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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
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辿り着いた未来 18

ダンスパーティー編となります。では!

 さすがに海とキャシーで試合が組まれたのだが、さすがに魔導機になれていない海では勝つことは難しかった。

 しかし、海とキャシーの間にライバル関係が築かれたというのは先輩として嬉しく思う。

 実際試合が終わる間に俺は体力をある程度回復させ、いったん自宅に戻るとそのまま士官学校の藍色の制服に着替えて帝城前広場で待つことに。

 俺が一番近い場所にいるのだが、父さんの仕事が多少長引いているので母さんはまだ自宅で待機中。俺と奈美が先にそれぞれの相手を待っていると、一台のリムジンが帝城前で一旦止まるのだが、俺はそのリムジンの側面に大々的に書かれている家門に身に覚えている。

 ガーランド家の家紋、まずガーランドと奥さんが中から出てくるとそのまま帝城の中へと入っていく。海がさらに現れて奈美の方へと近づいていく。

 奈美は俺に手を振って海と合流すると、二人で帝城内に入った三十分後にジュリが帝城前広場に現れた。

「遅れゴメンね。母さんがおめかしさせようとしてきて」

「はは。それはそれで見て見たかったけどな。じゃあ、行こうか………エアロード」

 俺の腰回りにくっついており、ジュリが腰を低くさせて腰回りにくっついているエアロードはお腹を空かせているそぶりを見せる。

「腹が減ったぞ」

「お前。最近低俗化してきていないか?最初に出会った頃の威厳さはどこに行った?」

「その辺に捨てた」

 さいですか。

 ならあえて突っ込まない。

 ジュリと手を結びながら俺達は帝城前で待機している兵にチケットを差し出し、兵は俺の腰回りにくっついているエアロードに驚きながら「どうぞ」と営業スマイルで許してくれる。

「止められる未来を想像してた」

「私も。でも、すんなりいけたね」

 俺達は案内されるがまま一階の大広間への開かれたドアを潜って華やかな装飾、同時に豪華な料理が乗ったテーブルが邪魔にならないように配置されている。

 俺達は室内に入っていき、ダンスフロアはさらに奥に設置されているのが見て取れる。

 ダンスフロアは別に行くとして、俺達はこのフロアで一旦食事を取りながら簡単に話でもして時間を潰すことにした。

 エアロードは俺の腰から近くのテーブルの上の料理に目を向け、肉団子がクリームで煮込んだ料理をつまもうとする。

 俺はそれを阻止するべく俺は深皿に肉団子のクリーム煮をエアロードに与える。

「結構おいしそうな料理が多そうだよ。ソラ君は何か食べたいの無い?」

「私はあそこにある肉で作られたパスタが食べたい」

「知っていたか?エアロード。さっきの質問は俺に言っていたんだぞ」

「知っている。私はここで食事を取る為にわざわざお昼を抜き、朝食も控えたのだ!」

「なんでそんなにガツガツいくんだ?」

 俺は目の前でジュリが持ってきた肉で作られたパスタを持ってくるのだが、そこについてくるヒーリングベルがやって来た。

「あなた。少しぐらい控えたらどうなの?」

「断る。今日は食べる」

 などと言って口いっぱいにパスタを突っ込んでいく姿は、誇り高き竜というより自堕落な生活をしているニートだな。

 もう………きっと元の生活に戻ることは無い。

「ヒーリングベルはイリーナたちと一緒にいたんじゃないのか?」

「あちらのダンスフロアで既に踊っていますよ。私はああいうのはあまり興味が無いですからね。あなた達は踊らないのですか?」

「後でな。今は人が多いからな。少なくなってきたタイミングで行くよ」

 よく見るとダンスフロアではガチガチで踊っている海と奈美の姿がよく見える。

 俺としては去年ジュリと踊っているので、特別にこれと言った緊張感は無い。

 エアロードは既に四皿目を迎えており、俺は内心どれだけ食うんだ?と疑問を抱かせる。


 少しだけ外で涼もうと俺は一人で外に出ていくと、俺は飲み物片手に飲み物を飲みながら北区の方をじっと見つめる。

 もう少ししたら北の近郊都市は近々再開発を受ける予定であり、住人は向こうで火事にあた俺達の集落の人達。

 今でもあそこに行くことはよくある。

 堆虎達と再会できる場所、俺としてはそれ以外の場所ではない。

 でも………あそこに人が集まっていき、少しずつ賑わいが高まっていくのだと思う。

「ソラ君ですか?」

 俺は急いで振り返るとそこには見覚えの全くない女性が立ち尽くしていた。

 少なくとも俺が今までの人生で出会った記憶が全くない。

「えっと………誰でしたっけ?」

「私は……堆虎の娘です」

 俺は息を吐き出すのも忘れ、どうしても堆虎の母親を直視できない。

「……娘がどうして死んだのか。私はどうしても今でも受け入れられないんです。あなたは娘の最後に立ち会ったと聞きました」

 立ち会った。というより、俺が殺した。

 だからこそそれを話したくないし、そのことで俺は誰にも恨まれたくない。

「最低限の話は既に聞きました。あなたと娘が戦った事、それを娘が自らの死を望んでいたことも。でも、だからこそあなたの口から知っておきたかった」

「………堆虎だと最初は全く気が付かなかったんです。知ったのはとどめを刺した後でした。堆虎の真意もその時知りました。この世界は終わりに向かっている事、その終わりを阻止して自分達の家族を救ってくれるのが………」

 俺は今一度堆虎の母親に真直ぐと見つめ直す。

「俺だと」

「そうですか。私はずっとその話を聞いてからどうしてそれが娘じゃないんだろうって。どうして娘がその役目じゃないんだろうって………責めました」

 涙を流して肩を震わせる堆虎の母親。

 俺としてはその思いを遺族が多く集まっているのだろう。

「でも、昨日あなたの戦いを見ました。広場前の。工場での戦いを。私はあれを見て、私達は正直……あなたが辛い思いを背負っているのだと知りました」

「重いって思って背負っていても、俺はそれを捨てることは無いです。俺が………皆の生きた証だから」

 俺はまっすぐな目を堆虎の母親に向け、堆虎の母親は終えに何を見たのだろう。

 口元を両手で覆い、まるで辛い現実を前にしてそのまま歩き去っていった。

「そうだよ………俺は皆の生きた証だ」


 俺がダンス会場に戻ると、俺はジュリの元へと戻っていく。

 丁度ダンス会場では一旦小休憩が入っているのか、誰もダンスフロアまで誰も入ろうとしない状況が続いている。

 俺はジュリの方へと右手をそっと伸ばす。

 今しかない。今行かなくてはいけない様な、そんな気がする。

 ジュリが俺の右手を優しく握りしめ、俺達はお互いに腕を握りしめながら優しく前へと歩き出す。

 誰もがダンスフロアへと足を踏み込もうとしないこの状況、俺とジュリが先陣を切る形で歩き出す。

 周囲の目がダンスフロアに足を踏み込む俺とジュリに向き、俺達は決して気にしないように中心に立つ。

 というより、誰の目も俺達には入らない。

 音楽が掛かったのは俺達が真ん中に立ち、構えたその瞬間の事であり。

 優雅で落ち着いたリズムがゆっくりと流れていき、俺達が踊りだすタイミングでゆっくりと動き出す。

 会場全体を使った踊り、周囲の人達は俺達の踊りに見惚れているのか黙ってその成り行きを見守っている。

 世界中が俺達しかいないのではないかと感じ。


 きっと誰もが邪魔をしないこの世界、俺にとっては幸福な世界。

 それはきっと夢物語なのだろう。しかし、堆虎達が信じた未来をおれも信じようと思う。

 俺が夢を見たこの世界。

 どこか心が温かくなっていくだろう。

 俺は踊りながらそう信じていられる温かい世界を目指して。


どうでしたか?次回は最終話となります。七夏祭も最終日を迎え、いよいよ物語も最終です。多分一話の内容としては過去最長となるのではないかと予想しています。そして今回のお話ではソラがレクターに敗北したという点では中々聞いた事の無い展開かと思います。では!次回お会いしましょう!

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