、そう思った。


 それから、自宅にあるグランドピアノを弾いて三久が作曲した曲は、まあそれなりにお気に入りの曲になった。

 後世に残るような名曲、とはいかなかったけど、満足はした。

 三久はその曲に『風車小屋のある風景』と言う題名をつけて、自分の作曲ノートの中に、今まで作曲してきた様々な曲の新しい一ページとして、そっとしまいこんだ。


 そして、夜更かしをして、とても大きな眠気を感じた三久は、ピアノのある部屋の電気を消して、自分の部屋に戻って、真っ白なふかふかのベットの中に潜り込むと、……御休みなさい、と心の中で呟いてから、深い眠りの中に落ちていった。


 そして次の日。

 思ったよりも作曲に熱中してしまった三久は、……学校に寝坊をして、遅刻をした。


 夜汽車 (夜想曲)


 真っ暗な夜に、古い造りをした駅のホームで、真っ白な蒸気をあげながら、ぶおー、と言う古い時代の夜汽車の発車する、とても大きな汽笛の音が聞こえる。

 その悲しい汽笛の音は、二人の愛する男女の、(あるいは、二人は兄妹であり、家族だろうか?)別れを告げる音だった。

 学校の机の上で頬づえをしながら、ぼんやりとしていた三久は頭に中でそんなことを空想していた。


「あらあら、三久お嬢様。まだ眠いんですか?」

 ふふっと笑いながら親友の白鳥麗うららさんが三久に言った。

 三久はちょっとだけむっとした顔をして、白鳥さんを見る。

「この名誉ある名門三つ葉学院高校の生徒が遅刻だなんて、それは先生も怒りますよ。まあ、三久さんらしいといえば、らしいですけどね」

 と上品な笑いかたで笑いながら白鳥さんは言う。


 三久は無言のまま、真っ白な天井を見上げる。

「……また、夜遅くまで作曲ですか?」

 三久の隣の席に座って(そこが白鳥さんの席だった)白鳥さんが言う。

「うん」

 小さな声で、真っ暗な誰もいなくなった古い駅に一人だけ取り残されたようにして、泣きながら立ち尽くしている若い男性と、真っ暗な夜の中を煙を上げながら走る、泣いている一人の若い女性を乗せた古い夜汽車の風景を思い浮かべながら、三久は言った。(二人の別れの悲しみを想像して、三久はちょっとだけ、なんだか泣きそうになっていた)

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