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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
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躊躇しない精神 2

本日一話目です!躊躇しない精神二話目になります。

戦闘回となります。

 そんな三年前の事を一瞬で思い出してしまったのは、テラに思いっきり殴られたからだった。

 緑星剣が粉々に砕かれ、衝撃でビルの壁に叩きつけられた空、意識が吹っ飛びそうになる。背中に強烈な痛みが走り、苦痛で表情を歪ませる空。


「この……ままじゃ……こっちが先に死ぬ」


 空は内心「手加減が出来る相手じゃない」という確信と共に体を起こすと、同時に緑星剣が復元していく。

 空目掛けて突っ込んでくる右拳のストレート、空の鼻先にあたりそうな攻撃をすんでの所で体を捻ることで回避する。そして、同時にテラの左足のひざ下、太もも目掛けて緑星剣で切りつける。

 身動きが取れないようにという想いで行動したが、そんな行動ですら手加減にしかならないとすぐに判断ができた。


 何故なら………斬りつけたはずの傷口が瞬く間に回復していったからだ。


「なっ!?」


 魔導機での肉体の再生は応急処置程度の傷しか回復できない。剣で斬りつけられた傷口を瞬時に回復できる肉体は、もう魔導機でどうこう出来るレベルではない。

 動けなく出来たのは一瞬で、傷がふさがると同時に襲い掛かってきた。

 殺すつもりで襲い掛からないと勝てない。

 っと、分かってはいても、体が、心が反応してくれない。


 殺すという行動にためらいを覚えている。自分がよっぽど追い詰められるかしない限り相手に対して殺意を抱くことが出来ない。


 既に武術の型を気にしているような殴り方ではなく、適当に腕を振っているだけのように見える。しかし、そんな腕を振っているだけで周囲の建築物を壊していく。


「殺すつもりで戦わないと………勝てない!だったらやるしかない!!」


 体と剣を低く構え、体のばねと魔導機による肉体と反射神経の強化を活用し、テラの暴れる両腕の攻撃を掻い潜り正面から斬りつける。

 剣を斜下からテラの右肩まで目掛けて斬りつける。

 テラが大きくのけぞるのを確認すると同時、剣を引き戻す動作の後左拳を鼻先、左胸へと叩き込む。


「うがぁ!?」

「まだまだ!!」


 今度は剣を身動きが取れなくなったテラの左肩から斜めに斬り下ろす。


「スラッシュ・クロス・2nd!」


 クロスに剣を切り裂きながら、同時に殴りつけるという直接的に意味でなずけられた技名。

 ガイノス流には大きく分けて三つの型が存在する。


 武器を使用するタイプ。武器を持たないで使用するタイプ。その両方を活用して戦うタイプ。の三つである。


 空は元々剣術は幼いころから覚えていた。

 しかし、自由過ぎる振る舞いはまともに覚えることは無く、空にとって剣道は堅苦しいものでしかなかった。

 斬るだけではなく、殴る方も覚えることが出来るガイノス流の中でも難易度の高い流派を覚えたのは、そっちの方が自分に合っていそうだと感じたからだった。

 実際、剣道と剣術では空にとって、剣術の方が性に合っていたのはあるだろう。

 ガイノス流の初歩技を完璧に、且つ三年で実戦レベルまで高めることが出来るのは、空の実力と才能のお陰だろう。

 テラは大きくのけぞるが、しかし致命傷にはならなかった。

 再び傷が治っていき、テラの肉体を大きく震わせる。


「体が……大きくなっていく!?」


 どうやら、ダメージを受けていく中で肉体が大きく成長しているようで空には勝ち目があるとは思えなかった。

 再び剣を構えなおすが、やはりどこかで心にブレーキをかけている。それゆえに踏み込めない。相手を見ながら殺すという事が出来ない空。

 障害物があれば話が別だが、目と目で合わせる殺し合いには不慣れ。

 心のどこかで勝てないかも………なんて思考がよぎるが、そんな思考が現実になることは無かった。

 テラの体が斬撃が吹き飛ばしていったからだ。

 斬撃が『斬りつける』ではなく『吹き飛ばす』という現象に驚きしかなかったが、それ以上にそれほどまでに強力な一撃を受けて生きているのかが不思議でならなかった。

 どうやら生きてはいるようで、体を起こそうとしているのが空からでもよく分かる。


「ふん!あれでも生きている……か。どうやら呪術で肉体を強化しているようだな。代償に意識を支払っていると言った所か?面白い!」


 その声には空は聞き覚えしかなく、耳に入っていったと同時に背筋が凍る思いと同時に悲鳴を上げていた。


「ギャアア!!」

「む!?その声は………空!?」


 二メートルはあるのではないかという巨漢が、窮屈そうな帝国製の軍服を着こんでおり、身の丈はあろうかという大剣を肩に乗せて現れた。

 短く切り整えられた髪はワックスを使ってもいないのに逆立っており、普段から睨みつけるような表情は空を見付けた喜びで不気味になっている。

 帝国軍アックス・ガーランド中将。元貴族の中で唯一、八百年前の貴族内紛で平民派として戦った一族の末裔である。


「嫌ぁぁ!!」

「やはり空か!?やはり私の息子になる覚悟が!?」

「決まっていないから!!絶対に嫌だぁ!!」


 熊のような身の丈に変化しているテラは憎しみと怒りで複雑な表情を浮かべ、ガーランド中将へと襲い掛かる。大剣で攻撃を受け流しながら、再び斬りつけると吹き飛ばすという両過程を同時にこなす。


「殺し買いがある奴だ………!もっと俺様を楽しませて見せろ!!」


 そんな叫び声と同時に何度も、何度も攻撃を繰り出す。そのうちテラは身動きをしなくなり、空は表情を暗く歪ませる。同時に叫ぶ。


「もう!!」

「?ああ……落ちたか」


 失望の表情をテラへと向け、空はテラの様子を遠目に伺う。

 ギリギリ生きているような状態で、いまだ肉体は回復していっているが、そんな回復が追いつかない状態でもある。


「ふん………呪術で極限まで力を高めながらでようやく空に勝てる程度か?情けない。こんな男が私と同じ元貴族だとはな」


 空は内心やっぱりという気持ちであふれかえる。


「フン。外見的な特徴からおそらく………ノース家の末裔か」


 テラ・ノース。


「ノース家ですね」


 そんな事を言いながら現れた人物はガーランド中将と同じく中将クラスである『フアラ・サクト』である。

 長めの髪を縛ることも無く、伸ばしっぱなしになっており、ガーランドとは全くの真逆のイメージを持てる同じ軍服、腰にはレイピアを装着しながら姿を現す。


「随分………警戒しているんですね」


 中将クラスが二人……いや三人がこの場に来ている。

 サクト中将の後ろからアベルが姿を現したからだ。


「空無事だったか?」


 アベルの後ろに隠れる空を手に入れようとアベルに近づくガーランド中将、それを止めようとサクトが間に割って入った。


「止めなさい。空君。一旦帰りなさい。この場は私達に任せてくれる?悪いようにはしないわ」


 空が立ち去ったのち、大きな戦闘音が聞こえてきたことを空は不安に思いながらも、自分のふがいなさに歯噛みしていた。

 役に立てなかった。

 いや、そうではない。勝とうと思えば勝てただろう。しかし、いまだ殺すという動作になれていない。

 心のブレーキ。

 躊躇しない精神。

 才能がある空に欠けているモノであり、手に入れなければならないモノでもある。

 実際ガイノス流の師範代からも同じことを言われた。


「空。君に欠けているのは躊躇しない精神だ。ガイノス流は実戦で磨かれる流派でもある。君は、実践を重ねなくとも技を磨くことが出来るが、それでは不十分だろう。実際に殺し合いをしてみれば痛いほど分かる」


 それ故に空はガイノス流初伝しかもらえていない。

 戦闘音が止んが頃には空は市内電車に乗って自宅へと変えていった後であった。


どうだったでしょうか?ガイノスエンパイア編の前半はテラが起こす事件となり、後半から始まるクーデターの前哨戦になります。この辺から事件が進んで行きます。

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