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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ドラゴンズ・ブリゲード
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湖畔の街 デーリー 5

最新話前半となります。

 太陽が真上を向く頃、俺は賑やかな市場を散策していた。右を見ても左を見ても珍しい物ばかりで心動かされる。

 今日はデーリーに来て三日目である。

 昨日は駅前から港前広場までを散策して、三日目は市場の方まで出かけていた。

 義父さんが関わったお陰で事件の主犯と思われる者達を樹海内で発見したらしく、現在樹海内はちょっとした戦闘状態に移行しているらしい。

 素人である俺達が事件にかかわることが出来るわけもなく、同じく戦力外通告を受けている環境保全員であるイースさんとお出かけである。

 この前と打って変わって少し開放的な衣装に身を包んでいるが、三つ編みと大きな眼鏡は変わらない。

 ポーチを肩にかけているその姿はどこか古臭さを感じさせるのは俺だけなのだろうか?とか思っていたが、どうやらジュリやレクターも同じことを感じたようで、彼女の衣装をマジマジと見つめている。

「すごいですねぇ。あ!あれは何でしょうか?」

 などと言いながら彼女は市場の商品の一つ一つに興味をひかれている。

 ジュリも一緒になってあちらこちらの店に顔を出しているようで、仲良さげに市場中を回っている。

 しかし、俺の意識はどこか樹海の方を向いている。

 それには言いにくい理由があった。

『誰……か。助………け』

 そんな絞り出されてような悲鳴が先ほどから幻聴のように聞こえてきて、俺の意識をどことなく樹海の方へと向けてくる。

「何かあった?」

 三日目にしてようやく俺の異変に気が付いたのかレクターがそっと訪ねてきた。

 どう答えたらいい物かどうかとふと悩み、正直に言うしかないという結論に至る。

「昨日から声が聞えるんだ。助けてくれとかいう声が。幻聴のようなんだけど、ただの幻聴には思えなくて」

 気になってしまう。

「どっちの方向」

「樹海の方向」

 真直ぐ指を樹海の方向へと指し示す。レクターは楽しそうな表情を浮かべながら樹海の方へと歩いていく。

「おい!樹海に行くつもりか?」

「だってそっちから助けてって声が聞えるんでしょ?なら行けば分かるでしょ?」

「だけど。樹海は今戦闘中なんだぞ?下手をすると……」

 巻き込まれるかもしれない。

 助けたい気持ちと巻き込まれることへの恐怖が戦っている。まるでそんな感情を見抜いたようにレクターは当たり前のことだと言わんばかりにハッキリ告げてくる。

「?空は助けたいの?助けたくないの?」

「助けたいさ………でも」

「なら助けに行けばいいじゃん。なんで躊躇するの?助けてって声が聞えてきて、その場所も分かっているなら助けに行くべきだよ。空の心は「助けたい」って言ってるんだし。レッツゴー!」

 なんて言いながら勝手に歩いていくレクターに遅れないように俺はジュリとイースさんに事情を説明し、あれこれと動揺する二人を連れてその場を離れていく。


 アベルが大剣を振り下ろすと周囲の霧と共に二人の男性が切り傷と共に吹き飛んでいく。アベルが自然など気にしないように戦う中、デリアは派手な赤い髪を振り回しながらも自然に気を使いながら戦う。

 これが環境保安官としての彼女の仕事でもある。

 環境を守る事、環境や狩猟が禁止されている動物を保護し、その動物たちを狩る者達や組織を滅ぼすこと。

 最近この辺の動物の剥製が売り飛ばされているという仕事の依頼を受けたデリア、イースはこの辺りに風竜が出たという噂と中々出ていかないという情報を元に同じ仕事のメンバーを集めていた。

 そして、アベルと軍の協力を得て狩猟団『イルバル』を見つけ出した。

 ここ二日ほどの戦闘でやるらを追い詰めたのは良いものの、霧が邪魔をして中々決定打を打てずにいるのが現実だった。

「アベルさん。このままではキリがないですよ」

「かといってこれ以上戦力を増やせないしな。しかし、この霧………異常な濃度だ。この辺がこんなに霧がかかるとは聞いたことがない」

 それはデリアとて同じ。イースもこの辺に霧がこの濃度で出現したとは聞いたことがないと告げていたし。

「嫌な予感がするな」

「止めてくださいよ。アベルさんのそういう直感、当たることが多いんですから」

 十三年前に起きた北の近郊都市襲撃事件も当日にアベルが「嫌な予感がする」と言っていたのをデリアは思い出す。

 そう言う事をアベルがいうと大体当たるという展開がここ数年続いている。

 そんな嫌な予感と、当たってほしいという願いを抱いて戦っていると大きな地響きと羽ばたくような音がゆっくりと近づいてくる。

 同時に霧の中をシルエットがどんどん大きくなっていく。

 大きな翼、緑色の鱗の生えた大きな図体、細い手足と長い爪と牙。しかし、体中に付けられている鎖と首輪はその姿を奴隷のように見せている。

「なんて………事なの。風竜を………『呪言の鎖』で操るなんて」

 デリアはさすがに悲しみに満ち溢れ、同時にアベルは怒りで身を震わせる。

「………ジョージ・アールグレイ!!!」



どうでしたか?面白かったと言っていただけたら幸いです。後半では風竜エアロードがどうやって操られたのかが分かります。

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