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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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侵略者≪インベーダー≫ 3

この場合侵略者とは誰を指すのでしょうね?ソラ達なのか、それとも『ノアズアーク』なのか………

 バイクが格納してある地下駐車場、コンクリートで作られた寂しさを感じさせる場所であり、電灯の寂しい明かりと広いだけの空間にガイノス帝国と技術大国製の軍用車と俺のバイクが配置されており、俺は背中にエアロードとシャドウバイヤを入れたリュックサックに入れた状態にしておく。

 最も俺にはバイクのヘルメットなど必要ない、『竜の欠片』を使うだけでいいので俺にとっては楽でいい。

 最もリュックサックが余分な重さを持っているので出来る事ならここで降ろしてしまいたい。

 しかし、降ろせば背中にくっついてくるか、大きくなって後ろから追いかけてくるだけだと思うので止めておく。

 竜が二匹後ろから追いかけてくるなんて別のホラーを経験したくない、なので俺は大人しく二匹の竜とランデブーをすることにした。

 母さんたちがどんどん車の中に入っていくのを俺は遠目に見ていると、ジュリやキャシーは簡単な遠足だと思っているようだ。

 でも………なんか嫌な予感がするんだよな。

 俺は竜の欠片で形成できる鎧、みんなで名付けた『星屑の鎧』を作り出すために内から出る力をコントロールする。

 内から外へと力を放出し、その力を鎧の形を形成していく。

 手足から鎧が俺の体にフィットする形で召喚されていく、母さんやキャシーは初めて俺が鎧を召喚する所を見たのだろう、少々驚きの表情を作っていく。

 バイクのヘルメットや防具代わりを鎧が果たしてくれる、俺はそのままバイクにまたがり父さんの方をじっと見つめるとどうやら出発の準備が整ったらしい。

 俺が先導する形で前へと出ていく。


 街中へと出ていくとアベルの視界の端にいくつか生徒が街中に出ていくのが見えた。

 日本家屋が奥に行くほど密集しているのが見えてくるので、さらに山奥へと向かわなくてはいけない。

「あの二つの山の谷底に一本整備された道があるの。私達の村はあそこからしか行けないから。ソラならあの道を良く知っているわ。学校に行くにも遊びに行くにもあの道を通るしかないから」

「不便だな。学校に行くにもその道を通るしかないとは」

 アベルのため息と同時に漏れる言葉に後ろにいる学生三人が同意する様に頷く。

 ジュリは周囲の家々をジッと見つめる。

「この辺は古そうな住宅が多いですね?」

「そうね。古くからある家が多いからね、でも今は皆警戒しているから出てこないけど本来はもう少し人通りがあるんだけどね」

「あの~ソラ先輩はこの辺で遊んでいたんですか?」

 キャシーの素朴な質問にソラの母親は顎下に指を置きながら、少しだけ考えるそぶりを見せる。しかし、アベルだけがその仕草が考えていない時の格好だと分かっている。

「家の近くに遊び場がないからね~」

「気を付けておけ、こういう言い方や仕草をしているときは考えていない証拠だ」

 アベルの指摘にソラの母親は苦笑いを浮かべながら誤魔化す。

「ごめんごめん。家に剣道場が用意されているし、山奥や広場なんかでも遊べるからいつも街に出て遊んでいる印象は無いわね。でも、いつもどこか退屈そうにしているのは事実よ」

 遠い空を見るように目を細め前で走っているソラを見るその目は母親の物だ。

「あの~恵美さん。ソラ君は小さい頃はどんな子だったんですか?私達の知っているソラ君はなんというか………」

 ジュリは自分が思い描くソラのイメージ、文句をいつも言うくせになんだかんだ付き合いが良く、面倒見もいいため後輩からのイメージは非常に良く、勉強や運動もそつなくこなしながらそれを決して自慢することは無い。どこか楽しそうにすることに罪悪に似た感情をすることがあったが、最近はそんなことも無くなったことなど多くの事を語ると、空の母親は優しそうに微笑む。

「そうね………私達が知っているソラのイメージはどこか遠くに思いをはせていて、何をしても楽しそうにせず、みんなの輪の中にいても孤独でいるようなイメージかな」

「い、意外ですね。私達が知っているソラ先輩のイメージとだいぶ違うと言いますか、なんか全然想像できないと言いますか」

「そうかな。俺とジュリが出会ったばかりの時のソラはそんな感じの名残があったし、そう言われ方をするとなんかそんなイメージがある」

「そうだな。ああ見えて私やジュリエッタちゃんやレクター君と出会ったばかりの頃はまだそんな感じや雰囲気が残っていたしな」

 アベルやレクターが同意するのをキャシーは難しそうな表情に変わりながら前で走っているソラの背中に視線を向ける。

 空の背中に背負っているリュックサックから覗かせる二匹の竜の頭が見えてくる。

「みんなが変えてくれたのね。私達じゃソラは変わらなかったから。あの子に必要だったのは何かしらね」

 そう言われた途端恵美とレクター以外の三人がレクターを凝視した。


 俺がバイクで移動している道は父さんのワゴン車のような軍用車でも余裕で走ることが出来る道、多少回り道ではあるがこの方が安全だろうとの判断だ。

 後ろのリュックサックからゴソゴソと音が聞こえてくる。

 お菓子を食べていないことを祈るばかりである。

 なんてしているとエアロードとシャドウバイヤが顔を覗かせているのが音で判断できた。

「古臭い道だな。何というか……年代を感じるぞ」

「そこまで古臭い道でもないはずだけどな。古い家が多いからそう感じるだけじゃないか?少なくともこの辺の家は古くからある家が多いからな。その影響だろ」

 周囲を見回せば確実に事故を起こすので俺としては安全運転に集中し、後ろでエアロードの声に律儀に答える。するとシャドウバイヤまでもが質問してくる。

「帝国の首都……帝都だったか?あそこと比べると随分人通りが少ないというか、極端すぎないか?それとも日本という国はどこもこんな感じで閉鎖的なのか?それとも特殊な状況だからか?」

「特殊な状況と言うのもあるとは思うよ。でも、同時に元々人通りが多い方じゃないしな、それも理由なんだと思うよ。まあ、鎧姿の人間がバイクを運転していたら誰だってこんな対応するとは思うけど」

 凄いシチュエーションだよな。考えないようにしていたけれど、なんで俺は鎧姿でバイクにまたがり、背中に二匹も異世界生物を背負いながら日本の道路をバイクで運転しているのだろう?

 俺が警察官なら待ったなしで職務質問レベルである。下手をすると逮捕状が出てもおかしくはない。

 いや、俺なら容赦なく逮捕状を出している。

「この辺はお前の遊び場なのか?」

「そうでも無いな。エアロードは俺の遊び場が気になるのか?」

「そう言うわけでも無いが、まあ見てみたい気はするな。お前という人間を形成した場所であるのは確かだろう」

「どうなんだろうな。今の俺の性格を形成したのなら向こうになるんじゃないのか?こっちにはあまり強い思い出が無いんだよな。まあ、剣術の腕の基礎はこの街にあるのは確かだけど」

 ここを思い出の地として語るのなら俺は少しばかり印象が薄い。

 この地で生まれ育ち、いつだって行動していたはずなのに俺にとって帝国で過ごした毎日の方が印象深い。

 それだけ激しい三年間だっただけなのだが、それなら俺はきっとこの街で退屈な毎日を過ごしていた事になる。

 いや、退屈なのは俺の過ごし方だけだったのだろう。

 自分の心の問題、何が原因だったのか俺自身すらよく分からない。

「自分の心を退屈にさせるものってなんだと思う?」

 意味のない質問だ。

 だってこんなことを二人の竜に尋ねても意味なんてあるとは思えない。


「………やりがいの無い毎日、目標を立てずにただ生きるだけの日々」

「やりがいを見付けようともせず、目標を定めようともしない。そんな人間が退屈にさせるのだと思うぞ」


「生きるとはそういう意味だ。生きるとは生きているという感覚を感じる為に今を生きるのだ。見えない目標にひたすら挑み、見えない心と身体に恋をして、毎日ボロボロになりながら生きるんだ」


「生きているんだって感じることでしか退屈な毎日を払しょくすることは出来ないぞ、自分から動かなければ世界は変わらない。エアロードは自分から動いたから世界が変わったのだ」


 エアロードが横で自分をやり玉に挙げられたと不満を口にしていたが、俺としては心に響く言葉だったことは事実だ。

 その通りだ。

 俺は目標も無くただ生きていただけだったんだ。

 いや、自分で目標も作らず、目標になれなかったものにすがりながら生きていたんだろう。

 剣がカッコいいからなんて理由で始めた剣道だったが、反則スレスレの戦い方では公式戦で戦うことは難しいという理由で挫折を味わい、なんで自分が剣道をしているのかが分からなくなっていた。

 逃げたし立ち向かう事すらしなかった。

 だとすれば逃げるのは止めだ………もう退屈な毎日にはいい加減飽きた所だ。


二時間後に後編を掲載します!では二時間後に!

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