南区攻防戦 2
南区攻防戦二話目です。
ヘリの前足を切り落としヘリの胴体を十字切りにして一歩後ろに移動しつつ、後方からエリーの矢の一撃で下へと撃墜していく。
レクターやデリアは難なく退けていくが、疲労が少しづつ表情に現れ始める。
途絶えることなく現れる歩くヘリデスブリンガーの軍団を前に追い詰められていく。
そんな中、空は再び駆け出していき、二機のデスブリンガーの足元を切り落とし、そのまま切り上げる。
「きりがない!疲れてきた」
「流石に疲れてきたわね。でも………そろそろかしら?」
デリアの言葉を待っていたかのようなタイミングで南区の向こう側よりバトルフロントが姿を現した。
その存在感もさることながら、ヘリの軍団を蹴散らすためにミサイルを大量発射する行動を前に空は焦ってエリーを連れて回避する。
デスブリンガーを次々と葬っていくとさすがに消耗戦になると踏んだのか、デスブリンガーはそのまま逃げだしていく。
空はそのままその場に座り込み、エリーも同じようにする。
二人は小さな声で「助かったっとつぶやく中」デリアとレクターも小さく息を吐き、飛空艇が低く近づいていてくる。
飛空艇の中に入ったのは久しぶりというほどでもない。しかし、今回の飛空艇は少々小型だと空自身思うところがある。
「小型の飛空艇なんてあるんだな」
小声で呟き格納庫に座りこむ空の周りには見慣れない人型の機械人形が置かれていた。
「なんだ?これ」
見たことも無いような兵器と思われる機械人形で、右腕に片腕で打てるようなアサルトライフルに左腕には眺めのシールドが装備されている。背丈は大体約三メートル前後ほど存在する。
「『ウルズ・ナイト』オオカミの騎士をイメージした兵器だよ。今後のメイン兵器になる予定の新兵器だよ。今回のクーデター鎮圧で成果を示せればだがね」
若い整備士の男性の言葉を聞きながらウルズ・ナイトを眺めながら空は大きく息を吐き出し、その下でレクターが興奮しながら登ったり、触ってみたりしている姿を見つめる空は脱いでその場に捨てられている鎧の頭部を優しくなでる。
疲れて休んでいると隣からアベルがやってくる。
「全く。無理をする」
頭を優しく撫でるアベルに、空はゆっくりとウルズ・ナイトを見上げる。
「もっと………強くなりたい」
ブラック・ナイトを倒さなければ三十九人の行方も分からない。
しかし、同時にブラック・ナイトを倒せれば三十九人の行方が分かるかもしれない。そんな思いが空の心をよぎる。
今回のクーデターにブラック・ナイトが関わっていることは真実で、クーデターを追えば辿り着くかもしれない。
「義父さん。クーデターを鎮圧するんだよね?」
「ああ。そうなるな。しかし、どうして?」
「俺も参加させてほしい」
アベルは嫌そうな表情を作るが、空は食らい付いて行く。
「頼むよ!今回の一件にもしかしたら三十九人が関わっているかもしれないんだ」
「どういうことだ?」
空は全てを話した。ブラック・ナイトが持っていた『お守り』はかつて堆虎という同級生が持っていた物だという事、言い方がそれとなく知っている風だったという事。それをすべて話したとき、アベルは何かに気が付いたかのような表情を浮かべるが、すぐに別の表情で隠してしまう。
空も一瞬だけだが違和感を感じ取るが、「気のせいか」っとすぐに脇に寄せてしまう。
「まあ、仕方が無いな。無茶だけはするなよ。それとお前の仲間とデリアは同行させるぞ」
「分かった」
そう言われると空は少し安心したのか、体力が多少は戻ったのかレクターの元へと移動して行く。
レクターと楽しそうに会話をしている姿を見ると年相応に見えてくるが、アベルは少々暗い表情を作っていた。
「さっきの話………少々おかしい所があったな」
「立ち聞きはあまり褒められた行動ではないだろう?」
通路の奥からガーランドが口を挟んでくる行動にアベルは視線の身をそっちの方を向く。しかし、ガーランドの話が分からないわけじゃない。
「『お守り』を持っていたというのはともかく、それを身に着けていたというのはな」
「ふむ。まるで………」
それではまるで三十九人の誰かがブラック・ナイトであるかのようだっと感じていた。
「まあ、それは無いか。無いというか可能性としては少ないだろうな」
「どうだろうな。今の段階では推測をするにも」
根拠が存在しない。
仮説も立てられない。
「アベル。お前はどう思う?今回のクーデターに三十九人が関わっていると思うか?」
「もしそうなら………今回のクーデターに向こうの世界の意思が混じっている可能性が高くなるな」
「空が言っていただろう?こっちの技術と向こうの技術では十年ほどの差があり、実際……『日本』と言ったか?その国が戦いを挑んでも勝てないっと」
「………言っていたな」
日本とガイノス帝国のそう戦力ではそれだけの違いがある。
戦争をしても日本には一割の可能性すら存在しない。しかし、空の話の全てを真実だと信じる根拠も存在しない。
それゆえの沈黙。
「今、多少空を疑っているな」
「………少しだけ」
「俺が言うのもなんだが、あの子は嘘がうまい子ではないだろう。それに、ある程度付き合えばわかるが、あの子は少々他人に感情移入しやすい。あれはスパイには向かん。確信していえるぞ」
「分かっているさ」
「あの子が騙されたパターンもあるが、俺としてはこの一件に聖竜がどれだけ関わっているかだ。そこが気になる」
「お前は其処しか気にしないな。」
まあ、分からないでもない。
空の話をちらっと聞いた限りでは聖竜はテラの一件で空に接触をしていたらしいし、その際に何かを知っていると告げた。その上で謝って来たとも。
「その話は初めて聞いたな。しかし、それならますます聖竜はクーデターを知っていたという可能性が高くなる。なら今回のクーデターは……」
聖竜の予想の範囲内という事である。
予想を大きく裏切る場合は聖竜が口を出すだろう。
「空にちゃんと目を付けておいた方がいいぞ。聖竜の話を信じるならあの子の前には残酷な運命が待ち受けているという事になるからな」
アベルはうつむく。
「せめて……その先にあの子の幸せがある事を祈る」
「そうだな………俺もせめて祈っていよう」
ジュリはレイハイムの手当を一旦医師に任せ、どうしたらいい物かどうかで悩んでしまう。東区の方からは火の手が上がり。周囲も不安な表情を浮かべる日が多い。中にはラジオを付けたりテレビを見て情報を仕入れようとしている姿も見受けられる。
時間は少しずつ夕方へと向かって行き、空が多少は赤色を帯び始める。
駅前の大きな液晶パネルには東区の行動が映される。
東区の行政区画の中が映される中、女学院の制服を着た一団がどっかの建物に閉じ込められている姿が映り、その中にレクターの妹が見えた気がした。
しかし、それ以上に驚きを隠せないのが、一瞬だが物陰に第三皇女であるレイナが隠れている事だった。
「え!?どうしてレイナ様が!?」
レイナは学校に通わせてもらえておらず、帝城内に箱入り娘のように育てられてきたとジュリは聞いたことがある。
何度がテレビで見たことがある程度の姿だし、見間違えたのかとも思ったがそうとは思えないほどの気持ちがジュリを襲う。
「空に伝えないと」
ジュリの後方より空のバイクが勝手に帰って来た。
優しく撫でるなかジュリは空へと連絡を取る為にバイクの通信機能をonにする。
「やっぱり戦わないとだよね。逃げちゃだめだよね」
通信がつながる間ジュリは携帯型の魔導機をいじっていた。
戦う必要がある。逃げちゃだめだと。
せめて空の隣居る為に。
何故なら。
「好きな人の隣に立てないようじゃ………いつまで経っても変わらないもん」
自分の気持ちを伝えるための一歩を踏み出そう。
『もしもし?ジュリ?』
つながる先の空の声に安心する。
「空?実は………」
でも、まだこの恋心は告げずにいる。
どうでしたか?面白かったと言っていただけたら幸いです。空達の戦いもまだまだ続きますが引き続きよろしくお願いします。




