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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ドラゴンズ・ブリゲード
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魔導都市 アルカミスタ 7

いよいよアルカミスタ後半戦。今回のエピソードは前半が空、次の後半がジャック・アールグレイサイドのエピソードになります。ではまず空サイドのエピソードです。

 俺とレクターが先ほどの一個上の階でジュースを飲みながらゆっくりしていると、エスカレーターから慌てたような勢いでジュリが駆け上って来た。

 俺は「走って上がったら危ないぞ」ぐらいは言うべきだったのかもしれない。

 そう思って口を開きかけたときだった。そんな俺の言葉より早くジュリは信じられない言葉を吐き出した。

「エリーちゃんとマリアさんが誘拐されちゃった!!」

 俺とレクターは信じられない事を聞いたと直ぐに腰を浮かせ、俺は手すりに身を載せ下の階を覗き込む。もちろんそこに二人はいない。

「勝手にどこかに移動したわけじゃなくて?」

「うん!連れ去られるのを見たって人がいたの!その人は既に通報したって言ってたけど……」

「ジュリはどこにいたんだ?一緒にいたわけじゃないのか?」

「トイレにいたの。私がトイレに行きたいって言って、トイレにいる間に誘拐されたみたいで………ごめんなさい」

「ジュリの所為じゃない」

 俺が咄嗟に声を上げたことに驚いたのかもしれない。しかし、問題は何故ジュリを連れていかなかったのかという事だ。

 レクターとジュリだって思うはずだ。

 俺が犯人の立場ならジュリを誘拐する。

 運動神経が鈍く、運動が苦手のジュリは誘拐する分ならジュリだけで十分のはずだ。

 もし二人を誘拐することに理由があるのならそれはあの二人でなくてはいけなかったか、もしくはジュリが邪魔だったか、もしくはその両方という理由だ。

 一つ目は分からないが、二つ目には俺は心当たりがある。

 誘拐なんて悪そうなことを如何にも実行しそうで、ジュリを避ける理由がある人物。

 ジャック・アールグレイをジュリは見ているし、悪行は知っている。もし、その場で見ていたら周囲に危険を伝えるだろうし、ジュリは頭が良いので俺達では思いつかない様な方法を実行する事だろう。そう考えればジュリは最も避けたい対象のはずだ。

 最もあの男が実行犯の一人と言うだけで、必ず共犯者がいたはずだ。

 ジャック・アールグレイが犯人だった場合、あいつは俺がここに入っていくのを見ていたはずだ。だから俺が二人から大きく引きな離すはずだ。

 俺が分かるようにあいつだってきっとわかると思う。俺の存在が、俺が近くにいると。

 もしかしたら遠くから見ていたのかもしれない。

 俺があいつの立場なら、俺の追跡には別の人間を利用し、ジュリとレクター捜索に走ったはずだ。

「二手に分かれたはずだ。俺を追跡する人間とレクターとジュリを追跡した人間だ」

「なんで?俺達を追う理由は?」

「お前達が邪魔する可能性が高いからだ。奴からすればあの時の事件は俺だけが不確定要素だったわけじゃない。二人だって不確定要素だった。警戒対象に入れていてもおかしくは無い。だからこそ俺達三人を二人から排除したんだ」

「私達を排除してエリーちゃん達を誘拐した理由はエリーちゃんの方じゃなくてマリアさんの可能性が高いよね。マリアちゅんは魔導協会関係者だし、勿論エリーちゃんの家に身代金目的と言う話もあり得るけど、ここが魔導都市という事を考慮すればマリアちゃんの方が目的理由かも」

「空どうすんの?二人を追おうにもどこにいるのか……」

「いや………分かる!逆さの街だ!この街で奴が危険を冒してでも侵入するほどの場所はあそこしかない」

「待って空君!なら今頃外のデモ隊は今頃暴動になっているんじゃ!?」

「ああ。可能性は高い。この街にはガーランド達がやってきている。デモ隊を押し込むのに軍隊まで来ているんだ。俺がジャック・アールグレイならカルト教団なりを利用してでもデモを深刻化させるはずだ。多分だが、カルト教団と手を組んでカルト教団の魔導協会への攻撃に協力する代わりにデモの過激化を頼み込んだんだと思う。今に外の様子が分かるさ」

 俺達は急いで建物の外へと出行く。

 すると予測通りデモは暴動へと変貌し、デモ隊と軍隊とカルト教団とで都市部のあちらこちらで交戦状態が始まっている。

「酷いな。この状態じゃまともにあのビルまでたどり着けないぞ。この中を突っ切ることが出来るかどうか………」

 しかし、ここを突っ切らないと目的地までたどり着けない。相手より早くあのビルまで辿り着かなければ手遅れになる。

 俺とレクターが前方の人達をかき分けながら突き進む。すると、本来であれば横断に一分もかからない距離を五分かけた。

 ビルの間を嗅ぎ分けながら進んで行くとレクターが後ろから話しかけてきた。

「なあ。なんで身代金目的の可能性が低いと思うんだ?俺だったらエリーやマリアの親なり組織なりに連絡すればいいじゃない」

「どうやって金を受け取るんだ?」

「振込?どこかで受け取ってもいいけど」

「どっちも無理だ。振り込みは足が付く。口座を調べられるデメリットがある。大体誘拐等で身代金を要求する場合は大体が直接の受け取りなど足が付きにくい方法を選ぶ」

「だったらそっちでもいいじゃない」

「今はそれが出来ないんだ。今の状況を考えてみろ、デモ隊と軍隊とカルト教団があちらこちらで交戦状態なんだぞ。あらゆる建物の中も既に安全じゃない。こんな状態でどうやって身代金の取引をするんだ。したくてもできないんだよ。それに、身代金程度をジャック・アールグレイが目的にすると思うか?俺だったら絶対にしない」

 俺がジャック・アールグレイの立場ならそんな危険な目を選んで金を手に入れるならもっと大きなことを選ぶはずだ。

「あいつはそんなチマチマした金を手に入れるような小さな人間じゃない。湖畔の街の時だってあいつは人身売買や臓器売買などを高値で売り飛ばしながらも、人体実験を行おうとする違法組織からの依頼も受けていた。そうやって奴は金を周囲から集められるような状況を選んだ。そんな奴が身代金なんて選ぶとは思えない」

 危険を冒しながらも最大の利益を得る。その為なら命だって駆けの対象にし、それでも生き残るための手をしっかり打つ。

 だから奴はどれだけの悪事を繰り返しながらも生き残り、捕まることなく生き続けている。

 決して自分が表舞台には立たず、裏で表で踊る者達を操り、それで金を四方八方から搾り取るんだ。

 奴は役者になろうとは思わない。奴は舞台を整え、役者に指示を出し、観客からは喝さいを一切得ない場所で微笑むプロデューサーなんだ。

 だから奴は俺を嫌う。

 舞台の上で踊る人間ではなく、舞台の奥に入ってくる人間だからだ。

「奴はプロデューサー、俺はそのプロデューサーに文句を言う部外者なんだろうな。だから奴から言うと一番嫌うんだろう」

「自分の領域に入ってくる人間が嫌いなんだろうね。というより、彼からすれば初めて自分の領域まで突き進んできた人間は初めてだった。多分今まで自分の事を知ってはいても、攻撃を仕掛けてくるような、邪魔をしてきた人間は初めての事だったから、彼は許せなかった」

 その行動は周囲への攻撃という形を取られた。

 目の前にやっとたどり着いたこの街で一番大きなビル。逆さの街への唯一の方法。

 俺達は逆さの街への唯一のビルへとドアを壊すような勢いで中へと入っていくと、中心の台座が動き出した瞬間だった。

 俺の視界にジャック・アールグレイが一人、マリアとエリーをロープで縛りつけ、動き出そうとする台座に走っていくが、目の前に覆面を付けた人間達が二人係で邪魔をしてきた。

 俺は右の黒いフードにシールドで俺へと突っ込んでいき、俺はそれを剣で受け止めながらも男をそのまま左へと受け流しジャック・アールグレイへと走っていく。

 レクターの方はナックルで銃撃からジュリへと直撃を避けながら戦い、俺はジュリの安全を確認すると俺はそのまま台座まで走っていく。

「遅かったな。君ならもう少したどり着けるのが速いと踏んだんだが………私の見込み違いだったかな?」

「ジャック!!!アールグレイィ!!!!」

 俺の叫びをまるで心地よい気持ちを感じるような微笑みで奴の乗る台座はゆっくりと地面から離れていく。俺は跳躍し何とか手を伸ばすが、俺の手はギリギリで届かず体は視線は確かに見下ろすジャック・アールグレイの方へと向いていた。

 クソ。間に合わなかった。

 そうい思考のまま俺は落下していった。


どうだったでしょうか?次はそのままジャック・アールグレイサイドのエピソードになります。

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