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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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帰郷 3

今回の重要な要素の一つとして空の幼馴染サイドのお話を詳しくしていくつもりです。特に『海』と『万理』の二人はそれの人間関係や人間性を語る上で必要なキャラクターです。そのへんを踏まえたうえでこれからお楽しみください。

 帰郷と言う言葉を考えさせられる日が訪れようとは思わなかった。だって俺にとっては帝国こそが故郷と言ってもいい場所になっている。

 あのクーデターの後、俺は帝国政府と取引をして、袴着姓からウルベクト姓へと変えたとき俺はある意味この帝国が故郷になった。

 その上で俺は今日本に行くことが俺が魔導協会や帝国政府からの仕事になる。

 俺が『呪詛の鐘』を破壊しなければ被害は拡大する可能性が高いというのが理由だったりする。

 この複雑な心境はどうやって解決されるのだろう。

 行けば解決されるのだろうか?

 分からない。

 皇帝の複雑な話も作戦の話も俺にはどこか他人事のように聞こえた。

 ノアズアークや日本政府の目的、きっとその裏にある他国の目的だって俺にはどこか他人事のように思える。

 なあ、堆虎。俺………どうすればいいのか?どうすればこの複雑な心を解決する手段が見つかるんだと思う?

 きっと堆虎は言うと思う。笑って、まるでそれが当たり前のように。

「心のままに進めばいいんだよ。空のやりたいように進むだけ。それだけが答えだよ」

 俺の心のままに進むことはきっと難しい。だって、俺は未来を不安に思うから。明日は見えないから、明日は今日より悪くなるかもしれない、明日は今日より良くなるかもしれない。だから……俺達はきっと選んで前に進むのだろう。

 困惑と混沌が混じって思惑へと変わっていく今回の異世界交渉はきっとそれこそ未知の世界への始まりなんだろう。

 向こうだってどうなる変わらないから先手を打つこともできない。

 だからこそ、ある程度の知識を持つこちら側が先手を打ち、出来るだけこっち側が有利になるように動きたい。

 俺に行動が原因で警察や自衛隊と戦う事態になるかもしれない。俺としては出来るだけ回避したい。

 最悪俺はどういう立場で戦えばいいのだろう。なんて考えた所で俺の役目や所属なんてあの頃から何も変わらない。

「俺はガイノス帝国立士官学校高等部のソラ・ウルベクトだ」

 それが俺の役目で俺の使命だ。


 帝城を出るころはすっかり夜も老けていき、街頭や街の明かりが帝都中を明るく照らす。帝都では眠るという事があまりない。

 それはそれでいいんだ。

 こういう風景は俺の田舎では味わえない光景だし、俺はすっかり慣れてしまった。

 風が吹くとまだ肌寒く感じるのは未だに帝都が春の陽気さや冬の残痕から抜け出せずにいるからだとよく分かる。

 特に帝城前広場は夜中になっているにもかかわらず多くの人で賑わいを見せていて、俺の視界いっぱいに広がる人混みを避けて帰らなくてはいけないのかと思うと少しだけうんざりする。

 トラムの走る音と汽笛に似せた音、車の走る音とまばゆい光、ここからでも東区の高い建物や、南区の高層マンションが見えてくるのでこの帝都がどれだけ人で賑わっているのかを物語る。

 この帝都はこの世界で一番人が集まっている場所。

 最大人口を誇り、白と青で彩られた古い町並みと、高層ビルと都市高速道路や一風変わった建物で形どられた新市街地、それを分ける旧壁とその外に作られた新壁と東西南北に分かれた地区はこの街を説明する上では外すことは出来ない。

 昔は治安が悪いという理由で西区の開発は見送られてきたが、クーデター以降西区の改革にも力を入れ始めており、一か月と半月の間に高層ビルの建築話が多数立ち上がっており、実際ここからでも建築現場がうっすらとだが見えて………こない。

 さすがに無理か………まあ、新市街地のビルはほんの微かに見えるだけだし、俺の目もいいわけじゃない。

 しかし、東区のビル群を掻い潜って飛び回って戦った記憶は新しい。

 もう二度とあんな戦いをしたいとは思わないけど。

 ここから家まではそんなに時間が掛かる場所ではないので正直どこか寄り道してもいいんだけど、先ほどレクターとジュリと連絡を取ったら海外研修の為に準備をするから出発まで真直ぐ家に帰ると言っていたし、父さんは海外研修に参加する上で手続きをするからと軍本部に詰めており明日まで帰ってこない。

 出立は明後日、俺もそれまでに準備を終えなくてはいけないが、俺にはそこまで持っていくようなことが無いので困る。

 今日の夕食でもどこか外で食べようかななんて思いながら携帯を弄っているとまた風が吹いた。

 この近くにガイノス帝国伝統料理を味わえるレストランを見付けたが、この時間である絶対に人が多いに決まっているので却下。

 なんて言い出すとほとんどのレストランや喫茶店などの店何て全滅してしまう。そう考えた所で俺は北の近郊都市跡にある集合墓地へと向かおうと決め、同時に北区の中央駅で適当な弁当と飲み物でも買うと計画を立てながら俺は自分のバイクを取りに一度家に帰る事にした。


 バイクに乗って東区を経過する形で北区の帝城池前のT字の交差点に辿り着き、俺はまずは中央駅前まで向かう形でバイクを走らせる。

 追いかけられる心配をしないで済むので俺は安心して中央駅のある旧壁に旧門前まであっという間にたどり着いた。

 さすがに北区と言った所だろう。

 この辺は新市街地も旧市街地も観光名所が多く、旧貴族や金持ちが住んでいる場所でもあるので人の賑わいが他のとは段違いである。

 俺は北区の駅前に立ち尽くし、久しく見たその由緒ある建物を見上げる。

 東西南北の駅はそれぞれ色が振り分けられており、南区は白、東区は緑などの自然色を強めに、西区はオレンジの明るめの色を、北区は青の基本色としたカラーリングをしており、それぞれ色に分かれたレンガで作られている。

 中央駅は旧門に隔てる形で作られており、大きな広場と多数のお店で常に賑わう。

 上を見上げると区画間列車がかすかに見え、地下への道を入れば地下鉄に行くことが出来る。

 俺はそのまま駅の中へと入っていき、駅弁売り場まで歩いていくと様々な駅弁を眺めていく。

 サンドイッチから凝ったデザインのおかずの入った豪華なお弁当まである。中にはハンバーガーなどまで存在するが、正直昼食を抜いてしまった為お腹がとてもすいている。

 お弁当1つで足りないかもしれないなんて考え、俺はおかずが大量に入っているお弁当とハンバーガー食べ比べセットを購入し、簡単なジュースを一緒の袋に入れてバイクまで戻っていった。

 多少鼻歌交じりに戻っていくと俺の視界にお菓子売り場が見えてくるので俺は足を完全に止めてしまった。

 墓参りに行くのならお菓子ぐらい買っていく方が良いのかもしれない。

 なんて思いながらお菓子も購入してバイク前まで戻ろうと駅前広場に辿り着いたところで俺の足は完全に止まってしまう。

 なんで………なんでガーランドがいるんだ?軍本部で話し合いをしているんじゃないのか!?

 車を呼んで帝都の外目指して移動しているように見える。

 行き先が被らないようにと祈りながら俺はバイクを走らせる。

 そして、結論を言えば………行き先は待ったの一緒だったりする。

 クソ!あの人と一緒に行動したくないので俺はあの人にばれない様な位置にバイクを止め、隠れながら進んであの人の後方の木の影に隠れてしまう。

 ガーランドは手持ちから取り出したジュースを紙コップに注ぎながらどっしり座り込み墓をジッと見つめる。

「アベルに子供が出来るとは思わなかったが、お前の代わりが欲しいと養子を何度となく頼んだが………うまくいかないものだな」

 養子……そう言えば俺の時もやけに積極的に話を持ってきていたっけか?そう言えば女子ばかり養子がくるって父さんから聞いたことがあるような気がするな。

 さっきの話を聞く限りではどうもガーランドは男の養子が欲しかったみたいだし………その理由があのお墓って事になるのか?

 ここからだとお墓の名前が見えない。

 しかし、下手に顔を突き出せばバレるので俺はここから動けずにいる。

「病でお前を亡くし、アベルの家族が死んだと聞いた時は報いなのかもしれないと本気で思ったものだが、アベルが昔に比べて随分いい表情をするようになったよ。お前の代わりがいれば………いや、いないだろうな」

 俺は居づらくなってしまい立ち去るべきか、なんて悩んでいると時間があっという間に去っていく。

 病で亡くなったという話を聞いて俺の心のどこかに引っかかるものを感じた。


くわしい後書きは次回にします!では!二時間後に!

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