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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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ノアズアーク 3

今回はレクター対アラウとイザーク対ソラ戦の二つでお送りし、ソラ対イザーク戦はそのまま次へと続く形になります。

 病院の裏口から入っていき、病院の複雑な廊下をいくつも曲がって階段を上に駆け上っていくと、目の前に倒れたガイノス兵が見えてきたレクターは既に犯人が現場に向かっていると判断するには十分な状況であった。

 イリーナの部屋には厳重な鍵がかかっており、複数のカギを回収する必要があるが、侵入した人間次第では簡単に入手できるかもしれないと思考し、その上でまずイリーナの部屋の前に辿り着くと、部屋の鍵が開いていないことを確認しつつ、ドアに耳を当てて室内の音を探り出す。

 心電図の音と呼吸音が聞こえてくるのでまず生きていることは間違いない、もっと慎重に探り出し足音などが聞えないので室内にいないと判断しても良い。

 そう思って意識を切り替えそうになった時、足音が別の部屋からやってくる。

 足音の種類を聞き分けていると、かなり足の速い人物が動き回っているらしく、レクターにはその犯人に心当たりが存在した。

「あの時のおばさんだ!」

 駆け出そうとしたとき、足音の行く先が鍵の保管し五つの場所とは違う場所に向かっていると気が付き、その行く先に捕虜として捕まえている大男がいると気が付き、嫌な予感が脳裏を過った。

 捕虜を殺そうとしているではないか。

 だとしたらあの捕虜には個々の居場所を突き止める役目があったのだと思考し、最悪のシナリオを阻止する為に足を進める。


 ヴァースの意識はここ数時間覚醒状態になっており、逃げようと体を動かそうとするが薬が点滴を通じて体に入れられており、その所為で体中が麻痺している。

 小刻みにしか体を動かせず、頭の中に霧がかかったようでうまく働かない。

 両腕と両足には鉄製の枷がつけられており、ヴァースの胃には発信機、右耳の奥には盗聴器が仕込まれており、この病院にイリーナが収容されていることも、それが『どこで』『どうやって隔離されている』かも全部イザークに筒抜けになっていた。

 体に仕込むことが出来るのもヴァースの回復能力の高さゆえであり、あえて本来の目的も、ヴァースを殺そうとしている理由も決してヴァースには話していない。

 ヴァースの部屋に入り込む影を見つけ出したヴァースは助けが来たと内心喜びを体をよじる事で表すが。

 姿を見せたアラウが右手に簡易型の注射器と、中身に毒々しい紫色の薬品をもって現れるので、さすがのヴァースでも嫌な予感を想像させるには容易な状況である。

 身動きが出来ないヴァースと、毒々しい薬品の入った注射器を持ったアラウ。

「最初っからこういう計画だったのよ。イザークの本心を知ればあなたが裏切る可能性が高いから、必要が無くなれば殺せって」

「ふごぉ!」

「ごめんなさいね。あなたに恨みは無いけれど………楽に殺してあげるわ」

 アラウは薬品をヴァースの喉元につきつけ、刺そうとしたところで奇妙な歌声で体中が麻痺してしまう。

「くっ!?イリーナ?部屋にいたのでは?」

「抜け出してきたんです。あなたが私の部屋にやってこないから、もしかしたらって」

 隣の監視部屋から入って来たイリーナはアラウを温厚な顔つきからは考えられない様な睨みを聞かせる。

「ヴァースを殺すつもりだったんですね?あれだけ利用しておきながら」

「どのみち私が殺すかイザークが殺すかの違いです。なら、苦しまないように殺してあげるのが筋でしょ?」

 ヴァースを怒りと困惑と悲しみを混ぜ込んだ表情と睨みをアラウに、イリーナは悲しみを視線に乗せてアラウを見つめ、アラウは無表情をイリーナに向ける。

「ある噂を聞いたのです。それも問いただしたかった」

「その前に、イリーナ。部屋には誰を置いて来たのかしら?確か、中からは呼吸音がしていたけど?」

「部屋を監視していた兵隊さんです。眠ってもらいました」

「あらそう。で?何かしら?あなたが私に聞きたいことって?」

「イザークが二本の東京で大虐殺を企んでいるって聞きました。本当ですか?ある『道具』を手に入れる為に政府を脅すつもりだったと」

 ヴァースを驚きの視線をアラウに向け、アラウは微笑むこともせず、特に焦った様子も無いまま黙って頷く。

「ええ、それぐらいすれば道具を差し出すだろうと。そうすればもっと多くの人を殺すことが出来るかもしれないと。はなっからミュータントの国を作るなんてのは興味も無いんですよ。彼は人を殺せればいいのです」

「では、あなたは何故そんな計画に参加しているのですか?」

「殺されたくないからよ。彼を裏切れば殺される。それにこの世界にはイザークに勝てる人間なんていないわ」

「それは、過大評価です。あなたはイザークを過大評価している。います。私は信じています」

 イリーナの強い瞳を前にアラウはイライラを募らせていく、イリーナの言葉には確信と同じぐらいの強みを含めており、アラウには無い自分の強い意思を感じている。

 そう、アラウには自分の意思と呼んでもいい部分が存在せず、基本他人に依存してしまう。

 しかし、イリーナはその反面しっかり自分の意思を持っており、その強さはイザークの殺人衝動でも抑えることが出来ない。

 それはきっとヴァースも同じことで、イザークは自分の思い通りにならない存在に苛立ちと畏怖を感じている。

 イリーナを殺したいというイザークの願いはそう言う一面から来ている。

 アラウは困惑と苛立ちをイリーナに向ける為両足に力を込め、イリーナが再び歌いだす前に動く為足り出そうとしたとき、アラウが入って来たドアが思いっきりぶっ壊れる音とドアが凄まじい衝撃でアラウとイリーナの間を通り過ぎ窓をぶち壊す。

 ヴァースを含めて全員が唖然とする中、レクターはアラウに拳をたたき込んでいた。

「いた!色黒おばさん!!」

「無礼な子供!」

 二人が拳を交え、至近距離で睨み合っている間にイリーナはヴァースを助ける為こっそりベットに近づいていく。


 アラウは個人の意思を持たない。

 他人に依存してきた彼女の性格はノアズアークに入ってからも変わらない。

 イザークが怖いからという理由も、ノアズアークに所属している理由も全ては依存心からくる行動である。

 アラウのそう言う所をイザークは非常に気に入っており、アラウもそれで自分の命が助かるならと特に気にしていない。

 アラウはよく分かっている。

 イザークが強い殺人衝動の持ち主だという事も、それとは別に所有欲が強く自分の言い成りになる人間を好む傾向が強い。

 仲間意識の薄い彼からすれば頑丈で賢く、他人の思い通りになる事をよしとする人間を好む故にベースやアラウに一定の好感を持っている。

 アラウはイザークが最強で最凶だと信じており、同時に畏怖の感情を抱いている。

 だからだろう。

 イザークが怪我を負い、撤退した姿を見たときはその姿からソラに対しても畏怖を抱いたほどアラウからすれば恐怖の行動でもあった。

 あれほどの傷を負ったイザークが何もしないわけが無い。

 実際。イザークは大虐殺を思いつきその為の陽動役のベースとアラウを選び取ったところはあるのだから。

 アラウは誰を殺そうとかまわないという気持ち、殺されたくないから付き従うという依存心を持ち今日も戦う。

 それはすなわち………恐怖心である。


 アベルはショッピングモール前で恵美と共にある人物に連絡を取っており、軍が用意した連絡用の大型通信機の受話器を耳に当てる。

 何度も待っていると電話の向こう側から聞きなじみのある声が聞えてくる。

「なんのようだ?向こうでイチャイチャして仕事しないから追い出されもしたか?アベル」

「ガーランド。お前にとっていい報告かもしれん話を持ってきた人間にそう言う言い方をするのだな?」

 電話越しにでも渋った表情をしていると分かるアベル、ガーランドは実際渋った表情を浮かべており、アベルは海の幼いころの写真を片手に持つ。

「お前の異世界の息子を見付けたぞ。名前は『海』だ。それでな………毛髪を送ってDNA検査をしようと思って」

「明日妻とそっちに行く。待っていろ」

 何も言わせない様な強気な言い方で電話を一方的に切ってしまうガーランド、アベルは「やれやれ」と言いながら恵美の方を見ると恵美は微笑むだけ。


話の感想は次で!では二時間後に!

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