帰郷 6
多分帰郷の終わりになると思います。多分……おそらくは。
俺達がホテルに辿り着いた時にはすっかりお昼を迎えており、母さんの手料理を待つ間自分達で食堂の準備をしなくてはいけない。
基本自分達で出来ることはなるべく自分達でするというのが海外研修中の士官学生のあるべく姿らしい。
俺達が数日滞在予定のホテルは各国要人も同じように泊まる為に東京などでも豪華な分類に入るような大きなホテル、俺がここにいたころには無かったホテルなので、この三年間にできたのだろう。
駅前もだいぶ綺麗になっており、このホテルと言い色々な店が出来ていて多くの人で本来は溢れかえっているのだろう。
この街は港街でも有名だが、奥に行けば小さな集落がありその集落こそが俺の故郷でもある。
この辺までは俺にとっても遊び場なのでよく来た場所だが、よく見ると細かい道が出来ていたり、見知った店が閉まっていたりと結構年月の変化が分かる。
大きなホテルの中に入る時、外ではガイノス帝国などの要人は外で用意させた来るまでどこかへと移動して行く。
父さんはすっかり母さんと話し込んでおり、母さんは昼食を作る為食堂内で食事作りに精を出しており、女子たちもその手伝いをしているようなありようである。
その内母さんは父さんが邪魔になったのだろう。
「外で待っていなさい」
と厳しく命令されて外へと追い出していたりする。
食堂に食事が並んだのはお昼の一時でそのままそれぞれの部屋に向かう事になったのだが、俺としては異議を申し立てたいところである。
なんで俺はまたレクターと同じ部屋なんだよ!?
不満を爆発させるが俺の意見が取り入れられることは無く、俺達は再び同じ部屋へと追いやられた。
レクターが部屋に入ると一番いい部屋の1つを与えられただけあって室内はとても広く豪華にできている。こんな部屋を数日泊めさせてくれるというだけで結構いい話でもある。
俺が部屋に入るとそのままドアを素早く占めるが、俺のすぐ隣を一筋の風が通り過ぎ、俺はようやく違和感の正体に一つの答えに至った。
窓を開けようとするレクターを呼び止める。
「レクター。窓を開けないでくれ」
風が勝手な行動をする前に俺はそのまま各部屋へのドアが閉じているのを確認すると俺としてはそのまま室内に真剣な視線を向け、風の揺らぎと言うべき『異常』を見つけ出しその前へと立ち睨む。
「いい加減姿を現したらどうだ?風竜エアロード」
「フム。やはりバレたか………いつからだ?いつ私が側にいるとわかった?」
風竜エアロードは手前のベットの上に小さな体を目一杯広げながら俺の視線を合わせる。
レクターも別段驚くようなことは無く、エアロードの尻尾を触ろうとゆっくり近づいていき、エアロードはそれを感じ取り尻尾でレクターを弄んでいる。
「おかしな視線自体は三年前から良く感じていたよ。でももしかしたらという感覚を得たのは列車の中、はっきり理解できたのはさっき。三年前からずっと監視していたのか?」
「ずっとでは無いな、時には離れていた時もある。そういう意味では決して側にいるわけでは無い。しかし、君達の戦いはおおよそ見ているし聞いてもいる」
レクターを尻尾だけで撃退し、両頬を尻尾で往復ビンタをした張本人であるエアロードは室内を見回す。
「フム……豪華な部屋だな。先ほどの料理は美味しかったし……満足だ。しかし……」
「?何か気になる事があるのか?」
「別によい。それよりソラ……お前に話と言うよりは………相談がある」
満を持すように黙り、俺は風竜の真剣な視線に自らの視線を真正面から受け取る。
「私と契約を結んでくれないか?」
「良いけど?………もしかしてそれが話?」
俺があっさりと承諾するのでレクターとエアロードは唖然とするような表情をしている。俺はスマフォのカメラで二人の素っ頓狂な表情を写真で収め、俺は二人の精神が現実に戻ってくるのを待つとようやく現実世界とリンクしてくれたらしく、エアロードは小さな声で「良いのか?」と震えるように尋ねてくるので、「別にいいけど」なんて言いながらあっさり返す。
「機竜から前にあった時に「風竜の願いをなるべく聞いてやって欲しい」て聞かされているし、俺としてはそんなお願いだとは思わなかったけどね。でも、前に皇帝から契約の話を聞いていたし、俺は困ることは無いから別にいいかなって」
「良いね!俺はいつでもエアロードに会えるってことだよね?」
「俺が許可する限りはな」
レクターのふざけるような声に俺は最大限の譲歩の声で返してやる。勿論笑顔のオプション付きである。
俺としてはそんな内容で良いのかどうかの方が気になる所である。
俺は風竜に右手を伸ばし、風竜はニヤリと笑いながら俺に右手を伸ばす。
お互いの掌と掌をピッタリと重ね合い、周囲に特別な風が舞う。
俺とエアロードに見えない繋がりが出来るような、繋がる様な感覚を覚えると俺とエアロードの右手首に緑色の鎖を象ったような痣が浮かび上がる。
「これで契約完了だな。今後ともよろしく頼むぞ……ソラ」
「勿論。その代り今回の事件解決に協力してもらう」
エアロードの尻尾を触ろうと努力をするレクターをお互いに無視する形で話を進める。
「エアロードに話なんだけど……」
「『呪詛の鐘』の場所なら私にも分からんぞ。分かったら苦労はせんしな」
「だよな………分かってはいたさ」
部屋に荷物を開け、監視カメラや盗聴器の類が無い事を確認した後、エアロードは冷蔵庫の中身をレクターと共に漁り始め、俺はそんなエアロードに語り掛けていたのだが、返答はあっさりしたものだった。
すると、ドアをノックする音が聞こえてきて俺は急いでその声の主へを迎え入れる為、ゆっくりドアを開ける。
呑気そうな声とそんな声とは裏腹に勘の鋭さを見せる俺の母親がそこにはお菓子を持って現れた。
お菓子………ぼた餅ときな粉餅を作って来たのだろうか?
こんな短時間に?
「三人の為に造って来たわよ~」
呑気そうな声とは別に俺は気になる単語を菅さんから聞いた気になる。この人………『三人』って言った?
「待ってくれ!母さんあの『ドラゴン』見て何とも思わないのか?」
「?ソラが飼っているんじゃないの?母さんそう思ったけど?」
この人は……!相も変わらずの勘の良さだな。俺より早く一瞬で気が付いたのか?
エアロードは菓子をじっと見つめ、レクターも見たことも無いお菓子を前にエアロード同様涎を垂らしている。
しかし、エアロードは更にその下、母さんの影を凝視する。
「お前……そこで何をしているんだ?黒竜シャドウバイヤ」
陰から形を成して浮かび上がっているように見えてくると、俺達の目の前でエアロード同様の小さな姿ではあるが羽の生えた竜の姿へと変わっていき、そのまま多少の丸っこさがあるが確かに竜に見える存在へと変わっていく。
俺が会ったことが無い竜なのでそれがそうなのか分からないが、皇帝陛下が言っていたシャドウバイヤなのだろう。
全身は真っ黒で丸みを帯びたデザインと目元はエアロードとは違って愛嬌を感じる。
俺とレクターが唖然としているとシャドウバイヤとエアロードは睨み合いを続けているように見え、母さんはその間にお持ちの入ったお皿を置く。
「ほら!そんな風に美味しそうに見なくてもいいからね?沢山あるから遠慮せずに食べてね」
そう言うと母さんの作ったぼた餅ときな粉餅に遠慮なく手を伸ばす二匹の竜がいた。
本当に遠慮のない食べっぷりにそれを見ているだけでこっちの腹まですいてくる。
すると更にレクターまでがその食事に参加していくのを俺は哀れな目で見ていた。
「なんか………飯に食いつく豚みたいだな」
酷い例えを口にするがどうやら聞こえてなかったらしく三人は必死で食べている。母さんはそれを微笑みながら見ているので俺は………母さんの後ろで母さんの背中をジッと見ている父さんの姿を更に哀れな目で見ていた。
指を銜えながら母さんの背中を見ている姿を見て正直内心、「話しかければいいのに」なんて思ってしまう俺だった。
どうでしたか?今回は久しい人物達との再会とギャグ回となります。今回登場したメンバーと幼馴染や妹と共に事件に立ち向かっていきますので!最初という事でギャグ要素多めにしていき、少しずつではありますがシリアスにしていきますのでよろしくお願いします。次の話で敵側の支店でも描きたいと思っています。では!次回!




