侵略者≪インベーダー≫ 6
本格的な戦闘と激動の一日の後日談的なエピソードです。ここから物語が更に濃くなっていきます。
多くの自衛隊や警察の前に現れた三人はただの子供のように見え、しかし、その子供を諫めるほどの力を彼らが有しているような状況ではない。
実際、ソラが火を鎮火しなければ被害は増える一方だっただろう。
先に戦闘は始めたのはレクターとアラウ。
高速で動き、目にもとまらぬ速さでレクターの周囲を走り回るがレクターに左後ろからはぐりかかろうとしたところでレクターからの顎へのフック攻撃を受けた。
アラウの頭の中で驚きが衝撃と共に駆け巡り、頭が痛みを認識して信号として体中に伝えるのに二秒もかかってしまった。
顎を撃ち抜かれた衝撃から頭から砂利目掛けて滑り込み、両腕で立ち上がるころには体中が擦り傷で痛みを訴えていた。
「私が……殴られた?ありえない……」
アラウの頭に怒りの感情が駆け巡り、素早く動き出しレクターの周りに砂煙が立つほどの速度を上げていく。
今度は手加減なく、油断もしないという気持ちを引き締め真後ろからストレートに拳をたたき込むとするが、今度もレクターは同じように彼女の動きを完全に読み切って見せ、裏拳を決める。
しかし、カウンターが来るのではという想いはアラウの中でもあり、今度は混乱せず素早く立ち上がり右側面から殴りかかる振りをして更に後ろにまわりこんで高等部目掛けて殴りかかる。
今度もレクターはフェイントに引っかかることなく、カウンターを決める。
「おばさん早いけど。早いだけだよ。パワー無いし、早い分カウンター決められた時の反動はでかいでしょ?それに、殴る度に殴る場所を見る癖止めた方が良いよ。俺からすればここに殴りますって言っているように見えたし。それに……一瞬だけ速度を上げればあなたの攻撃に合わせるぐらいなら造作も無いよ。早いってことは反応が遅れるってことだしね」
アラウはレクターのガイノス語事日本語を上手く聞き取れなかったが、自分の速度がレクターにかなわないと素早く判断した。
上空で戦っているイザークも最初の攻撃が効いているらしく、攻撃を躱し切れず地道なダメージを受けている。その上上空に奇妙な風が吹き炎が纏らない様で苛立ちが見て取れる。
ヴァースは一件互角の勝負をしているように見える。
ヴァースのパワーの前にキャシーの十字槍と魔導機を使った相互攻撃は相性が悪い。
しかし、キャシーの地道な攻撃と圧倒的なパワーで豪快な戦いのスリル感のある戦い。
キャシーは攻撃を全て回避して、魔導機を上手く捜査して周囲の土をヴァースの身動きを封じる為に使用する。
まるで魔法のような戦いを自衛隊や警察は悔しさを滲ませた様な表情で見る事しかできない。
「ウガァ!!お前ウザイ!」
しかし、周囲が思い描くほどキャシー自身も決して楽観視できるような状況ではない。
何故なら一撃でも喰らえば終るのは他の警察官や自衛隊とさほど変わらないからだ。
「凄まじいパワーですね。なのに何故あなたはあんな人達と行動しているんですか?」
キャシーはよく分かっている。
こういうストレートな戦い方をするような人間は感情表現や考え方もストレートな単純な生き方であると。
ヴァースのような人間がこんな非常な作戦に同意するとは思えない。
「俺達………他の人間と違う!相容れない!だから」
ヴァースから感じる怒りと同時に悲しみが奥に隠れていると感じた途端である。油断が生じたのだろう、キャシーの体中に衝撃波がやって来た。
槍で何とか吹き飛ばないように耐え忍び、同時にやってくる攻撃に魔導機で反撃する。 周囲の土をヴァースの周りに纏わせながら身動きを封じようとするが、ヴァースをそれを強引に振りほどきそれでも近づこうとする。
キャシーは魔導機を使った周囲の物体操作の力を更に強くさせ、なんとしてもここで押さえつけようとする。
ヴァースは更に力を増していき、あと一歩と言うところで歌声がヴァースの耳に届いてしまう。
イリーナの歌声がヴァースの耳に届く、ヴァースは苦しみを訴えながら地面を思いっ切り叩きつけ砂埃と共に逃げ出していく。
キャシーとヴァースの戦いが終わった頃、ソラとイザークの戦いも一応の決着を見ようとしていた。
「お前ぶっ殺す!」
「アンタにだけは殺されるわけにはいかないな!」
イザークは体から発せられる炎を頭上で太陽のような熱量を誇り、空自身も緑星剣に風を纏わせる。
風は見えない巨大な刃となり、太陽はさらなる大きさへと変わろうとしていた。
太陽を地面に居る自衛隊員や警察目掛けて振り下ろし、ソラはそれを消そうと巨大な風の刃で太陽の前に立ちふさがる。
ソラは緑星剣に纏わせている風の刃を思いっ切り太陽に切り込む、太陽を押し返そうとそのままの勢いで突っこんでいき、太陽を更に上空へと持っていく。
「ウオオ!負けてたまるかぁ!!」
更に上空へ、安全だろうという高さまで持ち上げると空はそのまま剣を引き抜いて爆発に備える。
すると、エアロードがソラの前に現れる。
「風の結界」
空の周囲に爆発を拡散させる風のバリアが張り巡らせ、爆発は周囲に衝撃波と熱風が自衛隊員や警察を襲うが最悪の事態だけは防ぐことが出来た。
ソラ達はジュリが呼んだガイノス帝国応援を待っているとゲートの向こう側から応援はあっさりと現れた。
同時に今回の事件がいかに日本政府の抱える戦力では対処できない事態であるかを物語り、対処が不可能であると判断したガイノス帝国はこの街の治安と自治を一時的にガイノス帝国に預けるようにと要請を出した。
日本政府はノアズアークと戦ったのがガイノス帝国の学生だという事実と、今までの作戦の失敗を受け一時的に小野美里町の自治権を放棄することで決定し、それが発表されたのは事件の翌日の事であった。
それを受ける前からガイノス帝国はゲート防衛戦力を送り込み、ゲート周辺に大掛かりな防衛施設を建造することになるとソラ達の目の前で素早く建設が進みだした。
ジュリと栄美とアベルが現場に駆け付けたときには、奈美やイリーナはガイノス帝国軍による治療を受けており、自衛隊や警察関係者も野営テントの中へと運ばれていったところだった。
結果として自衛隊や警察はそれぞれ二十を超える人員を失い、合計で五十を超える人間が重軽傷を負う事となった。
それもあり、当時は小野美里町の防衛を委託することに関しては反対意見があったが、事件に関わった者達の多くは心が折れてしまい、すでに戦えるような状況ではなくなっていた。
自衛隊やアメリカ軍は強制的にでも部隊送り込もうと戦力を送り込むが、ガイノス帝国は協定を素早く結ばせると、それを口実に機竜に日本周辺に見えない結界を張った。
これではアメリカ軍は関与できず、機竜に攻撃すれば異世界戦争になりかねないという事態にまで発展したことで自衛隊も下手な行動が出来ない結果に終る。
この結界はノアズアークを日本国内に閉じ込めるというのが目的であり、ゲートはガイノス帝国の最大戦力の一部が中と外を通じて防衛していて、機竜の結界がある限りは日本からできることもできない。
日本は結果として鎖国状態へと持って行ってしまう。
ガイノス帝国はノアズアークとの早期決着をつけようと目論み始める。
肝心のノアズアークも自分達が閉じ込められたと判断し一旦雲隠れするとその日のうちに激動の時間があっという間に過ぎ去っていく。
濃い一日が過ぎ去った時にはソラ達は気が付けば翌日を迎えていた。
どうでしたか?激動の一日目が終わって、ようやくここから物語が動き出す感じです。まだラスボスは動いていませんが、もう少し書き進めていくうちにラスボスも登場させるつもりです。では次回!




