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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
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ガイノス帝国 2

本日三話目です!ガイノス帝国の後半になります。

 ジュリはどこか申し訳ないような表情を作り、エリーの頬の治療をグラウンドで行う。レイハイムとレクターと空は大男事『テラ』と呼ばれる不良グループのリーダーへと視線を向ける。

「あのテラって男あまりいい噂を聞かないぞ」そう言いだし言い出したのはレクターだった。

「俺だって聞かないさ。でも、あそこまでされて黙ってみていられないだろ?」と空が言うとレイハイムは「去年高等部一年生にして問題を起こして留年している生徒だな」とテラの方を見ながら答える。


「ナックル一体型の魔導機。得意なのは肉体強化系で、去年は色々な備品をぶっ壊しまくったらしい。まあ、退学にならないだけましだな。留年してストレスになっているんだろ」

「退学してしまえばいいのに」


 レクターの本音には空も同意できるが、テラの事実や脅威も存在する。


「まあ、ハンデを抱えていると考えればいいんだろうな。勝機があるならそこなんだろうな」


 テラはナックルを装備して近くにある学校のベンチを叩いてぶっ壊す。その光景を見ながら顔を青ざめさせるレクター。


「何なの?あの破壊力」

「破壊魔があの男の異名だからな。それに関係ない事だろ?戦うのはお前じゃなくて空なんだからな」


 空は手のひらに意識を集中させる、掌に風が緑色の炎のように形作り一本の剣になっていく。

 それは去年帝城の地下で面会した聖龍から与えられた運命に立ち向かうために力だった。



 去年。中等部三年生に進級したばかりの際、、アベルから帝城に呼び出され皇帝とアベルと共に地下奥深くへと降りていった。

 昇降機で降りていき、地下十階にその竜は存在している。

 長く重苦しい廊下を歩いている空を安心させようとアベルが声をかけてくる。


「緊張するな。ある程度はフレンドリーな竜だ。俺が『|竜の焔』をもらった際もフレンドリーだった」


 優しい面持ちをし、豪華な衣装を身にまとう白髪の混じった濃い茶色の髪をなびかせる皇帝陛下事『レオンハルト五世』も微笑みかける。


「その通りだ。彼は基本的にこんな閉鎖的な場所で過ごしているが、本人は今の生活を楽しんでいるんだよ。まあ、外に出ていくことは簡単なんだけどね」


 そう言いながら最後に金属の重苦しい雰囲気のドアへとたどり着く。皇帝がカギを開け、アベルがドアを開く。

 ドアの向こう側の光景に息を呑む空は二人に置いていかれないように歩き出す。

 白い体に強靭な爪や牙をのぞかせ、体を丸めながら眠りにつきながらも体の大きさで人間を三人はつぶせそうだと空は思った。

 アベルは竜の左頬を強く引っ張り起こす。

 空はハラハラしながらアベルの行動を見ており、竜の両目が勢いよく開く。アベルと皇帝を交互に見ながら最後に空を見つめる。

 体をかすかに起こす竜は目を擦り大きくあくびをする。もう一度空の方を見ながら豪快な声が響き渡る。


「悪かったな異世界人!待っていたら眠たくなってしまってな。やれやれ……何を話そうとしていたのか?」


 そう言いながら腕を組んで考え込むと思いついたような表情と共に空を手招きする。


「こっちにこい。待て、そんなに警戒されると傷つくぞ。いくら竜でもな」


 妙に繊細な所を見せつけながら前に数歩出ていくと、空は改めて竜の姿を見上げる。


(こう見たら竜というよりドラゴンだよな。まあ、同じ竜ではあるんだけど)

「さて、異世界人。右手を前に出せ」


 空は竜に向かって右手の掌を開きながら突き出す。竜の右手の人差し指を空の掌にくっつける。掌から竜の温かさを感じ取り、同時に竜は一人でつぶやく。


「異世界人。お前はこれから運命と立ち向かうことになる。運命に抗うか。運命に従うかはお前次第だ。我『レイストナート』はお前の運命の行きつく先を見て居よう。運命を見届けるための力をお前に与える。これは二つの世界を救う事が出来る。最もあくまでも力は力。手段と方法でいくらで顔を変える」

 そう言いながら指を離してそのまま眠りに入っていく。最後に「異世界人の《《心のままに進め》》」


と告げて眠りについた。

 この時、空は『竜の焔』を手に入れた瞬間だった。



 『竜の焔』は魔導機ではなく、いわゆる魔法に近い考えである。焔自体は人間の体の中に内包されており、その人をイメージする形で具現化し、その人の才能を能力に変え、魔動機として具現化させる。

 空の掌に出現した片刃直剣。エメラルドグリーンの刀身に刀より分厚い。

 最もテラのナックルから見れば明らかに脆そうに見えるだろう。


「やれるだけやるだけさ」


 そう言いながら空は数歩前へと出ていく。グラウンドの端の方を見るとエリーとジュリが心配そうな表情で見つめており、空は微笑みながらテラと向かい合う。

 グラウンドのど真ん中、空とテラとの距離は五メートル、お互いに睨み合いながら距離感を図り、作戦を練る。

 時計の針がちょうど七時三十分を迎えたとき、テラが走り出す。


「ちょっと待てよ!勝負の合図はコインじゃなかったのか!?」

「そんな約束を守ると思ったのか!?」

「思わなかったけど?」


 空に向かってテラは拳を振り下ろす。空は振り下ろし攻撃を後ろに一歩下がり回避しながら剣でカウンターを決める。

 さすがに刃で切る気にはなれないので、空は峰内の要領でテラの顎先を狙う。しかし、テラもギリギリで回避して見せる。

 一歩半テラは後ろに下がり、再び空と視線が合う。

 テラは見上げる空の視線に小さくはない恐怖を感じるようになった。


 恐怖を感じないような視線、それでいてテラに対する怒りを感じさせる視線。衝動的に行動していながら、理性で把握し、本能が反応している。


 結局の所で、『竜の焔』とは優れた五感や運動神経を獲得することが出来るという事でもある。第六感と言ってもいいほどの『感』。

 空は感で避け、理性で切りかかった。


「くそぉがぁ!!」


 右腕を横に振り払い、空はそれを剣の柄頭つかがしらで軌道を大きく逸らし、からぶってしまう右こぶしに怒りを感じテラは本能的に左腕で空の顔面目掛けてストレートを決める。

 剣のしのぎで受け止める。刃の平らな部分である鎬は、いわば剣からしてみれば最も脆い部分になる。しかし、一番攻撃を受け止めやすい部分でもある。

 空の持っていた剣は真っ二つに折れてしまい、テラは勝ち誇ったような表情を浮かべる。そんなテラの勝利の確信を打ち崩すように折れた剣先が風のように消え、元の場所から生えていくように元に戻っていく。


「な、なんなんだよその剣は!?」

「『緑星剣』緑色の星の剣。竜の焔が作り出した俺専用の武装型魔導」


 竜の焔など普通に生活していれば見ることは無い。

 しかし、テラはさらに大きな声で叫ぶ。


「反則だ!そんな神話級の魔導を持ち出すなんて」

「反則はそちらだろ?」


 そう言いながら空は冷ややかな視線を浴びせる。


「一対一で試合をする条件として、魔導機は肉体強化以外には使わないと告げたはずだ」

「それがどうした!?」

「さっきから武装を壊したりしているが、それは魔導機の機能だ。物体の振動を利用した物体破壊の上昇。物理攻撃を得意とする武装に搭載されている機能だよな?剣などの刃を持っている武装は切断や貫通能力が高まり、ハンマーなどの刃を持たない武装は振動による武装破壊機能が存在する。そう……ナックルのように」


 テラは冷汗をかき、周囲から冷ややかな声が聞えてくる。テラの内心に宿る怒りとネタバラシをされてしまった羞恥心がテラを空回りさせる。

 顔は真っ赤に、怒りで体を震わせるテラはボクシングのようなきれいなジャムとストレートを組み合わせたコンボで空を叩きのめそうとする。しかし、空はそれを全部綺麗に回避して見せる。


「くそが!くそが!!くそがぁ!!!当たれよ!ぶっ殺す!」


 そう言ってテラは両拳に切断能力を高めた刃を作り出し。


「卑怯だぞ!」


 レクターからの避難など聞こえていないかのようにテラは不気味な笑いを浮かべる。空は大きなため息を吐き出しながら剣は低めに構え腰を落とす。


「来いよ。その自制心ごとぶっ壊す」


 テラは両腕毎前に突き出し、空の視界を潰しながら殺そうとする。


「死ねぇぇ!!」


 あくまでも冷静に、落ち着きながら剣を握る力を強める。


「ガイノス流剣術。功の型。裏切り(うらきり)


 そう言うと空の体はテラの後ろに居た。まるで瞬間移動したかのような速度で、しなやかに、かつ武装や肉体へと攻撃する手を緩めない。


「裏切り。武装や防具の裏を切るようなイメージで作られた技。本来は武装破壊技なんだが、使いこなせば人の意識を奪う事は出来る。まあ、もう聞こえていないだろうけどな」


 テラの肉体は地面に突っ伏し、周囲から空の勝利を讃える声と教師の怒鳴り声が聞こえてきた。



 ここは魔導と呪術が交わり合い、争い合う世界。そんな世界ともう一つ世界を結ぶ『世界線ワールド・ライン』の物語。

 

どうだったでしょう。面白かったと言っていただけたら幸いです。とりあえず一日三話。LINEノベルに追いつくまでこのペースで掲載していきます!

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