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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ドラゴンズ・ブリゲード
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魔導都市 アルカミスタ 9

魔導都市編最終話前編です。空がどうやってアールグレイの元へとたどり着いたのか分かるお話になります。

 時間は少し戻り、ジャック・アールグレイがビルから逆さの街へと移動した直後に戻る。

 地面に着地するとゆっくり上へと上がっていく台座を睨みつける事しかできず。後ろから迫ってくるカルト教団員のシールド攻撃を回避し、そのまま右脇目掛けて斜上に切り上げる。

 後ろではレクターがもう一人のカルト教団員を殴り飛ばしているところだった。

 後悔しても始まらない。

 別の移動手段を探し出す必要があるが、ここ以外に逆さの街へと至る手段があるとは思えない。

 俺達は一度ビルから出ると右側から走ってくる大軍のカルト教団員が迫っている事に気が付き、俺達は左側に走り出そうとする中、左側方向より学生の一人が走って来た。

 俺には誰なのか全く分からなかったが、レクターとジュリが分かったらしくその人物へ声をかける。

「「レイハイム!」」

 あれがレイハイムなのかと思うぐらい印象にない。

 無表情に無感情という仮面をかぶっているのではと思われるほどに『無』が前面に出ているような印象だった。

 薄茶色の凛々しい少年事『レイハイム・A・アーノルド』だったはずだ。

 と言うより授業の時も基本は端っこの席で一人でいることが多く、友人がいるという話も、誰かと話しているという場面を見たという話も聞いたことも無い。

 一説によると、誰かから話しかけても『無視』を続けるどころか睨んでくるらしい。

「軍のサクト中将がお前達を読んでいる。こっちにこい!」

 俺達はレイハイムについて行く形で曲がりくねった道をひたすら走っていく。

 後ろからカルト教団員から素早く逃げていく為、決して後ろは振り返らない様に走り去っていく。

 後ろから風の弾丸が錬成されるような音が聞えてきたので、俺は後ろをふと振り返るとそこには十五の薄い弾丸がまっすぐとこちらを捉えている。

「右の路地に飛べ!!」

 俺の怒号の指示を考える暇もなくほぼ同時に俺達は路地へと身を飛ばす。俺はジュリを庇いながら路地へと飛び、そのままジュリの体を起こしながら俺達はメインストリートへと走っていく。

 カルト教団員も同じようについてくる。その動き方がまるでロボットの進行のような不気味さを感じさせる。

 人間味を感じないのだ。

 そして、同じことの繰り返しで風の弾丸をこちらに向けるのだが、前方には一般市民の軍勢や軍の部隊が衝突を繰り返している。

 俺は視界に消火器が一瞬だけ見えた気がした。俺は急いでそれに近づくとそれは消火器の入った小さな箱で、外に備え付けられている非常用の消火器だった。

 俺は箱から消火器を取り出してそのままカルト教団の方へと投げつける。

 それと同時にレイハイムが『ガンソード』を取り出して、俺の投げた消火器へと照準を向け、消火器の丁度真ん中を撃ち抜く。

 周囲を消火器の粉が蔓延し、消火器の破片も襲い掛かる。俺達は急いで路地裏から出ていき、カルト教団が俺達の姿を見失っている間に逃げ出すことに成功した。

 俺達は民衆と軍の衝突場所から大きく移動し、逆さの街への移動用のビルから一キロほど移動したところで息を整え改めて目的地へと走り出す。

 時間が無いんだ。

 こうしている間もジャック・アールグレイは目的を果たしているはずなのだ。

 なんて考えていると走って五分ほどの場所に俺達は辿り着いた。

 特に高いビルだったように見えるが、その下にサクトさんが俺達を手招きしており、俺達が近づいていくとビルの中に入る様にとジェスチャーで指示をくれる。

「話を聞いているわ。屋上へ行きなさい。逆さの街への侵入方法を教えてくれるわ。私達はここで敵を食い止める必要があるから」

「侵入方法って!?」

「行けば分かるから」

 それだけ言うと俺達は時間が無いという事もあり、俺達は中に備え付けられているエレベーターで素早く屋上へと移動する。

 屋上へのドアを蹴っ飛ばすような勢いで出ていくと、大きなバイクと大きなフックショットを一体化させたようなシルエットの機械が逆さの街へと照準を付けている。

 その前には一席第二位だと話していた女性が同じフード姿で待ち構えており、俺達はその機械の前に辿り着く。

「本来は機竜様の体は見えないバリアが張られていて接近は出来ないが、内部の防衛システムを切断すれば可能になる。恐らくカルト教団の目的は内部に入り込み機竜様を街中に落とすことだろう。内部への侵入など簡単には出来ないのだが、今は残念なことにジャック・アールグレイは侵入されている。カルト教団員が乗り込むのも時間の問題だ。実際少ないが奇妙な乗り物が飛び交っている。この機械は逆さの街へと杭を打ち込み、強化ワイヤーで一気に接近する。ブースターを使って左右に移動して攻撃を回避しながら接近すると言い。前方の座席で乗り物を操作し、後方の座席の人間が攻撃担当だ。乗り物は二つしか用意できなかった。君達四人で乗り込んでもらう」

 俺達四人という事はレイハイムも数えられているという事だ。これにはレイハイムも異議を申し立てる。

「待ってください。自分の役目は彼らをここに連れていくことですが?」

「では今からやってくるカルト教団員の大群の相手をするかね?この機械が射出するのに時間が掛かり、君達が安全に接近するためには後方から援護も必要だ。敵と戦いながらも君達への援護を君がしたいのなら別だが?」

 言い訳の余地を全く与えない言い分にレイハイムは黙るしかない。

 こうなると役割を分ける必要があるが、これは考える必要はない。俺とレクターが前方、ジュリとレイハイムが後方でいいだろう。

 俺の後ろにジュリが、レクターの後ろにレイハイムが乗り込み、俺とレクターが操作方法を覚えている間、屋上へのドアが激しい音をたてて壊れてしまう。

「ここは私が相手をしましょう。あなた達は速くあの場所へとたどり着きなさい」

 フードの奥から重みを感じるような声で「舞え!盾たちよ!」という声で周囲に透明の盾が浮いているように見えてしまうが、今はそんな声を気にしている場合では無い。俺達が操縦方法を頭の中に叩き込んでいる間に打ち込む人達は打ち込みを完了させ、俺達がレバーを引けばこの機械は一気に逆さの街へと向かう事だろう。

 俺とレクターはお互いに出発するタイミングを計り、後方で戦闘が激化している事を確認しつつもレバーを思いっきり引く。

 体中にかかるGに耐えながら俺達の体が思いっきり逆さの街へとたどり着こうと引っ張られている。

 すると周囲にも同じような機体が飛び回っているのが見て取れ、レイハイムとジュリが左右にそれぞれ移動する機体の殆どがカルト教団員だという事に気が付くと、俺達はなるべく近づかないように距離感を取りながら移動していると、カルト教団員から風の弾丸が唐突に攻撃を仕掛けてくる。

 俺とレクターはワイヤーを引っ張る速度を速め、攻撃を回避しようと奮闘する。するとレイハイムがガンソードで敵のワイヤーを切っていき、ジュリもその姿を見ると同じようにワイヤーを切っていく。

 ここで手加減しているとこちらが死んでしまう。俺とレクターは攻撃を回避する為にワイヤーの位置と敵の攻撃の射線上が重ならないように神経を使いながら操縦をしていくと、俺達の視界に逆さの街が近づいていると俺達は機体を上方へと素早く移動し、そのまま機体そ底が削られるような音と共に俺達は逆さの街へと着陸した。

 場所は右側の緊急システムルームと呼ばれている場所で、この逆さの街のメインシステムが緊急停止状態に陥った場合の最終手段システムで、各区画毎に一つずつ備え付けられている。

 とにかくここでメインシステムの一部を回復するしかない。

 俺達は素早く緊急システムを起動させるためジュリに操作を一旦任せ、振り返るとカルト教団員が次々と乗り込んできており、ジュリ以外の三人はジュリを守る為各々の武器を手に防衛線を張る。

 カルト教団員の中に奇妙な籠手を着けている者が見えた。

 籠手にはどうやら仮想デスクトップが搭載されており、キーボードで何かを打ち込んでいるのが俺の場所から見えた。

 俺はレクターとレイハイムにジェスチャーで「突っ込む。援護頼む」と伝え、二人は黙って頷くとレクターが真っ先に敵を左側に引き寄せ、俺が特殊な籠手を着けたカルト教団員へとかけていき、残りのメンバーが二人立ち塞がろうとするがそれをレイハイムが銃撃で妨害する。

 さすがにここまで迫ってくるとは思わなかったのだろう。

 何もできずカルト教団員は身を守るすべもなく、俺は籠手の接続部分だけを綺麗に切り取る為に全神経を集中させる。

 薄すぎて重なった髪の中から一枚の紙を切るような技術力が求められ、俺は自分がそんなことが出来るのかどうかなんて疑問が常に頭の中で行ったり来たりを繰り返す。

 俺はそんな思考を振り切り、素早くかつ正確に接続部分だけを切り取った。

 籠手が地面に落ち、俺はそれを拾おうとするカルト教団員のこめかみ目掛けて蹴りつける。

 吹っ飛んでしまうカルト教団員を無視して籠手を拾う。

「遠隔操作用の機械か?でも何を………そうか!これで他のカルト教団員を操作しているのか。なら……」

 籠手を操作するとそのうちに『メインシステム』の項目内に、電源の項目を見つけ出し俺はそれをオフにすると他のカルト教団員の身動きが完全に止まる。

「一部のメインシステムを起動できたけど、やっぱり全部は無理みたい。でも、ジャック・アールグレイの居場所までは分からない」

「いや、分かる。ジャック・アールグレイは呪術管理をしている部屋を目指しているはずだ。ここから操作できるか?」

 ジュリは真直ぐ二つある橋の内中心へと真直ぐ向かう端へと指を指し、「あの橋を渡っていけばたどり着けると思う」と告げた言葉を俺は信じることにした。

 しかし、ここに敵が集まってくる状況で緊急システムルームをほったらかしにしていたら、間違いなく再び占拠され、最悪何をされるか分からない。

 俺は彼らの方へと視線を向けると三人は黙って頷く。

 俺にはそれだけで十分だった。そのまま力一杯俺は走り去っていく。


そのまま後編に続くのですが、予想以上に詰めて書きました。というのも今回の前編は本来予定していた内容より大幅に書き足してしまいました。なのでバランスを取って後編は多少詰めています。では次へ!

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