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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
31/156

三十九人の覚悟 1

レクター対シューター戦になります。

 お調子者として知られているレクター。しかし、実力は学年一位は伊達ではない。実際空は聖竜誕生祭にて行われる武術大会の中等部部門ではイレギュラーが起きた去年以外の二年間でレクターに勝てたことは無い。

 単純に賢くないというだけで、馬鹿と言うだけで頭が悪いというわけでは無い。

 連動式の魔導機を二つ使っているだけあって回転は速い方だ。

 最もイメージ力が乏しく、肉体を動かす以上の事が出来ないという欠点が存在するが、それが彼を友として見ている理由が単純という事だ。

 人や命を差別しない。見下すようなことは決して言わない。ジュリ以外が当初空に異世界人として距離をとっていた中、他の誰よりも空に話しかけ誰よりも空に対等に接したのはレクターだった。

 空がこの世界に馴染めていったのは間違いなく彼の成果と言ってもいいだろう。

 その真直ぐさが今シューターの心に襲い掛かろうとしていた。

 拳と拳がぶつかり合いながらシューターはレクターの真っ直ぐな瞳をマジマジと見つめ、その度に大きく怯んでしまう。

 まっすぐな瞳を前にシューターの心は悲鳴を上げている。

 強く、真直ぐで、対等に接しようとする。

 シューターは獣人である。

 獣人族の国で育ち、獣人族の国が亡びるその瞬間まで共に過ごしてきた十六歳の女性である。

 

 獣人族。

 高い身体能力としなやかな体つき、獣人特有の尻尾と獣耳という体はマニアの間では高値で取引されており、帝国では長らくそれを禁止していた。

 獣人族の国は今から五年前にある理由から滅んでしまった。

 呪術の繁栄こそが原因の一端だった。

 しかし、その事実は一部の国々の思惑によってひた隠しにされ続けてきた真実で、帝国もそのうちの一つとして黙認を続けてきた。

 獣人族は魔導機や呪術の繁栄の前には人類の中で自らを最強の種族だと誇りに思ってきた。しかし、魔導機と呪術の繁栄の前に獣人族は大陸の端の方へと追いやられていった。

 問題だったのは獣人族は機械の操作を不得手にしていた。その為に呪術に嵌まる速度は速く、国の端から端までどっぷり嵌まるまで一年もかからなかった。

 事態を重く見た帝国をはじめとする魔導を中心に繁栄を続けてきた国々は連合を組み、獣人族の国をめぐって争いが始まった。

 これが第一次世界大戦になる。

 この戦いは獣人族の衰退と魔導と呪術に大きな壁を作る結果に終ってしまう。

 このままで終れないと呪術は三十年以上前に起きた戦いこそ第二次世界大戦。

 その結果はこの前共和国の崩壊で終わりを迎えたが、その大戦の中で獣人族の国は全部崩壊し、各地に散り散りになってしまう。

 それが六年前の出来事である。


 シューターの連撃を難なく躱し、そのまま身をひるがえした勢いで回し蹴りを側頭部目掛けて蹴り込む。

 シューターは側頭部の痛みに耐えながらさらに前に踏み込む。

 鳩尾に向けて右ストレートを叩き込もうとするが、レクターはそれを足で受け止める。

「足で!?嘘」

 そのまま連続で蹴りつけ、回避しきれない攻撃がガードを突き抜けてシューターの鳩尾に決まってしまう。

 力の入らない体に鞭を打つシューターに対し、レクターは足腰を低く構え、全身の神経を研ぎ澄ましながら攻撃準備に入る。

 次で最後。

 もう一撃でも受けたらそのまま倒れてしまう。

 シューターはこれ以上戦えるだけの体力が無いのも事実だった。

 二人が同時に息を吸い込み、一秒後に吐き出す。

 ほぼ同時に拳を叩き込もうと伸ばすと同時にストレート同士がぶつかる。衝撃波が広がっているのではないか?っと思えるほどの衝撃がお互いの体を突き抜ける。吹き飛びそうになるほどの勢いを耐え抜いたのはレクターだった。

 仰向けに倒れているといっそ清々しい気持ちになっていく。

「聞いてもいい」

 シューターからの言葉にレクターは黙って頷く。

「妹を知っているって本当?メイっていう名前なんだけど」

「うん。知ってる。君の妹かは知らないけど。その名前の獣人子を知っているよ。去年の七月に行われた研修で助けた女の子なら孤児院に居るよ。確か空が何度か面会に言っているはずだし」

「そっか………」

 涙を流し腕で涙を隠そうとするが、漏れる声がレクターに気まずい空気を感じさせる。

「泣かせたわね?」

「俺の所為!?ただここにいるよって説明しただけだよ?」

 慌てふためくレクターの姿を見たらほんの少しだけ気持ちがすっきりした。

 シューターは体だけを起こし人差し指を壁の方を指す。

「そこの壁が薄くなってる。多分壊すことが出来るはず。そしたら階段を昇って、あれから三十分経過している。多分ちょうどいい時間になっているはず」

「三十分?なんでそんな事を気にするの?」

 シューターはそのまま疲れてしまいもう一度倒れる。

「お願い今は何も聞かないでほしい。この事件が終わったら全部警察と軍に話す。約束するから」

 シューターからの言葉を信じ、レクターは壁を粉々に吹き飛ばし、もう一度シューターの方を見る。倒れて目元を覆う彼女を見ているとこれ以上自分がこの場にいるべきではないのかと思えてくる。

 すると、エリーがレクターが肩を軽く叩きながら立ち去っていく。レクターは少しだけ表情を曇らせながらも立ち去る。

 シューターは涙を流しながら声を漏らす。

「良かった………本当に良かった。生きていてくれたんて」

 うれし涙を流し体力を元に戻す為に息を整える。


どうでしたか?少しずつ作品をよくできたらなと思います。

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