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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
81/156

侵略者≪インベーダー≫ 2

二話目となります。

 朝比警部補は黒い髪と童顔に見える自らの表情をどこまでも恨んでおり、スタイルだけは良いため体と顔のバランスが悪いといつも言われてきていた。

 それを恨んでいたが、それ以上にこの状況が嫌になってしまう。

 目の前に転がる死体は全部で十個。

 自衛隊から救援の話が持ち込まれた時には救出部隊との連絡が途絶えたという状況だった。

 警察がFBIと協力し山村奥の旧工場跡地に突入したときは既にもぬけの殻で、一番奥の部屋では自衛隊員の遺体が転がっていて、その全てがまるで拷問を受けたような痕が見受けられた。

 救出部隊までもが拷問を受けており、まるで殺しをゲームのように楽しんだような痕であることから残忍な性格がよく表れている。

 しかし、室内には拷問痕の付いた死体以外には全くと言っていいほどに何も残っておらず、各部屋に分かれて調べても何も出てこなかった。

 FBIの一人が足元に転がる石っころを蹴っ飛ばしながら自らの苛立ちをぶつける。

「クソ!命を弄んでいやがる!その上毎度毎度うまく隠れて逃げやがって!」

「ジョージ捜査官!苛立ちを周囲に向けない」

 ジョージと呼ばれたFBI捜査官はそう叫んだ同僚の女性捜査官を申し訳なさそうな視線を送る。

 しかし、周囲からすれば苛立ちの理由を理解していないわけでも無い。

 何故ならジョージは二年前の捜査の際に同僚を同じ手法で殺されている。

 全く手掛かりがないまま捜査はまるで進展しないまま時間だけが無駄に過ぎ去っていった。


 ベットに腰掛けながら豪華な室内を眺める。

 レクターとエアロードとシャドウバイヤはお餅を頬張り、父さんと母さんは談議に花咲き、俺は父さんと母さんが仲良さそうにしているのを安心しながら見ていることが出来る。

 そう言えば母さんはどうやって俺が異世界で生きていると知ったのだろう。あの口ぶりなら俺が生きているという事はどうやら知っていたみたいだし。

「母さんはどうして俺が生きている事を知ったんだ?日本政府が知っているとは思えないけど」

 素朴な疑問だけれど大きな謎でもある。

 日本政府が俺が生きていると分かっていたとは思えないし、たとえ知っていたとしても母さんに言うなんて中々ある展開だとは思えない。

 すると母さんは腰元のポケットから一枚の写真を取り出す。それはどこか古ぼけていて、見るからに年代物という感じではある。

 父さんがその写真を覗き込むと驚きと共に目を大きく見開く。

 俺も写真がどうしても気になってしまい、立ち上がって覗き込むとそこには若い父さんと母さんが仲良さそうに写っている普通の写真である。しかし、問題は俺はこの写真を父さんの寝室で見たことがある点である。

 全く同じ写真だ。

 印象的な岩も後ろには写っているし間違いない。

 これは北の近郊都市で取られた異世界の写真である。

「私はこんな場所に行った覚えは無いし、何度見直してもここに写っているのは私とあの人だった。警察は事件現場に残っていたって言ってね。空がそんなものを持ち歩くとは思えないし、奈美が悪戯するなら自分が写る写真を選ぶだろうから。そう考えたとき、私はありえないことだと思っていたけど、どうしてもそう思いたかったの。空は別の世界に行っていしまったんじゃないかって。ならきっと別の世界のあの人達ならちゃんと育ててくれるだろうし、なんか……根拠はないけどうまく守ってくれるんじゃないかって思えてね」

 母さんのこういう根拠のない自信や勘の鋭さは一体どこからやってくるのだろうか?

 でも、この笑顔を見ると俺はどうしても憎めない。

 しかし、ここまで来て俺はようやく違和感と言うか、別の問題に直面した。

「母さん今日は帰るんだよな?」

「?帰らないけど?あなたの部屋に泊まったらだめなの?」

 なんて言いながら父さんを見て、父さんは照れながら気持ち悪い顔をしている。

「奈美はどうする気?」

「最悪数日帰らなくても大丈夫よ。私の子だし」

「絶対にやめた方が良い。父さんと同じで直ぐに部屋をゴミ屋敷に変える才能の持ち主だぞ。数日放置すれば家中がゴミ屋敷に変化するぞ」

「その時は向こうの世界に移住して家族で住みましょう」

「母さんは危機感が無いのか!?家中をゴミ屋敷にしたら誰が処分するんだよ!」

「あら?移住することは反対しないのね。これは結婚まで秒読みかしら?」

 俺は黙ってしまった。

 人の上げ足を取るのを得意とする母親である、俺の心情をうっかり吐露したのを決して見逃さない。

「ソラは私達に結婚してほしがっているんだ」

「あらそうなの?フフ。あの子は意外と寂しがり屋な所があるからね、私にもあなたにもいてほしいのね」

 俺は顔を真っ赤にしながら緑星剣を召喚していた。

 レクターが後ろから俺を羽交い絞めして何とか抑えようとする。

「押さえて!押さえて!その剣を一旦消滅させて!」

「放せレクター!俺は……俺の使命はここであの二人の記憶を消すことなんだ!俺ならできる!」

「きっとそれは今じゃない!そうだ!海だっけ?その子の事を聞くんじゃないの!?」

 俺としたことがうっかり忘れていた。

 俺は怒りの溜飲を下げて母さんに向き直る。

「母さんは海と知り合いだったよね?海の幼い頃か海の両親が写った写真を持って……よね?」

「持っているけどどうして?」

 あまりにも隠し事の無い呆気にとられるままの俺の思考は完全にフリーズしてしまい、現実世界に戻ってくるのに時間が掛かってしまう。

「持ってるの?」

「言ってなかったけ?私達と海君の両親は学生時代の友人だって。言ったような気がしたけど?」

「聞いたことないけど?」

「そう?でもどうして海君幼い頃や両親の写真が欲しいの?」

 俺が口を開く前に父さんが先に説明してしまう。

 ガーランドとあの人の息子に起きた不運な病気による死別、海とシーラス君の共通点などを説明している。

「そうね………確かに見れば早そうだけど今は無いわよさすがに……見るなら家に帰らないと無いわね。アルバムは倉庫の中に入れてあるし………」

「なら俺が取ってくるよ」

 と言いながら俺はバイクのカギを取り出す。すると父さんは「良い事思いついた」なんて表情をするので俺の背筋に嫌な汗が流れ始める。

「ならこのメンバーで言って来て娘も回収すればいいんじゃないか?ソラの周辺メンバーなら後れを取っても最悪切り抜けられるだろう」

 この状況であっさりとジュリとキャシーあたりを巻き込んだように聞こえたが、苦情を入れても泥沼のように思えるので黙る事にした。

 レクターは目をキラキラと輝かせ、エアロードとシャドウバイヤは腹一杯になって事ですっかり満足顔である。

 無言と無表情で俺はその場で直立するだけの存在に落ち着く。

 あっという間に話が進んで行き、俺は空を見ながら「青いな~」と呟くだけの案山子になっている。

 ああ~面倒な事態になったな。

 こんなことになるなら俺が行くなんて言わずに夜中にこっそり行けば良かったな。

「なんでそんな悟り切った顔をしているんだ?」

 エアロードの素朴な疑問に俺は仏のような表情を浮かべながらまっすぐに答える。

「余計な事をすれば全部俺の面倒ごとになるんだなと人生の教訓を学んでいるからだよ」

「?シャドウバイヤは何か分かるのか?」

「お前同様話を聞いていなかった私が分かるわけなかろう。しかし……すごい勢いで話がまとまっていくな」

 エアロードは俺の肩に捕まり、シャドウバイヤも同じように肩に捕まるので、俺は両肩に重りでも装備しているよな感覚を覚える。

「どっちか一人には降りてほしいんだけど」

「譲れシャドウバイヤ……ここはパートナーである私の特等席だぞ」

「ここが貴様の特等席何て誰が決めた?それに先ほど契約を結んだのに特等席がどうとか決めれるわけなかろう」

「常識的に考えればパートナー背中は私の特等席だ」

「なら妥協案でリュックサックに入るというのはどうだ?」

 どうでもいいけど俺の背中を所有権を俺抜きで語らないで欲しい。


今回の敵は少し複雑に作っており、複数の敵が複数のドラマを経緯しながらラスボス登場へと繋がっていきます。今回登場したイザークは敵の一人ではあるのですが、ゲームで例えるなら中ボスのような扱いですかね?前回の反省を生かして物語を複雑に組み合わせていこうと思いますので!これからもよろしくお願いします!では!次回!

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