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竜達の旅団≪ドラゴンズ・ブリゲード≫ 【呪詛の鐘の章】  作者: 中一明
ジャパン・クライシス
152/156

辿り着いた未来 17

最終話前の前後編となります。前編はソラ対レクター戦の決着です!

 俺の体がぶっ飛んでいき、同時にレクターの体も吹っ飛んでいる。ほぼ同時にダメージ判定が入ると、俺達は次の行動に移るべく体中から力を籠める。

 しかし、レクターも既に戦闘態勢を整えており、拳を真直ぐ俺の顔面目掛けて突っ込んでくる。

 俺は体を捻って回避し、そのままレクターの背中目掛けて思いっきり剣を叩きつけるが、レクター子の攻撃すらも回避して見せた。

 こいつ、どんな体をしていたらこんな回避方法を思いつくんだ。

 まるで猫のようにしなやかに回避して見せるレクター、その回避に俺の体が追いつかないが、しかし強引な回避方法はレクターに素早い攻撃に移れずにいた。

 俺は両足に力を籠め、緑星剣を再び刃を前に向け俺はレクターの背中目掛けて緑星剣を振り下ろす。

 しかし、レクターはそのまま右足で俺の緑星剣目掛けて思いっきり蹴り上げる。

 俺の剣が少し遠くの地面に突き刺さり、俺はそのまま剣を取り戻すのではなくレクター目掛けて右拳を叩き込もうとする。

 レクターは俺の攻撃を受け止め、俺はレクターのカウンターを受け止める。

「もしかしてだけどさぁ。武術も中伝くらいまで上がってる?」

「残念上伝だ。既にな」

 そのままお互いに距離を取り直す。

 緑星剣が遠くに飛んでしまった以上、難しいのだが俺にはまだ裏技がある。

 しかし、これを今ここで披露すればレクターにアッサリ対策されてしまうだけ。ここでは控える必要がある。

 ギリギリのタイミングを見計らって使う必要がある。


「ガイノス流槍術。突貫【曙】!」


 レクターの大きな声ではなく、レクターが槍術を使えたという事に驚きしかない。

 所々地面がめくれ上がっているのが見て取れるが、どうやら俺達の戦闘で地面が捲れてしまったらしい。

 それを利用する算段らしいが、しかしこの場合槍術も剣術も武器が無くては使える技は限られる。

 しかし、突貫シリーズはどれも武器を使う事が前提の技。少なくとも【曙】なんて名前は聞いたことが無い。

 なんて考えていると捲れた地面の土が槍に変化して俺の体を襲い掛かる。

 武器の無い状態でこの攻撃はマズイ。

 レクターが笑っているところ見ると、どうやら俺の裏ワザは知っているのか想像できているようだ。

 俺は緑星剣を呼び戻す。

「戻れ!緑星剣!」

 緑星剣はブーメランのようにグルグル回りながら俺の元まで戻り、俺はそのまま緑星剣に風の刃を纏わせる。

 風と土の衝突勝負。

 俺の一撃で周囲の土槍による攻撃を全て叩き割るが、俺の方に向かって突っ込んでくる槍攻撃を受け止めることは既に予測済みらしく、俺の方に向かって突っ込んでくるレクターに俺は風の刃を纏わせた緑星剣を後ろに少し引く。

「ガイノス流槍術。突貫【真】」

 先ほど使ったレクターの槍術とはまるで使う正真正銘の槍術である。

 剣がまるで槍のような鋭い一撃に変わる。

 レクターも土を自分の右拳に集中させまるで一本の鋭い槍へと変貌させる。

「知らなかったよ。いつの間に槍術を習得していた?」

「結構前だよ。剣術も斧術も習得済みです。だって暇なんだもん」

 暇だから習得するなんて真面目に修練している奴が聞いたら激怒する話である。

 まあ、槍術に関しては俺も暇だから習得したというのが正しい言い分かもしれない。

「お互いに体力や時間を考えればこれが最後の一撃かもな」

「俺はまだまだ戦えそうだけど?だけど……そろそろ終わりにさせた方がよさそうだ」


 お互いに意識を集中させ強く地面を蹴るのにそう時間が掛からなかった。

 お互いに咆哮を高らかに上げ。俺は緑星剣を、レクターは右拳を前に突き出す。

 ぶつかり合う魔導の力は周囲に衝撃と凄味を与えるには十分な力で、俺もレクターも負けじと前に突っ込んでいる。

 お互いに体が受け付ける衝撃に負けそうになる。

 歯を噛み締めて何とか衝撃に打ち勝ち、俺の右腕に鋭い痛みが走る。


「「ウオォォ!!負けてたまるかぁ!!!」」


 俺達の体が後ろに吹っ飛んでいき、試合場の端っこに突っ込んでいく。

 試合を見ていた審判が左腕を高らかに上げ、周囲にから大きな声が上がる。

「勝者!レクター!!」

 俺は仰向けになって倒れ、試合の経過を移す画面では僅差で俺が先にダメージを受けたことが映されている。


 悔しい。悔しい!悔しい!!


 俺は悔しさを身をもって示し、俺は本来ならその辺で体をジタバタを暴れさせて全身で悔しさを現したいところだが、疲れ果てて正直体を動かせないでいる。

 レクターは体を直ぐに起こして体中で勝利を喜ぶのが見て取れる。

 俺はその姿を見て俺はますます悔しさが高まってくるのが分かり、俺は鋭い目つきで睨みつけた。

「勝った!勝った!!やった!!」

 あのバカに負けたというのが正直受け入れられないでいる。

 中学二年の時以来の悔しさが心の奥に突き刺さるが、同時に俺の中には中三の時にできなかった試合を出来たという喜びも襲い掛かる。

 ジュリが試合場へと昇ってきて、俺の元へと向かってくる。

 俺の後頭部にジュリの優しい膝の温もりと柔らかさをはっきりと感じる。

「負けたよ」

「うん。見てたよ。でも………良かったね。やっと試合が出来た」

 俺はレクターの方を見ながら小さな声で「ああ。でも………結構悔しいかな」と言いながら下唇をばれないように噛み締める。

 しかし、ジュリは優しい声で俺にささやきかける。


「良いんだよ。こういう時ぐらい……泣いても」


 俺は右腕で目元を隠し、一滴の雫が流れ落ちていく。


 試合が終わりそのまま控室に戻ってそのままジュリと一緒に休んでいると、控室に海と奈美が入って来た。

「お兄ちゃん!大丈夫?」

「ソラ先輩!大丈夫ですか?」

 二人が近づいてくるので俺はとっさにそっちの方に視線を移す。

 心配したように俺に近づいてくるが、俺は「大丈夫」だといって答えた。

「でも、すごかったよ!この世界の戦い方ってかっこいいんだね!」

 俺としては疲れ切っているので出来る事なら喋りたくない。

 代わりにジュリが奈美の質問に答え続けていき、俺はジュリの膝枕を堪能しながらゆっくりと休んでいる。

「そういえば売り上げが伸びていっているらしいよ。さっきの戦いの時もすごい売れているんだって」

「言っていましたよ。先輩たちが戦っている姿を皆がすごく楽しんでみていました」

 なら俺達がちゃんと戦った意味があったという事でもある。

「商会の人達もすごく感謝していました。先輩達がすごくカッコイイ戦いをしていたって。特に日本から来た観光客が面白い見世物だって喜んでいました」

「見世物じゃないんだが?戦っている当の本人は真剣に戦っているのにな」

 真剣に戦って真剣に負けた。それだけの話だ。

 海は試合場で戦っているほかの門下生を見ていると、どこも無く目を細めて羨ましいような視線を送る。

 戦いたいとも思っているのだろうし、同時に自信がやってこないのだろう。

「海。戦ってこい」

 俺はそっと海の背中を押すように促す。

 きっとそれだけで海は戦えるはずだ。


「戦いたい。戦ってみたいという理由以上に戦う理由がいるのか?」


 海は出入り口で待機している師範代に話しかける。

 奈美が小声で「何を話したの?」と聞いてくるが、俺としてはこれ以上は話すつもりは無い。

 奈美は話せば必ず止めるはずだ。

 俺はジュリに頼み込み、ある人物に頼んで俺の部屋にある昔買った剣を取ってきてもらった。

 母さんが俺の剣を持ってくるまで時間が約一時間、海の試合までもうあと十分も無い。

 ようやく奈美も海が試合をしようとしていると気が付いたようで先ほどから俺に文句を言ってくる。

 しかし、俺はそれを聞かないようにしながら俺が持っていた剣を海へと伸ばす。


「俺が昔買った剣だ。いらないなら受け取らなくていい」


 海は一瞬悩み師範代の方をじっと見つめる。

「好きにしなさい。しかし、相手はあなたにとって一番強い相手です。杭の無いように選びなさい」

 そういう師範代の言葉を受け、海は俺が持っていた剣を受け取る。


「大切にします!」


感想は次回に!では二時間後に!

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