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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
36/156

巡り逢えて良かった 1

最終決戦開始です。人と竜。魔導と呪術の戦いです。

 視界を埋め尽くすほどの剣先の束は一瞬で部屋の壁を破壊していく。化け物はその勢いで外まで出ていくと、俺とレクターも負けじとそのまま壊した壁から外へと出ていく。

 正直に言えば満身創痍だし、俺もレクターもここ数時間ずっと戦いが続いているような状況が続いている。

 ちょっとでも油断すれば膝をつきそうな体に鞭を打ち、右手に剣を握りしめながらまっすぐと敵のいる方へと跳躍する。

 近くのビルの壁にへばり付きながら、更に遠くのビルの壁に爪を立ててこちらを睨みつけるあの目は獰猛な虎を思わせる力強さがある。

 しかし、こちらとて負けるわけにはいかない。

 幸いにも、エリーの状況を見ると疲弊しているわけではなさそうなので、エリーからの積極的な援護を視野に入れながら戦う方が体力的には持ちそうだ。

 レクターも壁にへばり付きながら呼吸を整えており、俺はそれを確認しながら息が合うタイミングを見計らい敵に睨みを利かせ、慄く心を奮い立たせまっすぐ敵を睨む。

 吹き出す息がかすかに白く濁っているように見えるのはきっと錯覚ではあるまい。

 また気温が下がっているようで、四月の帝都の夜は肌寒く感じてしまう。

 気温計があれば今すぐにでも気温が分かるのだが、東区はその辺の整備がまだまだなようで、それっぽい建造物すら見当たらない。

 気にしても仕方ない。

 お互いに嫌な間合いを取っていると動き出したのは化け物―――――ファイドだった存在である。

 空中を走るような跳躍を見せ、一気に鋭利な爪を俺の方へと向ける。ギリギリまで引きつけながら紙一重で回避しつつ反撃の一撃を横っ腹にぶつけてやる。

 黒い血飛沫が舞い………散らなかった。

 血が出ないことへの驚きと傷口がまるで生きているように動いている気持ち悪さが俺の中での警戒心を高めた結果だろう、傷口から飛び出た血の腕とも比喩すべき存在が俺を襲い掛かり、辛うじて回避することが出来た。

 しかし、その力は強靭で俺がへばり付いていたビルを真っ二つに破壊してしまった。

「グギャァァ!!」

「ふざけんな!?そんなモノ喰らったら体が粉砕する所の騒ぎじゃなくなるぞ!」

 倒れていくビルをよじ登り、後ろから追いかけてくる化け物の横っ腹に痛烈な一撃が光の矢という形で襲い掛かった。

 化け物の目が一度だけエリーの方を向くが、その隙を掻い潜る様にレクターの強烈な一撃が背骨を粉砕する音と共に襲い掛かった。すかさず俺も跳躍し化け物体に斬撃四連撃と打撃一撃をお見舞いする。

 俺が独自に編み出した技は分かりやすく英語を適当に使っており、斬撃を『スラッシュ』で打撃が『ストライク』と分けている。

 斬撃四連撃と打撃一撃複合技。『スラッシュ・ストライク・5th』をお見舞いした。

 最後の打撃攻撃が敵の背中を強打すると化け物は建物の下敷きになる形で一度沈黙した。

 このまま終わってくれれば良いのだが、さすがに化け物崩壊した建物を粉砕しながら方向を上げる。

『ヴゥオオオ!!』

 体のあちらこちらに傷がついており、それを全く気にしなかったのだが、その傷口が大きな目に変わった瞬間にはさすがに俺もレクターも悲鳴を上げそうになってしまった。

「気持ち悪い!」

 レクターの素直な感想に同視しながら化け物は俺をターゲットとして見ており、俺はレクターにもう一度視界で合図を送り、レクターは他の建物へと姿を消しながらエリーもタイミングを見計らう。

 俺はもう一度化け物を見ようと視線を移したが、そこに化け物はいなかった。

 正面に影が通ったようなような気がし、視界をもう一度持ち上げると正面に化け物が屈強な腕を俺に叩きつける。

 胃から昼食が吐き出そうになる。

 悲鳴を上げる暇もなく、レクターがサポートに駆け付けるがそれを血の腕で別のビルディングへと引き飛ばしてしまう。

「レクター!?」

 エリーが弓で援護射撃をしようと狙いを定めるが今度は血の弾丸でエリーへと反撃を試み、ジュリがそれを瓦礫を操作してガードするが、砂煙が立ち込め援護射撃が出来そうにない。

「憎い。痛い。怖い。嫌だ。死ね。殺してやる」

 呪詛の言葉がどこからとなく聞こえてくる。少なくとも化け物口からでは無い事だけはよく分かるが、その言葉は間違いなくこの化け物の体から発せらている。

「何なんだ?………どこから?」

 化け物は俺をビルディングの壁にぶつけながら上へと昇っていく。俺は衝撃をラウンズに緩和してもらいながら痛みに耐えていると、化け物は俺を更に上空へと投げつける。

 血の翼で空を舞い、俺の方へと一気に接近していくが俺はそれを刺殺の束で相手をする。

 ギリギリまで引きつけ、敵が血の腕を俺に向かって伸ばした瞬間、俺の視界には背中に夥しいまでの無数の口が開いているのが見えた。

 あまりの気持ち悪さに身動きが一瞬だけ止まり。その隙に化け物の攻撃が俺の腹部へと直撃して更に空へと叩きつけられる。

 意識が切り取られそうになりながらも、俺は必死に意識を体に定着させながらもう一度化け物の方を見ると化け物はもう一撃お見舞いしようとしているのか、俺はそれを防ぐか一撃受けながらも反撃を試みるかで悩んでいると、空気を裂くような音と共に何かが夜空を舞、直下しながらも化け物に傷を負わせ、同時に俺を回収してビルとビルの間に身をひるがえす。

 強靭で細い腕に掴まっていると、ゆっくりと後ろを見ながら俺を助けてくれた存在へと向き合う。

 エメラルド色をした鎧のような鱗、細いがどことなく強靭さを感じさせる四肢、聖竜などとは比べ物にならないほどに左右対称で美しさを感じさせる翼、長い首の先には竜独特の顔が存在している。

 俺はこの竜を知っている。

 三年ほど前。湖畔の街で見つけ、デリアと共に救出したあの時の竜である。

 風竜『エアロード』その人物である。


「見違えたぞ少年。ずいぶん強くなったようだな」

 ここにいるべきではない存在前に驚きを隠せず、反応できずにいるとエアロードは化け物の方へと睨みつける。

 化け物は翼を羽ばたかせながらも滞空を続けており、攻撃するタイミングを探っているようにも見える。

「どう……してここに?」

「何、気まぐれとここで恩でも返しておいてやるかと思ってな。それに、いい加減木竜とも決着をつけてやりたくもなってな」

 木竜という聞きなれない言葉を前に俺は首を傾げる事しかできなかったが、それが化け物を指す言葉なのだという事は直ぐに理解できた。

「あれが?ドラゴン?」

 そう言われてみればそう見えなくも無いが、正直に言えば獣ようにも見えてしまう。

「あれの正体。君達人間が原初の種と呼ぶ存在の正体は………『木竜の卵』だ」

 あれが………卵?

「そう見えんだろうが、木竜………ようするに木だ。本来は大地に住み着き、栄養を大地から得られる限りは永遠に近い命を得る。竜は死ぬ前に子孫を一匹だけ残すが、木竜はその身を種に返しそれが大地で眠ることで再び蘇る」

 要するに………不死身だ。

「それがどうしてあんなことに?」

「木竜の種を偶然発見した………わけでは無く。永遠を欲する欲深さが人や竜の中にも存在した。死への恐怖。生への執着心が悪い事だとわかっていながらも木竜の卵を利用したいという気持ちを与えたのだろう。飲み込むたびに木竜の強靭な意思と記憶が飲み込んだ者と混じり合い崩壊して暴れ回り、それを殺すたびにまた誰かがそれを飲み込む。それを繰り返した来たのだよ」

 そしてああなったそうだ。

「憎しみを抱き、生きている者を見下し、自分を殺そうとするたびに殺すものを憎しみ、また新しい者を憎しみ始める。その繰り返しさ。そんなことを約千年も繰り返し出来上がったのがあの種という事さ。木であるが故に種にしか見えないがな」

 だから獣が混じっているように見えるんだ。人だけでは無いのだろう。オオカミなどの獣もまたあれを飲み込んで誰かを憎しみだけで殺してきた。

 あれを飲み込んだ時点で負けていたのか?

「まあ、封印されて二千年だ。人があれの事を忘れていても不思議ではあるまい。恐らく最強の呪術兵器ぐらいの認識なのだろう」

 そう言われてしまえばそうかもしれない。

 最も今の世の中原初の種の正体どころか、知っているのかと聞かれたら誰もが首を傾げるだろう。それだけ骨董品と言ってもいい。

 しかも、呪術の中でも禁呪と呼ばれるようなレベルだ。知らないという人が多いだろう。

「どうやってあれを倒せる」

「簡単だ鳩尾の奥にある小さな結晶のようなタマゴ………君達が言うところの原初の種を破壊すればいい。ただ、傷を与えれば与えるほど倒すのは難しくなるぞ」

「傷を増やせばその分攻撃手段を増やすから?」

「それもあるが、呪術で体を構成しているわけじゃないからな。君の力『竜の欠片』では傷を与えても力を削り取る事にはならない」

 竜の欠片を知っているのか?という疑問を聞くべきかどうかと悩む。しかし、竜ならそれが分かるのかもしれない。

「三年前君に初めて会った時」

 エアロードは俺の目を黙って見ながら語りだす。

「君こそが『竜の欠片』の真の継承者なのだと感じた。君があの日私から受け取った力の一部、あれを使いこなした瞬間確信したよ。君は間違いなくその力に愛されている」

「魔導に愛されるとか愛されないとかあるのか?」

「ある。魔導とは結局の所で我々が作り出した力にすぎん。君達は竜の力を一部を使っているに過ぎない。聖竜の力がの一部が『竜の欠片』だ。その緑色剣………どうしてその色かと考えたことがあるか?」

 無い。

 そんな難しい事を考えたことは無い。というか、考えるだけ無駄だと感じたからだ。

「ないだろうな。それは私が渡した力が『竜の欠片』と一体化した為だろう。それゆえに緑色の色をしていた」

 化け物―――――木竜は大きな咆哮を上げながらこちらに接近していく。

「原初の種を砕けばいいんだな?」

「ああ。しかし、簡単にはいかんぞ。この街を破壊しないように戦うのは私には難しい。あくまでも戦うのはお前達だ」

 最初っから頼るつもりも無い。


どうでしたか?摩天楼を駆ける戦いを描いてみたくてこんな展開にしました。

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