花々
少年、黒塚 進はある時事故で表情を失った、二年前のO県で起きたとある交通事故で、家族を、その時のショックから表情を失った。
一方あるところに、心が読める少年がいた。理由はわからない、ただ読める、そのせいで人から避けられ、孤独になった少年、名前は林道 未来。
この物語は、孤独な二人の少年が支えあい未来に進む物語。
病院、ある病院のベットの上、一人男の子が眠っていた彼の名前は黒塚進。黒いきれいな髪の毛と中性的な顔立ちと、そして固まってしまった表情が特徴的な少年だ。
「進君。おきてる?」
いつもの病室に語り掛けてくれるのは聞きなれた声。
「はい、起きています。」
「朝ごはん持ってきたよ。」
ベッドを包むように設置されたカーテンがかすかな音を立てつつ開かれる。朝食を持ってきた看護師はベッドに体を起こして座る進に優しく微笑み。
「今日は十時くらいからリハビリだからね。」
というと朝食をベットの近くにおいてある机に置くと「また後で」と言い残して彼の病室を後にし。
「トースト、サラダ、野菜ジュースと…あ、ジャム。」
口に出して一人で食べる朝食のメニューを確認する、いつの日からかなぜだったか始めた彼の日課だ。
「いただきます…。」
誰が見ているわけでも聞いているわけでもないが、形式としてしっかりと手を合わせてから食べ始める。
おいしい、というわけではない。味も薄く、自分の好みでないものもある上に、朝とはいえ量も決して多くない。そして何より。
一人で食べるご飯はおいしくなかった。
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亜麻色の髪を持った美しい顔立ちの少年、林道 未来は病院を歩いていた、目的はない、ただお見舞いにでも来たという顔をして堂々と侵入しそして、この、何故か生まれ持った人の心を読む力を使い疑う者がいればそっと避ける、そんなことをしてまで、病院に来る理由は一つ、いろいろな人がいるからだ。
暗い気持ちのだれか。それでもリハビリに勤しむだれか。友達や家族を見舞いに来ただれか。
そんな誰かたちの自分以外に向けられた声、それが彼は好きだった。
趣味が悪いことはわかっている、が彼にとってそれだけが人とつながる手段だった。
(あぁ、いつ退院できるんだろ)
(あいつ頑張ってるかな)
(入院中まで勉強かよ)
面白い、本当にいろいろな人がいる。
自分に向けられたものじゃない、そして周りがこのことを知らないという前提があれば生まれ持ち、忌み嫌っていたこの力も悪いものではない。と未来は思った。
最もネガティブな心は来るものがあるが故意ではないにしろ盗み聞きしているのだ、仕方ない。と自分に言い聞かせる。
ひとしきり歩き終わると、ふと思う。
ちょっとおなかすいたかも。
と、一階にはコンビニがあったか、そこで何かを買ってからどこかで適当に食べよう。
そう考えてエレベーターを降りてコンビニに向かう、おにぎりにジュース、あとはフライドチキン。それらを購入してから近くのベンチに腰掛ける。
「いただきます。」
袋を膝の上において両手を合わせると一人さみしい食事を始める。
おにぎりの袋を開けて一口。
そしてそれを飲み物で流し込む
(うわ、あいつ今日もこんなところで一人飯かよ、気味悪い)
(なんかあの子いつも一人だけど、家族は何してるんだろう)
(うるさいな、ほっといてくれよ)
心の声に未来もまた心の中で応じる…といっても一方通行なのだが。
「やっぱり、あんまりおいしくないな…」
無意識の思いは、つぶやきとなって心の外に漏れていた。
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リハビリを終えて病室に送り届けてもらった進は一人んべっとに座り込む、何をしようか、と考えても特にすることなどない、めぼしい本は読み終わったしテレビもこの時間はニュースばかりだ。
「つまんないな。」そうこぼす自分がふと窓ガラスに反射して目に映った。
そういいながらも自分の顔は全く動かない、変化の兆しは見られないそんな自分が気味悪く思う。
「気持ち悪い」
ふとつぶやく、もしもここにいるのが自分一人じゃなければ、誰が言ったのかあいまいになるほどにかすかな声。
「…本読もう」
忘れよう、こんなことは読み終わった本でも読んで、棚から適当に本を取り、ベットに腰掛け、そして本を開こうとしたとき…
「お、お邪魔しまーす。」
「え、だれ?」
知らない子だ
沈黙気まずい空気間
「し!失礼しましたっ!!!!!!!!」
入ってきた少年はそう言いながら今にも飛び出す勢いだ。
「ま!まって!!」
呼び止める。
そうしなくては、後悔する気がして。
「え、えっと、あ、あなたのお名前は何ですか?」
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ご飯を食べ終わった後、時間はお昼前ごろだろうか、外はこの時期気はとても暑い。
がそんなときもここは心地よいものだ。
涼しい室内たくさんの人
過ごしやすい限りだ。
(ま、僕は本当はこんなところにいる資格なんてないけど。)
歩き回り人の心を聞きながら、歩くそして、ふと思う。
(ちょっと違うところにも行ってみようかな。)
せっかくだ、もうすこしこの場所を散策してみよう。
ふとそんな気持ちになりあえていつもとは違う道に進んでみる、まるで運命の糸に惹かれるように、そうであることが必然のように、未来は道の先へ向かう。
(この固まった顔、気持ち悪い。)
ふと、誰かの心の声が聞こえる。
(何だろう。この心にはとても心惹かれる。)
普段ならこんなことはあり得ない、だがその心に惹かれて、光に寄せられる虫のように、そこに向かい歩く。
「お、お邪魔しまーす。」
「え、だれ?」
沈黙気まずい空気間
「し!失礼しましたっ!!!!!!!!」
逃げよう、すぐ逃げようそうしよう。
「ま!まって!!」
呼び止められる、そのばで後ろから
「え、えっと、あ、あなたのお名前は何ですか?」
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「な、なまえ?」
未来は思わず聞き返した、そしてその相手の顔を見ておどろいた、あまりにその相手の表情が希薄だったのだ、その心の動作に対して、かをは動かない。
「林道、未来です。えっと、あなたは…」
「く、黒塚 進」
お互いの自己紹介、初めてお互いを知る。
奇怪な二人の数奇な出会い。
「えっと、ごめんなさい、突然入ってきちゃって、な、なんとなく、気になって。」
「あ、大丈夫です。僕も暇だったので。」
「「あの!、あ、すみません、先にどうぞ」」
声が重なり合う、これまた気まずい。
「…じゃあ、僕から話します。」
進から口を開く。
「よ、よかったら、ご飯食べていきませんか?一緒に。」
「えっ?」
「ご、ごめんなさい、何を言っているんでしょう。」
進は張り付いた顔のまま言葉を取り消す。
「いいよ!一緒に食べよ!」
心を読める少年は、表情の変わらない彼の心にその変化を見出した、あるいは孤独な自分と重なるものを見つけたか。
「え?」
聞き返すように驚きの平坦な言葉を漏らす、その変化に未来だけが気が付く。
「」