序章:3FOREBODING
未だに登場しない数々の主要人物・・・さて、作者はいったい何を考えているのか・・・!!!
7月16日午前11時59分、破魔島地下30メートル国際会議室―――
10人掛けの円卓の椅子に不自然に二人の男女が隣り合う席についていた・・・
「カッカッカッ、これでわしの偉大さを各国の馬鹿共も認めるなぁ、おい!」
「静かに・・・そろそろ時間です。」
一人騒ぐ山久を赤嶺が諌めると、ちょうど正午になった途端、ブゥンという低い音と共に他の空席だった場所にも次々に人が現れた。
その途端山久が畏まり、真面目そうな、いかにも博士というような表情をとる。
そして全ての席が埋まって一段落後、
「・・みな、揃いましたね・・・」
「それにしても・・・今回のこの日本支部側からのレポートには随分と驚かされた・・・こんなことは前代未聞だ・・・」
「確かに・・・ゲートの開いた痕跡も、魔族が侵入した形跡もないのに魔族が次々と目撃されているのも説明がつく・・・」
「全く、厄介なことになったものだ、それより早くプロフェッサーに説明願おうか。」
それを受け、山久が立ち上がり、中央の空間に踊り出ると、魔力によってその場所に立体のイメージが映し出された。
「レポートにあった通り・・・こいつがその人を魔族に変えてしまう恐怖のQB(QUBELEY VIRUS)ウィルスです。こいつは常に進化し続け、どんどん感染力を強めています。このウィルスは200〜-100℃程度までなら活動すら鈍らず、驚異的な耐久性があります。感染したら最後、逃れる方法はありません。試しにワクチンを作りましたが、瞬く間に適応してしまいましたし、なによりウィルスを根絶できても作り替えられた組織は戻らない・・・まさに悪魔のウィルスです。」
誰も動かない空間には重苦しい空気が流れている―――
「しかし―――不幸中の幸いなのか・・このウィルスは自ら増えることは出来ない・・・そして恐らく持久力も際限がないと言うわけでは、ない。」
それを聞いて急に一人の何処かの支部の代表が立ち上がる。
「つまり、このウィルスは放っておけば自然に消滅すると?」
「1年もすれば全てのウィルスが自壊するでしょう・・・しかし、それまでに再びQBが送り込まれて来る可能性は高いでしょうな・・・」
「確かに・・・その可能性は否めませんね・・・もしそうなら今回のゲートは開く時に感知することが出来なかった・・・これはこちら側の世界に魔族に協力している者がいると考え、早急に対処する必要があります・・・」
午後6時、執務室、赤嶺 麻紀子―――
(やはり、本部は今だ現状を楽観視しているのだろうか・・・?地上では既に魔族が暴挙の限りを尽くしているのに・・・)
「博士は、他の支部や本部が現実についてどう考えていると思いますか?」
「本部は何か隠しておる・・・認めるのは釈だが、あそこには儂が唯一ライバルと認めたブライアン・D・ブレインがおる・・・奴ほどの男が今回のことに気付かなかったなどありえんわい・・・他支部は蝙蝠並に盲目じゃ。馬鹿みたいに本部を信用し、疑うということを知らん。そして今回の事件の裏には悪魔族の臭いがする。こんな巧妙な真似は最上級魔族にしかできんわ。」
(やはり博士も同じ考えですか・・・そうなるとやはり事の真相を暴くには優秀かつ、外部の知られていない者が・・・)
「私も博士と同じ考えです。しかしうちの支部だけで本部に反旗を翻すというのはどうも具合が悪い・・・使える人間が必要です。」
「分かっておる、しかしそんな危険なことを引き受ける奴は・・・いたな。」ここまでいうと不気味に口を歪めて笑いだす。
「しかし奴を動かすのは骨が折れる、おまけに動く保証もない。」
態度が白々しい。
「・・・何が望みですか?」
「儂は新しいオーディオが欲しいんじゃ!それと旨い酒!あとはあの神楽とか言う娘を借りていくぞい!奴の1番苦手とするタイプだから楽しみじゃわい・・・グヒヒヒヒ」
つくづくこの男は黙っていれば真面目そうなのにと思う。
「わかりました。では明日にでも移動用のヘリを用意します。」
それを聞くと機嫌良さそうに歌いながら出ていってしまった。
(相変わらず聞き苦しい歌だ・・・)
「支部長よかったのですか?大切な人選をあのような、その、個性的な人物に任せても?」
「良いも何も私にはそのような心当たりはないのだ・・・お前とてそうだろう、環?」
「確かにそうですが・・・しかし・・・」
口ごもる環と呼ばれた秘書だが、赤嶺がスッと手を翳すと口を閉じる。
「あれはああ見えてなかなか人脈が広い、必ず、期待に応える者を連れて来るだろう・・・」
それだけ言うと口をつぐみ、これ以上の会話は無駄だと言わんばかりに書類に目を向ける。
(期待してるぞ山久・・・)
その時誰も予想だにしていなかった。
山久がどのような人物を連れてくるのか・・・、人選を任せたことをどれだけ後悔するか・・・