空と海 3
クリスマスイブに仕上げたのですが、仕事帰りという事もありめちゃくちゃ疲れました。なんでクリスマスイブに仕事をしなくちゃいけないんだ!?
病院のすぐ近くのレストランへと入る少しだけ前の話、母さんの提案で俺と父さんは病院のロビーで隊員の手続きを打つことになり、奈美と母さんはイリーナと面会させてもらえないかと話を聞きに行くと言い出した。
俺達の足元で先ほどから邪魔になっている二人の竜はほっといて、俺が書類を書きながら母さん達を待っていると俺の携帯にメッセージが来たという振動が伝わってくる。
レクターからのメッセージで、病院の近くにおいしそうなレストランを見付けたという内容、そこで待っているという話だったので俺は、「分かった。退院手続きをしたらそっちにいく」とだけうつ。
十一時半を過ぎたころロビーにうなだれた奈美と微笑む母さんが降りてくるので、俺はおおよそ「駄目だったんだな」と把握できた。
「駄目だったか?」
「ええ。意識不明だからって。もう、奈美も元気出しなさい。意識が戻ったら良いって言ってくれたでしょ?」
それでも回復するのに時間が掛かったようで、レストランにつく頃にようやく回復した。
レストランに入る際に視線を感じたような気がしたが、俺は気にする前にレストランの一角で待ち構えていた三人に奈美を紹介するのに頭を働かせた。
ジュリから順番にレクターと奈美と同い年のキャシーを紹介したところで、俺はマリアがまたいないことに気が付いた。
「マリアさんなら………ゴン君に追いかけまわされてホテルで疲れているよ」
「?何があったらゴンに追い回されるという状況が完成するんだ?」
ジュリが言っていたゴンに追い回されるという状況がどうしても理解しがたい状況である。
まあ、いいやと思い俺はレストランのメニュー表をもって品定めに入る。
ちなみに席割は俺の隣とレクターで並んでおり、対面に奈美とジュリとキャシーの順番に並び、カウンター席に母さんと父さんである。
母さんと父さんはすっかり雑談に花を咲かせており、こちらはこちらで勝手に進めてもよさそうだ。
話を初めて十分が経過した時、食べるメニューも決めたころ俺は奈美から驚きの話を聞いた。
「え?万理の両親が亡くなった?いつの話?」
「え~っと、確か二年前だよ交通事故だったって聞いたけど………、本人があまり詳しく話したがらないから私はあまり知らないの。聞きたいけど……」
「そうだね。こういう事って個人的な事だし、あまり突っ込んで聞かれたらむしろ迷惑だと思うよ。聞きずらいしね」
「そうかもしれないな」
ジュリの言う通りでこういうことは個人的な事だ、本人が話したがらないのだから俺が突っ込んで聞くわけにもいくまい。
本当につらい事なら何か話を母さん辺りに持っていくだろうし、それが無いという事は本人は今の所はまだ大丈夫という事だろう。
キャシーと奈美は特に仲が良くなったようで、特にキャシーからすればようやくできた同年代の友人問う事もあり余計に仲良く話をしている。
俺はと言うと隣で鬱陶しく話しかけてくるレクターがひたすらウザイ。
俺の膝の上ではエアロードが、奈美の膝の上ではシャドウバイヤが据わっており、キッチンの奥からオムライスやスパゲッティのいい匂いが漂って来て、それだけでも十分お腹がすいてくる。
俺は聞きたい話があり、どうしても聞いておこうとジュリに訪ねる為前に少しだけ出てジュリだけに聞こえるように近づく。
「あの後、ノアズアークの捜索はどうなったんだ?」
「ああ、今の所は発見してはいないはずだよ。最も下手に追いかけると反撃にあうというから今は彼女の目覚め待ちなんじゃないかな?彼女から少しでも話を聞ければって考えているんだと思うよ」
「イリーナか。彼女も俺と同じ異端者という事になるのか?」
「そうだね。こっちでは『新人類』や『ミュータント』なんていわれているらしいけど。それに軍は彼女が『呪詛の鐘』の関係者なんじゃないかって疑いもあるらしくて」
「何故?関係ある様な人間に見えないけど?」
「うん。警察や自衛隊の話だとどうも彼女の能力は『歌』らしいの。同じ『音』『空気の振動』が能力の条件という部分が一致しているから疑いがあるみたいでね」
「そう言えば戦闘中も歌っていたな。あれはそう言う意味があったのか。でも、俺は妹を守ろうとした彼女に疑いをかけたくないが」
「私も。でも、今は彼女を守る事を優先したいらしいよ。病院の警戒態勢はかなりの物らしいし」
二人で話していると奈美が俺とジュリに奇妙な視線を向けてくる。
俺は「何だよ?」と尋ねるとその目がさらに細く疑いを混ぜ込んだものに変化する。
「お兄ちゃんとジュリさんってどういう関係?」
ああ、そう言う事か。そう言えばその辺を言っていなかったな。面倒というのもあるし、言えば奈美が大騒ぎをすることは間違いない。
どう言ったらいいのか、どう説明するのが俺は一番楽なのかを志向している間にレクターが勝手に口を開く。
「二人は付き合っているんだよ。交際している仲だよ!」
こいつを殺すべきだったな。
俺は緑星剣を呼び出して今すぐにでも串刺しにするべきか、奈美とキャシーはジュリを質問攻めにしている間に料理がテーブルに並べられる。
俺はオムライス、レクターとジュリがシーフードピラフでキャシーがミートスパゲッティで奈美がカルボナーラが目の前に現れ、二人の竜ように個別にハンバーグセットを注文してテーブルの真ん中に置く。
「これからどうするの?今日一日は暇でしょ?遊びに行く?退院祝いをしよう!」
「レクターは遊びたいだけだろ?」
奈美が「大賛成!ジュリさんとお兄ちゃんが交際した話をもっと聞きたい」と言うので、俺は「なら俺は反対だな」と返してやる。
奈美とレクターからのブーイングを聞き流しながら俺はオムライスを口に運ぶ、ケチャップとチキンの味が口いっぱいに広がる。
「だったら奈美ちゃんにこの辺りを紹介してもらったら?それと同時に私達で警備体制の見直しをしておかない?明日から警備体制に士官学生を入れるって話だし」
「奈美が役に立つと思うかね?俺は思わないね」
「私だって役に立つもん!」
「立たないね!どうせ関係の無い場所に案内した挙句、役に立たない情報ばかり俺達に提供する姿が見て取れるわ!」
「仕方ないじゃん!私そんな事わかんないもん!」
「今役に立たないって認めたな!」
「認めてません~!」
幼い喧嘩を繰り広げる兄妹がここに居て、それを他の三人が微笑ましく見ている。
「良いじゃないですか。私は奈美ちゃんと一緒に遊びたいです。こっちの遊びっていうのも興味あるし」
キャシーまでが奈美派として立ち上がるので俺は諦めることにした。
女子人三人がどこで遊ぶのかなんてことを検討し始めたので俺はその辺でおかしな場所でないといいなと言う気持ちでオムライスを頬張る。
完結言えばやはり奈美が連れていった場所はまるで役に立たない場所だった。
小野美里町の海沿いの港、大型ショッピングモールが最近完成したらしく、人通りが増してしまったこの辺は小野美里町ではガイノス帝国の警戒対象という事もある、分かりにくいようにだが軍の特殊部隊が見張っている。
こんな所を案内してどうするつもりなのかなんて思う。
「こういうショッピングモールってどこ行っても同じなんだね。俺達の世界にあるショッピングモールとあんまり変わらないように見えるけど」
「変わらないと思うぞ。でも、この辺は地方の方だからあまり大きなショッピングモールじゃないけどな。帝都にあるショッピングモールに比べるとショボいと思うぞ」
実際外回りは結構大きく見えるが、中はお世辞にも豪華とは言いづらい。まあ、最近できたというだけあり中にある店は最近の流行りが取り入れられているのだろう。
すると、俺は後ろから小さくではあるが鐘の音が聞えたような気がし、振り返るとそこには大きな背の男が立っていた。
まとめは二時間後に!




