1章:1ARRIVE
文才無いです…
ま、理系だしおkwww
8時00分―――
ギィィィィ
ドアの向こうからヘリのローター音が聞こえる。
恐らくこれが最後だろう。
屋上に通じるのドアを開けると、武装した数人に銃を向けられていた。
とんだ歓迎と来たものだ。
「時間ちょうどだな」
武装した隊員達の後ろからゆっくりと進み出て来る人物。
「わざわざここまで昇ってきたのに、これまた随分と物騒な歓迎だな?」
「物騒だと!?笑わせるわい。お前なら銃弾ぐらいどうって事ないだろう?人間気取りも大概にしとけ」
「生物学的には歴とした人間のはずなんだが?」
「ハッハッハ」
口論したと思えば急笑い出す山久とにやける来訪の男に隊員達は固まる。
来訪者の男からは不自然な程、魔力を感じない。
まるで虚無のような飲み込まれそうな感じに囚われ、背中に嫌な汗が流れる。
「さあ、とにかく今は支部長に会ってもらわねば話は出来ん。早くヘリに乗れ」
10時30分、ヘリ内部―――
キャンプ場から移動してきた7人の内、京と島以外は皆疲れて眠っている。
数刻前、山久と落ち合うためにビルに到着した京達だったが、嫌な予感が的中して、発電所がやられていて電気が通っておらず、エレベーターが動いていないので仕方なく25階まで階段で昇ったのだ。
もちろん京が身体能力を強化する魔法をかけたが、それでも一気に昇って来たため皆ヘリに乗ってからは倒れ込むようにして眠りについた。
起きている島は会話をしながら何とか意識を繋ぎ止めている状況だが、昨日から寝ておらず、睡魔に負けるのも時間の問題だった。
「島、そろそろ眠ったらどうだ?昨日から寝てないだろ?」
「いや・・・俺は眠るわけにはいかねぇ。起きたら牢屋の中だとか、みんなやられてましたなんてことになるのはごめんだ」
なかなか頭のいい奴だと少し京の中で島の株が上がる。
「有り得ない話でもないな」
「・・・?」
機体前方にいるだろう護送部隊に聞かれないよう声を落とす。
「先に言っておく。AEIOは現在軍部がクーデターを起こす寸前のような状況らしい。軍上層部は傲慢な屑のような連中ばかりで、金と権力のことしか頭にない。この混乱を軍部が解決すれば今のトップは墜落し、軍部が実権を掌握するだろう。そのために支部長に任務を与えられる俺は邪魔な存在として消そうとするだろう。が、正攻法でも闇討ちでも俺には効かん。そこでクラスメートのお前達を人質にするなんて馬鹿なことをしでかす連中もいないとも限らん。だから向こうに着いてからは俺から離れるな。」
「おぅおう、どこでも権力を握った奴は悪どいことをするもんだ」
「・・・ことの重大さが分かっているのか?」
「おう」
「まぁいい・・・それよりそこにいるお前、さっきから何のつもりだ?」
京がなにもない空間を睨み付け、鋭い敵意を向ける。
島には何もいるようには思えなかったが、京には誰かがいるという確信があるようだった。
しばらく睨み付けているとブォンという低い音と共に空間が揺らぎ、一人の隊員が現れた。
「ちょ、心臓に悪いって」
「ばれてないとでも思っていたのか?」
隊員は一歩近寄るとマスクを外し頭を振り髪を靡かせる。
女・・・年齢は20代前半と言ったところか・・・
女性隊員は一歩こちらに近寄り、礼をして話し始めた。
「まず最初に隠れて様子を窺っていたことを詫びます。あなたが雨宮 京様ですね?」
「あぁ、そうだが?」
「私、神楽 香奈芽と申します。どうやって私の存在に気付いたのですか?一応、秘匿結界を形成していたつもりでしたが」
「居場所を探知する術があるとでも言っておこうか。あまり手の内は見せたくないんでね」
「そうですか。あまり信用されてないみたいですね」
「悪いが、軍部の人間は信用出来ない。で、何の用だ?」
「私はもう軍部の人間ではありません。今は山久さんの助手をさせていただいてます。用件は・・・その・・・」
「・・・?」
何のために隠れて探っていたのだと問うと神楽は答え辛そうに苦笑いする。
「山久さんに、皆さんと仲良くしてこいと申し付けられまして・・・」
「はぁ?」
意味が分からない。
「向こうに着いてからは私が皆さんの身の回りの世話と軍部からの護衛を務めさせていただきます。そのため先に挨拶を、と・・・」
成る程。
だがこのような女性一人を護衛によこすとは何を考えているのやら?
「わかった。だが、何故護衛が必要なのだ?」
「先程雨宮様が話されていた事が理由です」
ほらな、と島を見ると神妙な顔付きをして俯いている。
「どうした?」
「いや、どんどん話がやばくなってねぇ?」
「確かにな」
その時、ヘリの姿勢が変わり、徐々に減速を始めた。
「そろそろ到着のようですね。皆さんを起こしてあげて下さい」
11時48分―――
ヘリが降下し始め、着陸までそれほど時間はかからなかった。
ドームのような場所に降り立つと支部長を筆頭にこれまた随分な重火器を装備した兵に迎えられた。
山久が合図すると速やかに銃口が下ろされ、そのまま建物の中へと案内される。
入口のゲートを潜ると所持品等を検査され、ボディタッチもされそうになったが山久と神楽が事情を話すと京一人だけで済んだ。
調べてみると出るわ出るわ、脚部にハンドガン4丁、ショットガン2丁、全身から投擲用のナイフが山程。
一流のハンターらしからぬ飛び道具ばかりで、不審に思われたが、それ以上探しても何も出ず、武器も預かったので入ることをを許可された。
これらは使うことはあるが格下に見せるためのカムフラージュ用で、普通、熟練のハンターは近接武器をメインとする。
実際に使う武器は普段は異次元にあるので京にとっては痛くも痒くもなかった。
突き当たりにあった巨大なエレベーターに乗り込み、カードキーで起動させ、一気に地下50メートルの中層区まで潜った。
居住区があるらしい地下3Fで止まり、まず神楽が一人で降り、振り返る。
「皆さんを居住区へ案内します。今から客室に案内しますので着いて来て下さい。雨宮様はまだ下の階へ行ってもらいますのでそのまま待機してください」
島が大丈夫なのかと京に目で問い掛け、頷き返すと島を筆頭に皆ぞろぞろと付いて行った。
「・・・で、俺一人だけ別にして何をするんだ?」
二人だけになったエレベーターで京が話し出す。
「これといった理由はないが、さっきの様子じゃまだ疲れてるだろうと思ってな」
「どうなんだか・・・」
「安心しろ。流石に軍部も今日は何もしてこないだろう」
「そうか・・・」
「だが明日からは気をつけろ、軍部は何かと難癖つけてお前達に立ちはだかるだろう・・・」
エレベーターが最下層の15Fへ到着した。
そのまま話しながら移動する。
「達・・・だと?」
何か引っ掛かる・・・
「悪いが達だな・・・あの子達はお前と団を組んでいることになっている」
「なっっ!?」
めずらしく開いた口が閉まらない京が横にいるというのに山久は見向きもせず、歩きながらすまなさそうに言う。
「こう言うしかなかったんだ。そうでもなければあの子達はあの場に置き去りにするしかなかった。今回の任務は過去へ飛び、今回の事件を事前に無かったことにすること。成功すれば今わざわざ余計な人員を抱え込む必要はないだろう?」
「相変わらず結果が全てだな。虫酸が走る」
無機質なパネルしかないの通路を突き進んでいると、およそその壁のパネルには似つかわしくない木製のドアが現れた。
重厚な感じで両脇には武装した人間が立っている。
山久がノックすると中から
「どうぞ」とやや疲れた感じの女の声が返ってくる。
「私は神楽 香奈芽と申します。これからしばらく、皆さんの身の回りの御世話をさせていただきますが、どうぞよろしくお願いします」
エレベーターから降りてすぐにそう頭を下げられる。
自分達よりも年上に頭を下げられ、一同は恐縮しないはずがない。
「ちょ、ちょっと、香奈芽さん、頭を上げて下さい」
舞が狼狽しながら慌てて頭を上げさせる。
「いえ、皆様は大事なお客様だと山久さんから伺っておりますので・・・」
「だ、大事なお客様って・・・私達はただ雨宮君に付いて来ただけで・・・」
「あら、でも雨宮様のご友人なのでしょう?あの漆黒の破壊神のご友人ともなれば無下にはできませんので・・・」
「し、漆黒の破壊神〜?なんじゃそりゃぁ?」
京の通り名に思わず大きな声で聞き返した島。
その言葉に通路にいた人間が皆こちらに注目し、場の空気が変わる。
「と、とりあえず部屋まで急ぎましょうか」
集まる視線が痛いのか、そう告げて足早に歩き出した神楽。
「皆様のお部屋はこちらの2部屋になります」
と案内されたのはエレベーターから1番離れた区画にある2部屋。
途中何故か英司が2度も逸れて迷子になるという奇行があったが、なんとか全員部屋までたどり着いた。
「間取りが正反対なだけで広さは同じ15畳です」
男二人がどちらの部屋にしようか考えあぐねていると、舞を筆頭に皆さっさと右の部屋に入る。
「ちょ、俺達には選ぶ権利は無いんですか!?」
「こういうのは早い者勝ちでしょ?」
「ぐぁぁ・・・おのれ〜!!!」
島と舞の掛け合いに神楽は笑い、荷物を置いたら右の部屋へと来る旨を告げ、部屋へと入っていった。
仕方なくとぼとぼと部屋に入ると床はフローリングで、壁紙も明るい感じで、通路とは全く別な居心地良い雰囲気。
入ってすぐ左にはバスルームとトイレがあり、部屋には4台ベッドに、冷蔵庫や、水道もあった。
他にもガスレンジもあったが、この部屋では誰も料理出来ないので特にあっても無くても変わらない。
ざっと部屋を確認した後、島と英司はそれぞれ気に入ったベッドの脇にケースを置き、そのまま隣へと向かった。
ウィィン
「「?」」
ドアは自動でスライドして閉まり、開かなかった・・・
「ちょ、締め出されたぜ!?・・・て、隣も開いてねぇよ!?」
相変わらず一人で騒ぐ島。
と、急に英司がドアの前までテクテク歩き、横にあったボタンを押す。
ピンポーン!
今の時代何処の家でもついてるあれだ。
「インターホンあるよ?」
「な・・・なにぃぃ!?俺の注意力は英司以下だというのか・・・」
そう言って一人がっくりと膝を付く島。
「ハイハーイ」
ドアが開き美伶が出てきて、そのまま英司の手を引いて中に入るとまたドアは・・・閉じた。
「え!?ちょ!?俺まだ入ってないんだけどぉぉぉ!??」
廊下には機械に嫌われた島の虚しい叫びが響き渡った。