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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ドラゴンズ・ブリゲード
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魔導都市 アルカミスタ 2

二話目です!前回の話を少し引きずっています。

 再び甲板。

 俺達が戻って来た事に驚いている三人だが、俺の後ろからマリアさんが現れると納得したような表情に変わり、その表情は変わったイースさんを前に驚きの表情に変わる。

 ガーランドですら表情を驚きに変え、サクトさんは大胆な衣装を着るイースさんの体を下から上に眺め、義父さんは「やれやれ」と言いながら半分呆れかえっている。

 そして、三人は全く同じ言葉を呟く。

「「「デリアだな(ね)」」」

 俺も内心納得しながら小さな声で「ああ」と呟いてしまった。確かに、あの人のやりそうな感じではある。

「私が少しぐらいイメージを変えたいと言って、皆さんに会うのも一年ぶりですし、多少は大胆な格好をしようとして着ていく服に悩んでいたのですが、デリアが……「これが似合っているわよ!」と豪語するので」

 まあ、似合っているかいないかでいうと多少はと思うが、しかし同時に少々過激な格好に驚きしかない。

 赤のショートスカートは今にもパンツが見得そうで、Tシャツはへそ出しスタイル、その上に薄手のカッターシャツを着ている。前に見た格好のイメージから真逆をついてくるスタイルに驚いてばかりであるが、まあまあ似合っている。

「いいんじゃないか?確かに少々大胆に見えるが」

 なんて義父さんが言うと、義父さんとマリアは義父さんの腹回りをジッと見つめる。

「「太りました?(太ったのか?)」」

 なんて失礼な言葉を前に義父さんの表情は少々不機嫌そうなものに変わる。サクトさんとガーランドがクスクス笑いながら場を賑やかに変えていく。

 義父さんの現状を二人に話しているとマリアさんは「そう言えばそうじゃったな」などと言っているという事は少なくともこの人は魔導大国関係者という事だ。

 俺達が彼女の挨拶を待っていると、彼女は無い胸を張って強調してくる。

「改めて、私の名前はマリア・イシュー。魔導協会執行官じゃ」

 ジュリとエリーが驚きの表情になり、俺とレクターはポカンとイマイチ理解できていない感じの表情になる。

「執行官って何?」

 エリーが馬鹿を見る目でこちらを見てくる。俺は弁解の為に「レクターは馬鹿だからだけど、俺はこちらの知識が足りないからだからな?」と説明する。するとレクターが「俺が馬鹿みたいに言われた!」と反論するが、俺達は完全に無視。

「執行官と言うのは魔導士と呼ばれている人たちが魔導協会にはいるの。本職は別にあるんだけど、各国の非常事態が起きた際に魔導協会に仕事の依頼があるとその危険度に応じてランクの違う人が送られるの。その魔導士を補佐するのが執行官」

 そもそも魔導士にランクがあること自体初耳なのだが、あえて黙っていることにした。

「仕事のサポートの中には宿泊先の手配のようお手伝いから実際の仕事の手伝いまで様々だよ。でも、この若さで執行官になるなんて聞いたことないけど」

 なんていうジュリの前でばつが悪そうな顔をしているマリアに意味深な表情をする大人達。

 何かあるようだ。彼女が執行官に選ばれた理由。

 あえてしつこく聞かないことにした。

 聞いてもどうしようもない事だと感じたからだ。

「それよりアベル殿。逆さの街まで来てもらうぞ」

「!?なぜあそこなのだ?いつもの機関でいいだろう?」

 逆さの街?どういう事だろうか?街が逆さなのだろうか?

「駄目じゃぞ。今回はただの健康診断じゃない。お主の体のDNAには未だに岩の遺伝子が混じっておる。今回はこの遺伝子を排除することが目的じゃ。お主は今は人間の体をしておるが、遺伝子の中には未だに岩の遺伝子が混じっているのじゃよ。無論お主が岩のまま過ごしたいというのなら別によいが?」

「そこまでは言わない。しかし、どうやって排除するんだ?」

「そこで機竜様じゃよ。機竜様なら排除することが出来る。安心せい、排除している間の記憶は無い」

「そこは心配していない」

 そこまで話を黙って聞いていたサクトさんが渋ったような、困ったような表情を浮かべる。

「まさかとは思うけど………アベルの体を一度岩の状態に戻すなんて言わないわよね?」

 サクトさんにとって一番嫌な予想であり、それは俺達にとっても嫌な事である。マリアさんとイースさんは黙って頷く。

「前に研究者が言っていたのよね。今のアベル君の体は岩を人間の体に一時的に変換する事で誤魔化しているって。それを排除するには一度岩の状態に戻す必要があるんじゃないかっとね」

「マリア殿は本当に鋭いの、機竜様に言えば「一度岩の状態に戻せば完全に人間に戻すことが出来る」そうじゃ。これは風竜様も同じ事を言っておったよ」

 また大人達の視線が俺の足元へと向けられる。

「まあ、元に戻れますから安心してください」

 義父さんは嫌そうな表情をしており、俺だって正直複雑な事ではあるのだ。そうこうしているとマリアさんが俺の方を見てくる。

 もしかしてさっきわざと足を引っ掛けたのがばれたのだろうか?

「それと………空じゃったかな?お主にも来てもらうぞ。お主に機竜様が会いたいそうじゃ。それにお主の中にあるDNAが父君を救えるかもしれんぞ」

 含みのあるような、誘導されているような言い方ではあるが断る権利があるはずもない。しようとも思わない。

 しかし、言いたいことは別にあった。

「会うのは良いけど……学校の研修はどうするの?」

「安心性。儂がお主専属の相手をすることになる。機竜様はお主の耐性に非常に興味があるらしいのじゃ」

 俺はイースさんの方を見る。

「大丈夫ですよ。機竜様は人が大好きな方で取って食うなんてことは……ないと思います」

「そこは断定してほしかったです」

 怖いわけじゃない。しかし、風竜とあんな形で出会っているので不安しかない。機竜と戦うなんて俺には御免だ。俺はあんな目に遭いたくない。

 しかも一人で会いに行く。

「大丈夫ですよ。本当に」

 俺は背筋を嫌な汗がかき始める。

 義父さんが背もたれに体を預けて不貞腐れている姿を見ながら俺は足元に違和感を覚えた。


 袴着空がベットにダイブしたのは12時を超えた後だろう。

 私風竜エアロードは風景に溶け込む擬態化を解除してベットに寝ているこの少年を見上げる。体を縮めているのでどうやら周囲の子供達などは気が付いていないようだ。

 やれやれ。この少年が鈍感で助かったな。

 しかし、聖竜の監視がここまで面倒だとはな。この分だと長期戦を覚悟しなければ。

 この少年が世界を挟んで移動した時が勝負時だ。

 この少年は私があった度の人間より、我々風竜にとってもこの少年は特殊だ。

 我々風竜にとって人間達と距離を取っていたことが一年前の事件を引き起こしてしまった。

 私とて反省はする。この少年とパートナーになればと思う。

 今更神のような扱いをされたいと思わないし、私はそこまで他の竜達のように愚かになるつもりは無い。

 人間と対等に、それが出来るかもしれず同時に強力な力を持っている。幸い聖竜はこの少年と共にあろうとまでは思わないようだ。

「風竜エアロードだな」

 検査着を着たこの少年の父君が私を見下ろしていた。どうやら隠れていたようだ。

「何故空に懐いている?」

「それを聞いてどうなる?」

「私が聞いているはずだ」

 嫌に神経をとがらせている。

「私に感謝した方が良いのではないか?君が岩になった後も意識が残っており、君達の様子をちゃんと見ていたという事を黙っていたのは私のお陰だぞ」

 そう。この男はちゃんと周囲の言葉を聞こえていた。それも当たり前だ。私がこの男を助けたのだから。

「その辺は感謝している。しかし、空に懐いていることは別だ」

「この少年とパートナーの契りを交わしたいのでな。私とて反省はする。あの事件は私の油断と認識不足。人間を避けてきたばかりに起きた事態だ。しかし、今更人間に神のように扱われるのはごめんだ」

「なるほど。この世界は聖竜の監視下だ。なら黒龍に相談すればよかった」

 私は露骨に嫌そうな表情を作る。

「あいつに頭を下げるなぞ御免だ。あの陰険野郎。いつもいつも影の中で人を観察するような陰険な奴だ。私はあいつが好かん」

 鼻から息を吐き出す。するとその音に少年が強めに反応したような気がして私は息を潜める。

 どうやら単純に寝返りを打っただけのようで一安心。

「空を気に入ったのか?」

「フム。そう言う事だな」

 その少年はどこか寝苦しそうな表情をしている。

「空はこの世界に飛ばされて少々不安なのだ。同級生達も行方不明」

「この少年にとっての災難はこれからだ」

 私はまっすぐにアベルとかいう男の方へと見上げる。

「この少年の試練はこれからなのだ。問題は一人で戦おうとするか、みんなで戦おうとするかだ。勇者である道を選ぶのか、英雄である道を選ぶのか」

 私達には願う事しかできない。


どうでしたか?今回の短編もジャック・アールグレイが登場しますのでよろしくお願いします。デワデワ!

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