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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
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あれから 1

ガイノスエンパイア編後日談になります。あれからの一話目です。

 あれから約一か月ほどが経過し、東区はようやくの想いで復興が進み始めており、区画間列車(区と区を結ぶ列車の事)も先日ようやく動き始めた。

 東区で暴れ回った風竜は傷だらけの体で飛び去っていった。

 デリアさんも数日ほど手伝いをした後、町の娘相手に『初めて』をもらっていき、最終的に最高議長一同から怒られて逃げていく羽目になった。なんだかんだいって残存勢力の駆逐まで手伝っていくあたり仕事に対しては真面目だ。

 最も出ていく際に俺とジュリに最大級の爆弾発言をしていくのは勝手が過ぎるだろう。

 周囲に付き合っている発言をしなくてもいと思う。おかげで今ではすっかり士官学校内で俺とジュリが付き合っていることを知らない人間はいない。

 ファイドと呼ばれる革新派のリーダーを失った組織が崩壊するのは速かった。その後事後処理の段階で十六年前の事件が主戦派が関わっていたという事実を暴露した革新派残党が暴露したことで主戦派も裁かれることになった。

 しかし、保守派は証拠不十分で逃げ切ることが出来、父さんがいうには今後動く可能性があるとのことだ。

 俺自身も踏ん切りがつき………五月上旬。俺は父さんの姓を受け取り『袴着空』から『ソラ・ウルベクト』へと変わった時、サクトさんから堆虎がお守りの中に隠していたSDカードを解析できたという一方を受けることになった。


 俺は自室に備え付けられたテレビ越しに堆虎の言葉を聞いている。テレビの奥にはどうやって撮ったのか分からないが、白い寂しい部屋で移された場所で堆虎が一人で喋っている。最も、後ろから複数人の声が聞えてくる。

「ハッピーエンドやバットエンドなんて言い方があるけど、人生にはそんな選択肢なんてないよね」

 俺にそんなことを聞かれても困る問題だし、じゃあ人生のエンディングなんて何なんだよってツッコミの方が大きい。

 まるでそんな俺の気持ちを見抜くように堆虎は人生のエンディングについて語りだす。

「人生のエンディングはトゥルーエンドしかないよね?」

 トゥルーエンド?確か『真の結末』とかそういう意味だっけ?

「だって人生の終わりなんて誰だって分からないもの。選べないし、予期しない死に誰もが怯えながら生きていく。だからみんなは一分一秒を大事に生きることが出来ると思うの。私達の死もそういう予期せぬ死のうちの一つだから………空君が気にすること無いんだよ。あっ今はソラ君だっけ?『ソラ・ウルベクト』君」

 どこかからかうように微笑む彼女達は俺がどういう決断をするのか分かっているらしく、正直どこまで知っているのか怖くもある。

 しかし、堆虎や時折覗いてくる隆介や同級生のみんなの姿を見ているとみんなが悲しみを隠そうとしているのがよく分かる。

 そうだよな。みんな辛いんだ。でも、堆虎達は………笑って終わりにすると決めたんだよな。俺がみんなを探している間にみんなは重大な決断をしたのだろう。

「ソラ君を決断させるにはどうしてもそれぐらいしないと駄目だったから」

 まるで人が優柔不断みたいに。

「ソラ君は私達と他のみんなを選択したときどうしても残酷な決断ができないと思ったの。実際、ソラ君は出来ないでしょ?」

 出来ないよ。皆を犠牲にして得られる世界にどれだけの価値があると思うんだ?

「だからだよ。先に私達が決断したらきっとソラ君はその決断を受け止めてくれるって。私達の事………それだけ大切にしてくれている証拠だもんね」

 そんな風に優しく微笑んでいたら何も言えないじゃないか。俺が一人で黙っていると後ろからひょっこり隆介が現れる。どこか納得できないような表情を作りながらも、右頬の殴られた傷を隠そうとしている。

「でもさ………妬けるよな。だって、俺達やソラの家族がどれだけやってもできなかったことを、この世界の知り合いはやってのけたんだぞ」

 なんの話をしているのか分からずにいると堆虎が口元を隠しながらクスクス笑っているのが見て取れた。

「そうだね。だって、ソラ君はいつだって誰といても楽しそうにしないし、ブスッと不機嫌そうにしているもんね。それなのに人一倍人の事を気にするし」

「そうそう。家族と居ても。誰と居てもそんな風に不機嫌そうにしている。というか………楽しそうにしてくれないんだよな。なのに……」

 二人は……どこか嬉しそうにしている。

「「この世界に来てからのソラソラは毎日を楽しそうに過ごしてる」」

 俺は驚きながら目を大きく開いてしまう。

「ソラ君を変えたということは………私達が出来なかった事をソラ君の新しい友達がやってのけたという事だもんね」

「いい友達に囲まれて正直言えば安心した」

 俺は涙を流し、前がまともに見えなくなる。

 ずるい。そんな事を言われたら………みんなと一緒の時間を作れなかったことを後悔してしまいそうになる。

「だから………これからも楽しそうにしているソラ君でいてね。忘れないでね……私達がここにいたこと」

「これからだって力になるからな」

「「忘れないでいてくれたら………ずっと一緒だ。思い出はここにある」」

 二人は自らの胸を指す。俺も同じ場所を指し涙を流す顔を拭きながら、笑顔を作る。

 ドアがノックるする音が聞こえてきて急いで電源を切る。


切る所が難しく短くなりましたが、次は多分長めです。

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