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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ガイノスエンパイア編
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ガイノス帝国 1

本日二話目です。ガイノス帝国の一話目になります。

 ガイノス帝国首都『ルーガリア』は広大な帝国の大地のほぼ中央部に位置し、若干北によっている。首都としての大きさは東京都とほぼ同じ大きさで、円状に広がっており、特徴的なのは皇帝家を守護する為に造られた外壁が二つ存在することである。

 うち一つが旧市街と新市街をはさむ形で作られた内壁、新市街の外に作られた外壁であり、内壁外壁共々あらゆる建物が隠れるぐらいに高い。

 外から覗いても壁の向こう側が見えてこない。

 はるか昔より、侵略者から守るという建前で作られた外壁、それでもこの外壁が傷ついたことは一度もない。

 意味の無い外壁を作る理由、それは帝国という名前とは裏腹に、警戒心の高さゆえの軍事力と軍事力を裏付けるような侵略を退けてきた防衛力。

 共和国との戦争すら共和国から仕掛けてきたものであり、帝国はそれを退けているだけである。


 それ故に帝国は自治区じちくを多く所有しており、先の大戦において大敗した共和国も正式な調印が済めば、ノートリアス共和国はノートリアス自治区に変貌することになるだろう。 『自治区』。元国家。自治する権利は与える者の税金を盟主国に支払わなくてはならない。帝国の所有する自治区は帝国政府に対し《三十%》の税金を支払う義務が生まれる。


 これを断れば自治する権利を失い、属州へと変貌を遂げる。

 六百年前にはこの属州化が頻繁に行われ、現在の領土へとかわっていった。

 大陸の規模を考えれば、ロシアとほぼ同じ大きさに相当する。

 そして、その六百年前に皇帝家が支配権を市民に譲渡するという一大事件が起きた。


「市民が市民の為に政治をするべきである。皇帝は象徴になるべきである」


 それ以降、帝国では帝国議会が設置され、最高議長による統治が行われてきた。

 帝国国旗にも描かれている白竜の紋章は帝国を象徴する存在である。

 白い四本脚と大きな翼の竜と青が国旗には書かれており、白竜は帝国の平和を青は自由を描いているらしく、帝国首都の旧市街は白い外壁と青い屋根で統一されている。

 『青白の都(せいはくのみやこ)』と呼ばれる所以である。


 空は結局の所で戦場であるはずの共和国首都から、二時間かけて高速巡洋飛行戦艦に乗って帰ってきた。


「着いたら六時。三十分してそのまま登校とか……今日がカリキュラムを決める為だけの日程じゃなかったら休んでいた」


 休もうと思ったが、父親代わりである『アベル・ウルベクト』が容赦のない一言を告げた。将軍クラスのバッチを付けた軍服を着て、厳つめの表情を浮かべながら低めの声で告げた。


「休むなよ。初日から休むと癖になる。それにカリキュラムを決めておかないと後々厄介だぞ」


 それが理由で眠たい体を叩き起こし、玄関から両開きのドアを開いて外へと出ていく。正面に道路を挟んだ先に湖級の池と帝国のシンボルである帝城である。

 ビルディングで言えば三十階建て相当の高さを誇り、左右対称的なデザインが美しさを、共和国の首都とはまるで違う恐怖の逆である安心を感じさせる。

 帝城の白い壁を眺めながら眠気が襲い掛かる。

 眠気と戦いながら南区のメインストリートへとフラフラした足つきで歩き出す。

 帝都には東西南北に分かれて区分けされており、そこから旧市街と新市街に分けられ、市街は番地で呼ばれており、空が居る場所は南の一番地である。

 帝城周辺は一番地であり、そこから端に行けば行くほど数字が重なっていく。


「眠い。いっそのことここで眠れたら」


 そう思いながら帝城の正面ゲート前の広場へとたどり着く。

 そこからメインストリートの正面ゲート前にある市内電車に乗り込んでいく。下手をすると席に座ってしまうとそのまま眠りそうになる。

 学校まで三十分。三十分もあれば眠りこけてそのまま終点まで行ってしまうだろう。

 空がウトウトしながら吊り輪に腕を引っ掛けながら、体に力が入らない状態が続く中、五分した所で見知った顔が二つ現れた。



 空と同じ黒い髪、黄色人種特有の肌をした空と同年代の間の抜けた風貌の少年。

『レクター・ガーバント』


 薄茶色の髪に白肌に美しいというより可愛らしい方に近い少女。

『ジュリエッタ・レイチェル』通称『ジュリ』


 二人は市内電車の中へと入っていく、眠そうにふらついている空の前までたどり着くと、心配そうにのぞき込むジュリや笑いながら空の肩を強めに叩くレクターが左右から挟み込む。


「眠そうだね。眠気覚まし持ってたっけ?」


 そういいながらジュリはカバンの中から眠気覚ましになるような『何か』を探し出す。空は「いいよ」と言いながらも眠そうにする。


「大体。次の日に学校があるっていうのに戦場に行くから~」

「悪かったな。捜索しないでいると………死にたくなる」


 レクターからの軽口に重く答えてしまう空。レクターは気まずい空気を頬を掻きながら誤魔化し、ジュリは空の影響を受けて暗くなってしまう。

 十五分が経つ頃には旧門の前である旧市街地の駅前を通り過ぎ、旧門から新市街地へと市内電車が通り過ぎ、そのまま新市街地の半分辺りで東区方面へと曲がる。

 そこからさらに東区方面へと進むと、それは現れる。

 『ガイノス帝国立士官学校前』と書かれた市内電車停で降り、多くの士官学生にまぎれながら校門を潜る。

 士官学校は広大な敷地の中に中等部から大学部までがすべて入っており、校舎の数だけで二十はくだらない。今でも増設が続いている。

 訓練施設。図書館。レストラン。グラウンドだけで五つは存在する。特別教室だけの校舎や部活動用の校舎。

 娯楽が多い方ではないこの世界にとって、部活動などのスポーツが数少ない娯楽と言える。勿論、スポーツ系だけではなく、最近は文化系の部活動が増えていっていることも事実である。

 空達は大きな校門を潜り、一番大きな校舎へと足を踏み入れる。

 一番大きな校舎『第一校舎』へと足を踏み入れ、三階まで突き抜けになっているロビーを歩いていると、ロビーの中心でよく知る人物の揉め声が聞えてきた。


「私達に文句があるんならかかってきなさい!」

「やるのか!?この男女!」



 女の声は空達にとってはよく見知ったような声で、ロビーでは複数の男女がもめ事を起こしており、真っ赤な髪の少女は綺麗な顔つきとは別に鬼のような形相をしている。後ろの男子から「いい加減にしないかエリー」と呼ばれている。


『エリー・テクシード・エンハイム』

 旧貴族のエンハイム家出身の誇り高く、基本的に高圧的だが友人や仲間には優しさを見せようとする心が存在する。


 しかし、実際の所、空は名前と内面があっていないような気がすると思っていた。

 その証拠とばかりに喧嘩の一歩手前の状態に陥っている。


 そのエリーを止めようとする男子こそ空達の最後の友人である『レイハイム・A・アーノルド』は無表情に近い表情で、ジュリと同じ薄茶色の髪をなびかせる。


「ちょっと待ってエリーちゃん」


 そういいながら駆け足で駆け寄っていくエリーはジュリの前に立ちながらなだめようとする。


「どいてちょうだい!ジュリ。こいつをぶん殴らないと気が済まないわ」


 そう言いながら反対側に立つ大男へと睨みつけ、ヤンキー風の大男は怒りで気が狂いそうになりながら拳を鳴らす。


「駄目だって。進級初日に問題なんて」


 そこまで言った所でエリーを引っ叩いて一歩前に出た大男の言動に空が動いた。

 エリーが倒れ、ジュリの胸元を鷲掴み殴ろうと右腕を振り上げる。そこで空が間に割って入る。


「待て。ここで問題を起こせばお前だって困るだろ?だから………勝負をしようぜ。俺とお前で」


次は18時にお会いしましょう。

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