プロローグ
俺は、小さい頃から夢見が悪い。
夢の中で必ず死ぬのだ。
どんな死に方かと言うと、胸を刺され、魔獣に噛みつかれ、腹をえぐられ、血を啜られ、激流に流され、広場で大勢が見るなかでの斬首、首吊り等々。
だから夜泣きは激しい、母親は困って呪い師に悪魔払いを頼んだくらいだ。
その時初めて、母親がそこまで悩んでいると、気づいたのだ。
それから、幼いなりに考えた。
呪い師が言う通り悪魔と言う存在が私の夢を作っている?
その夢が私を苦しめているんだろうか?
母親を寝不足で苦しめたのは確かだろう。
死ぬ夢は苦しくて痛い感覚があるが、胸に去来するのはやりきった達成感や、残していく人を心配に思う心だけだ。
まあ、でも、死ぬ時の苦しさはやっぱり苦しい、どうしても起きてしまう。
痛みで起きる時もある。
しかし、私自身は寝不足で困っているわけではない。
起きてもすぐ寝てしまうからだ。
記憶がある時から死ぬ夢を見て慣れきったからか、夢の中でやりきった達成感がそうさせるのか、死ぬ夢への恐怖感はないからだろう。
いずれ俺は死ぬ、それは誰の側にある存在だ。
だから悪魔?が俺に悪夢?を見せているとは思わない。
と言うか、悪魔って何?そんなのいるのか?
呪い師を呼ぶ前に、夢の話しを言葉足らずで母親に話した時に泣かれたので2つの夢しか話してない。
たった2つで泣くなんて、びっくりしてそれ以上言わなかった。
だから他の人がどんな夢を見ているか…聞くに聞けない自分がいる。
お陰で無口になった。
腫れ物に触るような母親に刺激を与えないようにしていたら、喜怒哀楽が少ない変な子で、母親に悪魔付きに見えてしまう原因の一つになった事は失敗だった。
母親に上手く接することが出来ないなら、外に目を向けたら良いのだが…
近所に住む同年代の子供はとても幼く何も考えてないのに話が合うわけない。
いや何も考えてないとは、語弊があるかな。
きっと子供達も考えているが、俺は子供達を些細な事で泣いたり笑ったりするのを見て無邪気だなぁ~って考えてしまうからだろう。
過去を振り替えると、俺は変な子供に見えただろうと納得出来る。